麗しの貴族たち
貴族、それは煌びやかで華美の世界に生きる人々。
その印象とはだいぶ対極的にありそうな、賑やかで安くて美味しい居酒屋にきた。
人生2度目の「鳥貴族」。
店舗を探すのにはそう骨折らない有名店であること、焼き鳥を出すお店であることが、私の持ちうる「トリキ」の基礎知識。
「トリキ」と呼ばれる、その愛称が、また可愛らしい。
ポテサラを頼み、フライドポテトを頼み、8皿ほど焼き鳥を頼んだ。
お腹が空いていたので、どんどんどんどん食べていく。
胃が掃除機のように、ぐんぐんぐんぐん吸い込んでいく。
隣に男性3人組みが座る。
その中のメガネの青年が、「俺、明日自殺しますから」と言ったのが聞こえた。それは穏やかでないね、と内心ヒヤヒヤしたが、どうやらセリフの一部を口にしていたようだった。
話に少し聞き耳を立ててみると、どうやら劇団員のよう。
お金に余裕がない不満を皆で漏らしていた。けど、それを本気で嫌がっている顔つきにも見えなかった。
苦労している不満を漏らしているが、楽しそうだ。
もうその場所に戻る勇気はないが、何年も前は、自分も目をキラキラに輝かしながら、理想を語っていたと思う。
実際に理想を現実にするかどうかは問題ではなく、自分の言いたいことを気の知れた友人に語ることが、とても満足のいく行為だった。
自然に、正直に、「いいな」と思った。
お金が今ほどなくても、友達と理想を語る場所があったことは、今の自分を確実に作り上げた、大事な一部。
少しのお金で仲間と夢を語り合う。
それを可能にしてくれる、低価格で満足できる居酒屋さんは、みんなの夢を支えている立役者と言える。
コイン3枚ほどで、美味しいプリップリの焼き鳥を食べさせてくれる、トリキに今日は乾杯。
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