「本当は言いたい記者の本音」聞いてみました。

こんにちは。東京iCDCリスコミチームです。

都では、新型コロナウイルス感染症について、日々さまざまな情報を発信していますが、情報を正しく・速やかに都民のみなさんにお届けするために欠かせないのが、報道メディアとの関係です。

報道メディアは、公共に資するというジャーナリズムの使命にのっとり、行政機能を監視する役割を担っています。そこには一定の緊張感が必要ですが、コミュニケーション不全を起こすほどに緊張が高まると、かえって公共の情報共有が上手くいかなくなるというジレンマがあります。

今回、リスコミチームにおいて、報道メディアと東京都とのコミュニケーション上の課題を把握するため、東京都のコロナ対策を取材・報道している記者の皆さんとの意見交換会を開催しました。この記事では、この会の内容をお伝えします。

<意見交換会 概要>                       〇 開催日時
令和2年11月10日(火) 13:00-14:15 @ZOOM                                  〇 参加者
[報道メディア関係者] 11名(新聞・通信社6, テレビ局4, ラジオ1)
[リスコミチーム] 奈良由美子,小坂 健,武藤香織,田中幹人

1.都と報道メディアのコミュニケーションの課題

まず、都と報道メディアの間のコミュニケーションの課題について、報道メディア側からもらった意見を紹介します。

〇私たち報道も読者・視聴者も、数に麻痺してきている。数の持つ意味を伝えることが重要になってきている。最近はこうしたコンテンツも出すようにしている。
〇毎日原稿を出しているが、どれだけ視聴者が我がことと考えているかは不安になる。我がことと考えてくれるためにも、都から「どういったシチュエーションで発生したのか」という情報は必要。
〇東京都が出す情報は限定的。年代と性別のみ公開し、職業や接触歴などは「調査中」と明かされないケースが多い。個人を特定しようという動きを誘発するケースに至るのは問題だが、もう少し細かく伝えるべきでは。
〇死亡者についての公表の遅れは課題。次第に改善されているが、かつては一ヶ月以上前というケースもあった。
〇コロナ政策の背景など、知事に聞くには細かいが、課長レベルでは話せない内容を記者が理解する場が必要では。毎週の知事会見と、毎日の課長級記者レクの間を補完する部局長クラスによるレクなど。

2.報道メディアが抱える課題

次に、報道メディア自身が抱えている課題についての意見を紹介します。

〇「日々の感染者数に一喜一憂すべきものでない」と考えていても、日々の報道は「その日」で区切らざるを得ない。結果的に都民を日々の感染者数に一喜一憂させる環境をつくる手助けをしているのではないかというジレンマを感じる。
〇当初は都内の感染者数を速報扱いで伝えてきたが、「数」だけ報じることに内外から異論が出始めている。
〇他の道府県と比較しようと思っても、それぞれのアラートの出し方や病床の「確保」の意味合いなどが異なり、わかりやすく、かつ誤解なく伝えるのが難しい。
〇報道のスタンスは、可能な限りの情報を聞く、集めるということになる。その先は報道機関が自主的に考えていく特性であり、それが公衆衛生上に資するかと問われれば、相容れないことはある。
〇読者や視聴者の側も、最初は感染者数の増減に一喜一憂していたが、最近はいつまで数値にこだわるんだ、脅すな、という意見が多い。最近は状況を知りたい、重症者の数が重要なのではないか、という意見。具体的な基礎疾患名も知りたい。情報の具体性を変えていかないと行けない。

3.まとめ

今回の意見交換で出た内容をまとめると、ずばり、取材者の本音は、
①情報の透明性を拡大してほしい
②ナラティブ(物語)のある情報を提供してほしい
ということだと感じました。

都では、日々の感染者数や死亡者数等について、毎日、都庁の担当者から各メディアに対し、情報提供するとともに、多くの指標や数値を公開しています。

しかし、保健所や医療機関から毎日集計・報告される膨大な数字やデータを確認し、その質を理解するための情報を整理して発信することは困難な課題です。また、速さと精確さを両立することは極めて困難です。あまり即時の情報公開を求めると、確認不足による数字の誤りも増えるなど、現場はさらに混乱・疲弊してくことにも繋がりかねません。

しかしながら、報道側が重要だと感じているのは、「【どのように】して感染し」、「【どのような】かたが」亡くなられたのか、という「リスク文脈」の情報であり、現状では感染の実態や教訓を引き出せていないという報道側の苦悩もうかがえます。

【どのように】に注目した透明性の確保のため、より現場の声を聞ける機会の提供や、都が毎週木曜日に行っているモニタリング会議において「今回はどこが(どの表現が)議論の焦点となったか」を意識的に報告することなどが、重要だと考えられます。

東京iCDCリスコミチームでは、都民のみなさんに透明性が高い情報、納得感のある情報をお伝えできるよう、引き続き検証していきます。

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