入院患者データによる重症化リスク等の解析を進めています(その1)
1.はじめに
感染症診療チームでは、国立国際医療研究センター 国際感染症センターの大曲 貴夫 センター長が中心となり、国の「COVID-19 に関するレジストリ研究 ( https://covid-registry.ncgm.go.jp)」から、都内の入院患者のデータを抽出して重症化リスク等の解析を行っています。
令和2年12月2日に開催した「第42回東京都新型コロナウイルス感染症対策本部会議」において、大曲先生より現時点での状況の説明を行いましたので、その内容について、お知らせします。
上記のレジストリ研究は、本邦におけるCOVID-19患者のうち、医療機関へ入院した患者の臨床像や疫学的動向を明らかにするために、国の研究班で行われているものです。
こうしたデータが蓄積されることでどのような症状が出ているかなどを解析し、将来的には予防や治療法の開発にも役立てることが志向されています。
なお、上記レジストリ研究のデータを読む上での注意点は、次の通りとなっていますので、ご留意ください。
2.発症日別の登録症例数(全国と東京都の比較)
・現在、2020年1月の登録開始日から9月30日までの期間において登録されて
いる全国の症例は10,728名分のデータとなります。
・この中で、東京都の症例は2,790名分で全国の 約26% を占めており、今回
これらの症例を用いて解析を行いました。
・全国、東京都ともに、第1波に比べて第2波は、下のグラフのとおり、中
等症(濃い青の棒グラフ)や重症(橙色の棒グラフ)の患者が少ないこと
がおわかりいただけると思います。
3.発症から入院までの期間・年齢別男女別登録数
・発症から入院までの期間について全期間を通じてみていますが、下の左側
のグラフのとおり、発症日から入院日までにかかった日数は、中央値が6.0
日(平均6.6日)となりました。
・また、年齢別男女登録数は、下の右側のグラフのとおり、30代から70代ま
では男性が多く、80代以降は女性が多い結果となりました。
4.入院患者の臨床症状・併存疾患の割合
・入院患者の症状については、約半数の方に発熱や咳嗽*が認められ、他に
も倦怠感、呼吸困難、味覚異常、嗅覚異常、頭痛、咽頭痛などが認められ
ました。
*咳嗽:がいそう、一般的に咳(せき)のこと
・入院患者に併存した疾患としては、主には高血圧、糖尿病、高脂血症など
が認められました。
・なお、上記の「COVID-19レジストリ研究」における全国データの解析結果
(http://www.ncgm.go.jp/covid19/200930_handouts.pdf)によると、腎機能障
害、肝疾患、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病を有する症例は、併存疾患
がない症例と比較して入院後に重症化する割合が高い傾向にありました。
5.入院患者への薬剤投与・呼吸補助治療・喫煙の割合
・COVID-19の治療目的での薬剤の投与については、ファビラビル、シクレソ
ニドを中心に、ナファモスタット、全身ステロイド薬、レムデシビル、抗
凝固療法などが使用されていました。
・呼吸を補助する治療として、28% に酸素が投与され、5% に人工呼吸器、
0.4% に対外膜型人工肺(ECMO)が使用されました。
・入院時現在の喫煙率としては、23.3% に及びました。
「入院患者データによる重症化リスク等の解析を進めています(その2)」は こちら
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