探偵業法の改正(令和6年4月)についてのまとめ

本日、警視庁が主催する東京の探偵業者を対象にした探偵業者研修会が開催されました。
その中で令和6年4月(半年後!)から施行される探偵業法の改正のついて解説があり、その内容については多くの探偵業者に影響があると感じましたのでこの記事でまとめたいと思います。ただし、現時点で未定の内容もありますので、その点は明記するようにします。

今回の探偵業法の改正は「デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律」に関連して行われています。本法律には探偵業法の改正点についての概要として以下の通り記載されています。

引用:https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230711Q0011.pdf

探偵業法の改正後の原文はこちらにあります。この記事では改正前後の差分について、本日の研修会の内容を交えて説明します。


第四条3(探偵業の届出)

探偵業届出証明書の発行が廃止されます。

【改正前】
公安委員会は、第一項又は前項の規定による届出(同項の規定による届出にあっては、廃止に係るものを除く。)があったときは、内閣府令で定めるところにより、当該届出をした者に対し、届出があったことを証する書面を交付しなければならない。
【改正後】
削除

解説

この「届出があったことを証する書面」というのは探偵業を届出したときに警察署から渡される登録番号が記載された証書です。あれの発行が行われなくなります。ただし、届出自体が不要になるわけではなく手続き等は従来どおりとなります。
また、現在は届出証明書を営業所の見える所に掲示するルールがありますが、これについては届出証明書の代わりに"標識"というプレートに変更になるとのことです。(標識については後述します)

【未確定情報】
証書の発行がなくなったことにより届出手数料の変更については現時点で未定とのことで、発行手数料がなくなるため安くなるかもしれないし、審査料という形で別の手数料が発生するようになるかもしれない。とのことでした。


第八条二(重要事項の説明等)

重要事項説明書に記載すべき内容の規定が変更になります。

【改正前】
第四条第三項の書面(=届出証明書)に記載されている事項
【改正後】
第四条第一項の規定による届出をした公安委員会の名称

解説

従来は重要事項説明書に届出証明書の内容を記載することになっていますが、前述の第四条3の変更により届出証明書自体が無くなるため、代わりに届出した公安委員会の名称を記載することが明記されています。

ここはあまり影響は無いと思います。改正前のルールでも届出証明書に記載されている内容は重要事項説明書に記載することになっており、その届出証明書に公安委員会の名称は含まれていますので、すでに各社対応済であると思います。


第十二条2(名簿の備付け等)

届出証明書の掲示に関する規定が変更になります。

【改正前】
探偵業者は、第四条第三項の書面(=届出証明書)を営業所の見やすい場所に掲示しなければならない。
【改正後】
探偵業者は、第四条第一項の規定による届出をしたことを示す内閣府令で定める様式の標識について、営業所の見やすい場所に掲示するとともに、その事業の規模が著しく小さい場合その他の内閣府令で定める場合を除き、内閣府令で定めるところにより、電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送又は有線放送に該当するものを除く。次項において同じ。)により公衆の閲覧に供しなければならない。

解説

ここは2点あります。
1点目は、現在営業所に掲示している届出証明書が前述の通り廃止になるため、今後は届出証明書の代わりに"標識"(後述)を掲示することになります。
2点目は、その"標識"をインターネット上でいつでも・だれでも閲覧できるようにしておく必要があります。(後半の"電気通信回線に接続して行う自動公衆送信~"の部分を要約)

【未確定情報】
2点目に関しては中断に但し書きがあり「その事業の規模が著しく小さい場合その他の内閣府令で定める場合を除き」とあります。一部インターネットに掲示しなくても良い条件があるようですが、これについては現時点で不明とのことです。


第十二条3(名簿の備付け等)

届出していない探偵業者は"標識"を使用してはいけないという規定です。

【改正前】
なし
【改正後】
探偵業者以外の者は、前項の標識又はこれに類似する標識を掲示し、又は電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供してはならない。

解説

これは現時点で探偵業の届出をしている探偵業者には影響はありません。
前述の通り届出証明書の代わりに"標識"が運用されることになりますが、どうやらこの"標識"は公安委員会から発行されるのではなく、探偵業者自身が作成することになるようです。
そのため「勝手に作って掲示してはダメ」という意味で規定が追記されています。


第二十条(罰則)

探偵業法に違反した場合の罰則規定が追加されています。

【改正前】
第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
【改正後】
第二十条 第十二条第三項の規定に違反したときは、当該違反行為をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
第二十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第十七条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

解説

違反行為を行った者の罰金刑が二十万円以下と明記されました。
(第二十条に追加され、現行の第二十条が第二十一条に変更されています)


以上が、今回の改正点になります。
さて、気になる"標識"ですが、本日の研修会で解説者によればこの標識に記載が必要な項目は以下の通りとのことです。
・届出の公安委員会名称
・届出番号
・取り扱う区分(探偵業)
・営業所の名称
・称号、名称または氏名

これらは、現在届出証明書に記載されている内容のため、探偵業者の運用としては掲示するものが届出証明書から標識に変わる程度となります。
ただし、この標識は探偵業者が自ら作らないといけないそうです。

【未確定情報】
ここからは研修会で解説者の推測という前置きをして話されていましたが、「この標識は古物商の運用に近いものになるのではないか」ということでした。

古物商の標識の内容は警視庁のこちらのページにありますが、以下のような形式となっています。中段は「探偵業」、下段は称号、名称または氏名となるのではないかと思います。プレートの色については言及はありませんでした。
私の推測ですが、探偵業も古物商も管理部門が同じであるため古物商の管理システムに探偵業を乗せるといった対応なのではないかと思います。

引用:https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kobutsu/youshiki/hyoshiki.html


以上、令和6年4月から改正される探偵業法についての変更点をまとめました。

標識の具体的なフォーマットが明示されていなかったり、「内閣府令で定める~」という記載についてその定めが未確定だったりしており、今後半年の間にこのあたりの情報が出てくると思います。
探偵業者の皆様は引き続きこのあたりの情報をウォッチしていく必要がありそうですね。


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