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使われなくなった自治体施設に「球体テント」を浮かべて。幻想的なグランピング施設に変身したINN THE PARKを体験@静岡県沼津市

●全てのはじまりは、自治体からの「ヘルプ」

球体テントの広がる森林の世界へと変身

静岡県の森の中、木々の中に球体テントが浮かぶ「”泊まれる公園” INN THE PARK」。幻想的で非日常な風景に注目が集まり、オープン時にはSNSでも大きく話題になるなど人気施設となっています。しかしここ、もともとは自治体の“お荷物”になってしまっていた施設なのです。

INN THE PARKの始まりは、「東京R不動産」の兄弟である「公共R不動産」への、静岡県沼津市からの一件の問い合わせでした。

「林間学校などで使われる『少年自然の家』が、少子化や教育プログラムの変更で徐々に利用されなくなってきている一方で、維持だけでも年間数千万円の赤字を出している。時代に合った新しい使い方を民間企業に対して募集したいので、相談させてもらえないか

公共R不動産」とは、使われなくなった・もしくは今後使われなくなる公共空間の情報を全国から集め、それを買いたい・借りたい・使いたい市民や企業とマッチングさせるウェブサイトです。

公募を手伝うだけでなく、全国の魅力的でユニークな事例を紹介したり、行政の枠組みのなかだけでは生まれにくい発想を引き出したりする役割も担っています。

●「自分たちで応募してしまおうか」

依頼を受け、『少年自然の家』の活用案の公募援助を始めた公共R不動産。その取り組みの中で公共R不動産のメンバーたちは、施設内の広々とした公園や、哀愁のある建物にポテンシャルを感じはじめていました。

そしてついに「自分達でエントリーしてしまってもいいのでは?」と、自ら企画をして公募にエントリーすることに。驚くことにそれが採択され、実現したのがこのINN THE PARKだったのです。

実際にプロポーザルで提出したスケッチ

蓋を開けてみれば、公募へ参加したのは「公共R不動産」の一社のみ。ポテンシャルがあるとはいえ、60ヘクタールという広大な敷地、隣施設の運営、経営面...など、ハードルは決して低くはなかったようです。

それでもこの『少年自然の家』を初めて訪れた時、「『お宝』にしか見えなかった」という公共R不動産チーム。ノスタルジーさや広々した空間など、散りばめられたポテンシャルを引き出したことにより、施設そのものや使われ方が生まれ変わっていきました。

40年前の面影を残しつつ、二段ベッド向けの天高を生かしたコテージに
渡り廊下に残された靴箱がノスタルジックな雰囲気
かと思えば、おしゃれなセレクトショップも
もともと飯盒炊爨をしていた場所は、日帰りでも使える焚き火カフェのエリアに
広大な芝生では、買い物・音楽・キャンプをまとめて楽しめるイベントや、映画祭が行われたことも

他にも、斬新なフレンチを味わえたり、公園では結婚式が行われることもあったり・・。従来の施設の名残を残しながら、少年自然の家のイメージとギャップのある要素を盛り込んで非日常を演出しています。

このような変身を遂げ、「新たな公園の魅力を開拓」「地域に新たな魅力を付与」の観点からINN THE PARKは「第35回都市公園等コンクール」において最高賞の国土交通大臣賞を受賞しています。

●見たことのない風景を求めて「森にテントを浮かばせよう」

テントは「Open A」が設計し、テント制作会社に特注でオーダーしているそう

中でも施設のシンボルになっているのが、この丸いテント。お椀を上下に重ねたような仕組み(ジオテック構造)を応用して構成されており、直径は3.5m〜4.5mで中は広々しています。

「公園としてはありえない風景、見たことのない非現実的な風景をつくろう」と始まったこの企画は、森の中にテントを浮かばせて非日常な世界観を実現。地表面から離すことで、湿気を避けられるメリットもありました。

最初は4棟からスタート。現在は10棟に増えたことで、風景が広がってより幻想的に
目覚めると、朝陽がつくる贅沢な木漏れ日をテントいっぱいに感じられます。エアコンも完備で快適

●グループの若手40人で遊びに行ってみた

東京R不動産」のグループには「公共R不動産」「INN THE PARK」だけでなく、「toolbox」「Open A」「SPEAC設計」「[R]studio」などがあります。今回は、それぞれの会社の若手メンバー40人ほどで、研修も兼ねてINN THE PARKへ遊びに行ってみました。

OpenAのメンバーが作ってきてくれた栞冊子
他の利用者がいない時期だったので、全テントを見学できました
4人用テントは2階建て。結合した球体へと続く階段
広大な公園ではサッカーやフリスビーで盛り上がりました。夜にはテラスの焚き火でまったり
建築を学ぶ学生は一度は体験したことがある、「パスタタワー」の高さを競うレクリエーションも。「既存のマシュマロに穴を開けて採光を...」など、各班の発表もおもしろい

今回のINN THE PARK研修では、グループ会社同士でも意外と知らない「どんな仕事してるの?」「そっちはどんな働き方なの?」といった話があちこちで自然に生まれました。夜にはダンスの発表を楽しんだり遅くまで話し込んだりと各メンバーの人柄が見えてきて、お互いの理解がさらに深まったように感じます。

●「お荷物」も「お宝」になるのだと改めて実感

最終日は自由解散。壁と天井を塗り直した開放的なラウンジで、話したりワーケーションをしたり

自治体の持つ大きな施設は、人口減少や財政難など時代の変化によって、どうしても「お荷物」になってしまうことも。しかし、コンセプトやリノベーションの力によって、その場所でしか実現できない「お宝施設」に生まれ変わることもあるのですね。

INN THE PARKは、宿泊をせずに、カフェのみ・公園のみ、といった利用も可能です。静岡だけでなく福岡にもあるので、ぜひお近くの施設に遊びに行ってみたり、社員研修に使ってみたりしてください。

●「公共R不動産」をもっと知る
公共空間を「使いたい民間」と「使って欲しい行政」のマッチングが気になる方はこちら

●「INN THE PARK」をもっと知る
立ち上げから運営まで関わったメンバーへのインタビュー
INN THE PARKがはじまった経緯の詳細

●東京R不動産は物件仲介スタッフを募集しています
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