変わるもの、変わらないもの
近年稀に見る大雪の夜が明けて、今日は乾いた空気に光が差している。
これは危険なやつだ…と天気予報を見る前に、雪国にいた頃の勘がアラーム鳴らす。
…絶対、ツルツルに凍った地面で転ぶやつだ…。
今年新調した、マイナス35度でも着用できるUGGの防水ブーツを履いて、昼食も十分に食べないまま、表参道に出かける。
今日は、半年以上、伸ばしに伸ばした髪を切りに行くのだ!
髪が伸びても緩やかに解けたパーマが可愛らしく見えるので、気に入っているのだけど、半年以上放ってしまった髪の毛のもっさり感は「緩やかウェーブ」でも隠し切れない!
東京メトロに乗ると、スーツ姿の人もちらほら見えて、休暇を終えて出勤してる人もいるんだよね…と思う。
長めに冬休みに合わせて取得した有給休暇も、残すところ、あと4日。
今の仕事に不満はないが、来週から意気揚々と会社に足取り軽く出勤する気にも、なかなかならない。
転職活動後に採用通知が来た時は、小躍りしたほど気に入っていた仕事なのに、もうすぐ出勤することを思うと、心に若干影が落ちる。
髪も、仕事も、いつまでもお気に入りのままをキープできるものでもないのかもしれない。
お気に入り美容師さんに、10cm以上髪を切ってもらい、ここ何年も長く保っていた前髪もバッサリと切ってもらった。
美容院には、セラピー的な要素があると思う。
心の錆を落とすように、綺麗に髪を洗ってもらい、デトックスのように、自分の一部を切り落としていく。
いつもの自分がいる場所とは全く違う場所で、新しい自分に生まれ変わる。
毛羽立っている心を優しく撫でるように、ドライヤーで髪を優しく乾かしてもらえば、日常にたまにやってくる、非日常のリラックス空間。
髪も、心もスッキリし、外に出ると辺りは暗く、朝から何も食べていないことを思い出した。
表参道駅に向かい骨董通りを歩くと、スターバックスを見つけた。
本日初めての食事には何が良いのか、数多ある食べ物の中から、この瞬間にぴったりの食べ物を見つけたい気持ちもあるのだけど、それをするにはお腹が空き過ぎている!
今回は特別を求めず、コーヒーと暖を取ろう。ジンジン底冷えするような寒さの中、ドアを開けると、コーヒーの香りが漂っている。
ペイストリーショーケースの中から小腹を満たすのに十分そうな「粗挽きソーセージパイ」を選び、「アーモンドミルクラテ」をオーダーした。
ソーセージパイ。サクサクのパイの中と、プリッとしたソーセージを口に含めると、馴染みのある味が、温かく胃に届く。もちろん、驚きを感じる味ではないけど、これもこれで美味しい。何も考えずに、簡単に手に取れて、空っぽのお腹をしっかり満たしていく。暖かなアーモンドミルクのラテも、美容院でデトックスをした後にはぴったり。ほっこりする、優しい味。
スターバックスは、どの地域でもどの国でも変わらない。同じ内装、同じBGM、同じメニュー。
家でも、職場でもない、3つ目の安心できる場所 “サードプレイス”を作りたかった、という創設者の言葉通り、世界中のどこにいても変わらないスターバックスは心地が良い、お気に入りの場所だ。
家とも職場とも違う、どこにあっても同じ環境で人々を迎えるこの場所もまた、リラックス空間。
変わるお気に入りもあれば、変わらないお気に入りもある。
変わらない、変えない、が大事な場合もある。
ぽわっと心に浮かぶ、理由のない影はコーヒーと一緒に流し込み、切り落として行こう。
STARBUCKS
東京都港区南青山5-4-27 Barbizon104
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