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「住居」だった物件を「店舗」仕様に。ツタに覆われた雑貨屋の変身物語 @神宮前

東京R不動産」の物件でオープンした、素敵なお店取材の第6弾
。「物件Before-After」も紹介しています。

●神宮前の下町エリアにひっそりと佇む「ツタの店」

「物件探しの必要がなくてもR不動産のサイトを眺めている」という松田さん

今回伺ったのは、リトアニアのデザインとクラフトを扱うセレクトショップ『LTshop』。リトアニアは北欧や東欧に分類される自然豊かな国で、「森と湖の国」と呼ばれています。

暮らしに取り入れやすい、シックであたたかみを感じるリトアニアのデザイン

店主の松田さんは「時を経た建物」を愛する方。
 
美大生時代に、恩師の関係で出会った昭和初期の建物に大きく心を動かされたそう。質感のある空間に身を置いていたことで、松田さん自身にもそういった感覚が身についたのかもしれません。 
 
そんな松田さんの、ツタの物件との出会い・改装のエピソードをご紹介します。

●理想の立地で、気になっていた「ツタの建物」

ツタが「はっている」というより、「飲み込まれそう」

2年ほど前、外苑前にあった店舗を移転することに。『LTshop』の事務所もこの辺りにあるため、松田さんは、次の店舗物件も同じ外苑前界隈で探していました。

近所の神宮前を散歩していて偶然見つけた、このツタの建物が気になっていたんです。でも借りられる物件かどうかも分からなかったので、まさか自分の店舗にできるとは夢にも思っていませんでした」
 
そんなある時、「この辺りで、面白い物件の入居者募集を見つけたんですよ」と知り合いの方が松田さんに教えてくれたのが、あの「ツタの建物」!

掲載されていた『ツタに飲み込まれそうなアトリエ』

気になっていた物件が、なんと東京R不動産のサイトに掲載されていました。
 
松田さんは早速、現地に行って「やっぱりいいな」とあらためて外から確認したのち、内見の申し込みをしました。

●たくさんの注意事項。「でも、松田さんなら大丈夫だろうと」

募集時の様子。「サッシは隙間風があったり、少し形が変形して開きづらかったり」という言葉と共に掲載されていました 

このツタの物件の仲介を担当したのは、東京R不動産の緒方というスタッフ。なんと偶然にも、松田さんが「事務所用の物件」をR不動産で選んでくれた時と、同じ担当者でした。
 
「サイトから店舗物件の内見申込みをしたら、この物件についてあらかじめ知っておくべき注意事項が、緒方さんからダーーッと送られてきたんです」
 
その「注意事項」について緒方に話を聞いたところ、このような背景を教えてくれました。

かなり年季が入っており、木製サッシで隙間風があったり、床が一部歪んでいたりと、ハードな建物である
・神宮前という立地は買い物客がたくさんいるイメージ。しかしこの物件周辺は、買い物客が全く通らない
・昔ながらの古い戸建てが立ち並ぶ入り組んだ住宅街で、場所がわかりづらい

 「でも、松田さんなら大丈夫だろうなとは思っていました(笑)。松田さんは、そういうのも含めて面白がってくれる人なので」(緒方)
 

●古くても大丈夫、むしろ直して大切に使いたい

改装前の写真。床はこの状態では使えず、色々と手を加えていただく前提での募集でした

内見した他の方々が「思った以上に手がかかりそう」と断念していくなか、松田さんにとっては、立地や広さなどの条件が揃った理想の物件との出会い。
 
「私にとっては、このくらいの年代の建物の方が精神的に安心します。むしろ、これ以上新しいと候補にならないんです
 
松田さんは無事契約を終えると、リノベーションを多く手がける先輩 (duffle ・鈴木哲郎さん)に相談しながら、店内の改装に取り掛かりました。

改装後。店の床の約半分が土間になっています

気になる「歪んだ床の部分」は、先輩の「床を剥がして土間にするのはどう?その分、天井も上がるし」という提案で土間に。おかげで空間にメリハリも生まれ、モルタルの色合いで店内がより優しい雰囲気に仕上がっています。
 
そして、「土間部分以外の床」に使用したのは、落ち着いたトーンの「Pタイル」。 

店内を綺麗に保てるよう「靴脱ぎスタイル」で入店します

Pタイルは、小学校の床としても使われる手入れのしやすい床材です。しかし松田さんにとっての魅力はそれだけではなかったようで...
 
最後の決断を迷っていた時、『Pタイルは、素材に色を練り込んで着色している素材だ』と先輩が教えてくれました。上から色を塗っているわけではないので、欠けても中は同じ色。そういうのって、イミテーションじゃない感じでいいなと思って
 
「イミテーションじゃない感じ」。物事の本質の部分を大切にする松田さんだからこそ、さらりと出る言葉だと思いました。

●住居だった物件を、店舗仕様に改装

脱衣所を試着室にするなど、元々の間取りを活用

「店内の使い勝手を自分で決めたかった」という松田さんにとって、リノベーションがされていない状態はむしろうれしいものでした。「要改装の物件」と聞くとなんだか大変そうな印象ですが、プラスに働くこともあるのですね。
 
 
ここからは、取材時にお聞きした、「住居だった物件」を「店舗」に改装した際の工夫をご紹介していきます。
 
まず、「押し入れ」だった部分には、棚を取り付けて「ショーケース」に。 

リトアニアのチョコレートや紅茶、カゴなどを並べて展示

この空間は空気が溜まりそうだったので、棚にしてしまおうと。なんだか民藝資料室みたいで気に入っています」
棚の前にはガラス扉がついていて、前の店舗で使っていた扉がうまい具合にはまったそうです。
  
そして「キッチン」部分は、「レジカウンター」として松田さんの居場所に。

北欧の森林のようなレリーフが、キッチンに素敵な影を落としています

改装前、キッチン上にあった垂れ壁。取り除いてガラスをはめる予定でしたが、予算的に厳しそうで、やっぱり取り除かないことに。

しかし「やっぱり残す」が工事業者さんにうまく伝わっておらず、面の部分がぽっかりと空いてしまいました。
 
構造上、この横桟(よこざん:レリーフの下の横に渡した桟)は取り除けないので奇妙な空間が生まれてしまい、「どうやって埋めようかな」と考えていたところ...

なんと、松田さんの旦那さん(リトアニア人!)にレリーフを作ってもらうことができました。「リトアニアの昔の家って、窓や扉にこういう装飾があるんです」
 
ホームセンターで購入した端材で作ったというこちらの作品は、今ではすっかりお店のアイコンになっています。

●ツタの葉で季節を感じる、お店での毎日

同じツタでも、季節によって違う表情

取材に伺ったのは11月。ツタの葉が紅葉している頃かなと思いきや、ほとんどの葉は落ちていました。
 
聞くと、夏の間の西日が強すぎて、店を覆う大量の葉も8月には全て落ちてしまうんだそう。
 
「なので変わったことに、落葉かきをするのが夏なんですよ(笑)。葉っぱを掃きながら、季節の移ろいを感じたり、ご近所に挨拶したりしています

そう話す松田さんは、なんだかとっても楽しそう。

リトアニア雑貨の飾らない優しい雰囲気は、まさに松田さんの人柄そのもの

多くの人が「自分には使いこなせない」とためらってしまうような「ひとくせ」ある物件を、「まさにここだ」という松田さんに見つけてもらえて、私たち東京R不動産も本当にうれしいです。
 
そんな『LTshop』は、実は詳しい住所が非公開。来店の際にお店に連絡して、教えてもらう形になっています。

住所と道順は、お店のHPよりお問合せください

非公開の住所を問い合わせるのは身構えてしまうかもしれませんが、とっても気さくな松田さんが出迎えてくださるので、ぜひお気軽にお問合せをしてお店を訪ねてみてください。松田さん、ありがとうございました。

●お店情報、物件ビフォーアフター

店名:LTshop(エルティーショップ)
Instagram:@ltshop_fete
住所:東京都東京都渋谷区神宮前2丁目(詳細な住所はお店のHPへお問い合わせください)
オープン:2022年5月
広さ:74.85㎡ (記事で紹介していない2階部分も含めた広さ)

Before:『ツタに飲み込まれそうなアトリエ』
垂れ壁が光を遮って部屋は暗く、床も歪んだ状態
After:『LTshop』
窓に掛けた格子で、光を採りつつも商品を吊るす面を確保


●他の「お店紹介一覧」はこちら

商品だけでなく、空間そのものを楽しんだり、まちとの関わりに想いを巡らせたり。「東京R不動産ならではの視点」でお店の物語を紹介しています。物件Before-Afterも楽しんでいただけたら。

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