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徹底したカスタマイズの抑制~青梅市CIO×都CIO座談会②~

東京都・区市町村CIOフォーラムにおける活動の一環として、都内各自治体CIO等へ「東京都・区市町村CIOフォーラムマガジン」を発行しております。今回は、マガジンに掲載した内容を一部公開します。
第7回は、「青梅市CIO×都CIO座談会」をお届けします!

※CIO(情報統括)責任者:組織の情報戦略における最高責任者
※東京都・区市町村CIOフォーラム:都CIOと各区市町村のCIO(主に副首長)等が相互に密接な連携と協力を深め、電子自治体の構築や行政施策へのICT活用等の諸課題に関して、テクノロジー情報や導入ナレッジの共有化を通じて、都及び各区市町村のDX施策推進に寄与することを目的として設置

※この記事は全2回の後半です。前半はこちら

令和3年10月18日に、「第7回東京都・区市町村CIOフォーラム座談会」として青梅市CIOと都CIOの座談会を実施しました。

参加者(敬称略)
青梅市CIO:青梅市副市長 池田 央
青梅市企画部長:伊藤 英彦
青梅市企画部情報システム課長:和田 宏
都CIO:宮坂 学
都デジタルサービス局戦略部長:深井 稔
都デジタルサービス局戦略部戦略課長:小澤 洋之

IT人材の育成及び環境整備

必要なデジタル人材とは何か

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都CIO:宮坂(以下「宮坂」)
今まで様々な区市町村の皆様とこうしてお話してきた中で、都庁も区市町村のみなさんと一緒になって研修できるメニューを作りたいなと思っているところで、青梅市さんの研修の状況についても伺っていいでしょうか。先ほどおっしゃっていたJ-LISさんのメニューについて、受講した職員の評判はどうでしょうか。

池田
まだ始めたばかりで評判を聞くところまで行けていないのが現状でして・・・。

宮坂
なるほど、じゃあ今度こっそり教えてください(笑)結構色々なメニューがあるので、どれがいいのかなと我々も頭を抱えているところです。

池田
承知しました。研修もですが、どういう人材を求めていくのかの定義、そこがなかなか難しいのかなと感じております。技術的に高い人求めていくのか、それとも色々な応用力があって今の業務を把握していてそれをデジタルに置き換えることができる視点を持った人材を育てるのか、そこがまだはっきりしていない気がしております。

宮坂
一言でデジタル人材といっても色々ですよね。必要なデジタル人材とは何か、という点は私もちょうど課題だと感じているところです。

池田
技術的に高い方は民間さんにいくらでもいらっしゃると思うのですよね。そういった理由から、区市町村だと人数も限られている中で、そういう方と同じ人をいくら育成しようと思っても、ちょっと資源の無駄かなという気もしております。そういう意味では、二番煎じでも真似でもいいので、他でやっている先進的な取組を自分のところに持ってこられるような、必要最低限のデジタル能力のある人材を区市町村としては求めていく方がいいのかなと考えております。

宮坂
デジタルの知識をどうやって業務に取り入れていくか、そこには変革を伴いますので、それを受け入れる力もひょっとしたら求められるかもしれませんね。

池田
そうなんですよ。うちも若い職員3人ぐらいに、AIチャットボットやRPAを失敗してもいいから、とにかくお金の無駄遣いでもいいからやってみろと始めてみました(笑)すると市民税関係のシステムを作りあげて、今では稼働しています。そういった経験から、トップがある程度覚悟を持って、失敗してもいいからやれと後押ししないとなかなかできないのかという気がしています。

宮坂
そうですね。誰かがお尻を叩かないと変わる理由がなかったりしますよね。

都デジタルサービス局戦略部長:深井(以下「深井」)
私も気になっているところなのですが、具体的にAIチャットボットはどんなものに使っていて、その評判は実際どうでしょうか。

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池田
ごみの分類についてAIチャットボットを活用していて、かなりの大好評をいただいております。

宮坂
素晴らしい取組ですね。

情報システムの標準化

システムに合わせて働き方を変える

青梅市

宮坂
基幹系のシステムについてノンカスタマイズというのは素晴らしいなと思ったのですが、これはどういう意図なのでしょうか。

池田
それぞれが独自システムを持つというのは非常に無駄なのではないかという思いがあります。欲を言えばクラウド化までしたかったのですが、各区市町村入れ替えのタイミングが合わない、独自仕様を持っていらっしゃる区市町村と一緒にやろうとすると難しいといった事情があります。そういった意味で、今回入れ替えるにあたって、「システムはノンカスタマイズにしろ。システムに合わせて人が働き方を変えろ。」と、結構強行にやりました。

宮坂
すばらしいですね!

池田
ただし、課題もございます。というのも、実現できたのは基幹系だけで、その他のシステムも同時に入れ替えることはできなかったので、更新時期が若干ずれてしまっています。そのため、どこかで更新時期を合わせなければいけませんが、5年リースを3年で償却しなければならないなど、後追いでシステムをのせてきたものがずれてしまったりと、色々な問題点が出てきております。今は東京電子自治体共同運営協議会で、電子申請と電子調達だけは統一されている状況です。しかし、基本的なものは自治体クラウドに乗って、それに合わせて仕事をやっていくぐらいのところまでいければいいなという風に感じております。

宮坂
それは結構色々な区市町村からも同じような声をこういう場でいただいております。我々もそこは考えないといけないと再認識しました。もちろん最終的には区市町村の皆様がご判断されたらいいと思うのですが、共通化したものを使いたい時に、今はニーズに応えられていない状態になっているので、そこは考えないといけませんね。

池田
ありがとうございます。開発費用とセキュリティ費用を各種単独で持つと高いものになります。26市同じことをやっているなら同じものを同じように使えればよいと思いますし、まずは基幹系からそうなるといいなという気がします。

宮坂
ありがとうございました。その時に大事になるのが、先ほどおっしゃったとおり、システムをどうするか以前に、システムに合わせて業務を標準化することですよね。ですので、カスタマイズは全部却下する強いリーダーシップ・意思決定が本当に大事だと思うので、率直に凄いと思いました。一方現場の声として、こういう機能がどうしてもいるんです、のような声があったと思うのですが、そういった声とはどう向き合ったのでしょうか。

池田
そういう意見はたくさんありましたが、カスタマイズしたら検証作業からなにから、その担当者なり課長なりが責任を持ってやれと。ノンカスタマイズであれば、業者が全て責任を持つから、その責任を負えるのか、そう言ったところ、だいたいが負えないですと(笑)

宮坂
それは大胆ですね(笑)

都デジタルサービス局戦略部戦略課長:小澤(以下「小澤」)
標準化のお話で、国の方で2025年に向けて標準化を図って、さらにガバメントクラウドという国のクラウドの方に乗せていこうとしていますが、その観点から更に工夫をしなきゃいけない部分が出てきているのか、困っているようなことがないかどうかについて、お聞かせいただけますか。

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池田
うちの方から考えると東京都独自施策なんかもありますから、国というよりは東京都さんが統一のものを作っていただければ都内の区市町村としてはありがたいです。結局国ができても、東京都の独自施策をのせなければいけないので、その部分のカスタマイズをどうやっていくのかを考えると、各市町村がバラバラにやっていくと無駄になるような気もします。

小澤
国の17業務には載ってないという業務が出てくるかというのは我々も気にしておりまして、ぜひその辺で困っているようなことが出てきたときは私どもも国に対して伝えさせていただきますし、東京都独自のものをどうするのかも早めに研究したいと思いますので、ご意見よろしくお願いしたいと思います。

池田
それでしたら青梅市からお願いなのですが、データの活用について各市町村が色々なデータを持っていると思っています。例えば計画書を作るときの調査物ですとか、そのデータを全て集めて、一括してビッグデータにして活用するというところが、なかなか今行政では対応されてないような気がしています。ここは区市町村単位ではなかなか難しいので、都の取組でもいいですし、話題の一つとしてご検討いただければ有難いかなと思っております。

宮坂
わかりました、たくさん教えていただきありがとうございます。

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―本日は貴重なお時間をいただき、色々な形で意見交換をさせていただきありがとうございました!

本取組については、今後も継続して実施する予定です。次回もお楽しみに!

執筆者:三田 恭平(デジタルサービス局戦略部戦略課)
編集:星野 惇(同上)

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