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~西東京市CIO×東京都CIO座談会~

東京都CIOと区市町村CIOの顔が見える関係を構築するべく、東京都・区市町村CIOフォーラムを開催。さらなる都内区市町村CIO等の皆様と都CIOとのフラットなコミュニティ形成を目的とし、個別の座談会の開催に至っております!
第32回は「西東京市CIO×東京都CIO座談会」をお届けします!

※CIO(最高情報責任者):組織の情報戦略における最高責任者
※東京都・区市町村CIOフォーラム:都CIOと各区市町村のCIO(主に副首長)等が相互に密接な連携と協力を深め、電子自治体の構築や行政施策へのICT活用等の諸課題に関して、テクノロジー情報や導入ナレッジの共有化を通じて、東京都及び各区市町村のDX施策推進に寄与することを目的として設置

令和4年10月21日に、「東京都・区市町村CIOフォーラム第32回座談会」として西東京市CIOと東京都CIOの対談を実施しました。

参加者(敬称略)
西東京市CIO(副市長):萱野 洋
西東京市企画部長:保谷 俊章
西東京市企画部情報推進課長:大谷 健
東京都CIO(副知事):宮坂 学
東京都デジタルサービス局戦略部デジタル推進担当課長:藤田 武臣
東京都デジタルサービス局戦略部区市町村DX支援課課長代理:金子 貴雄東京都デジタルサービス局戦略部区市町村DX支援課課長代理:中山 寛康

議題
①システム標準化・共通化
②行政手続きオンライン化と共同電子申請
③GovTech東京について

システムの標準化・共通化

標準化推進のうえでの課題点

―西東京市様から取組のご紹介をお願いします

西東京市CIO:萱野(以下「萱野」)
 西東京市は、平成13年に合併して誕生した新しい自治体ですが、地域情報政策の推進を新市の重点施策として挙げて、先進的な取組を行って参りました。
 令和7年度が市の基幹システムの契約更新時期となっていて、それに合わせてガバメントクラウドへの移行を検討しています。ベンダーロックインを外す機会ですが、SEが不足しているとのことで、なかなか新規ベンダーの獲得が難しい状況です。他自治体の状況や東京都様のご見解を教えていただけませんか?


西東京市CIO

東京都デジタルサービス局戦略部区市町村DX支援課課長代理:金子(以下「金子」)
 ICTアウトリーチ相談伴走型支援を担当していて、他の自治体様からも同様のお話を伺います。
 エンジニアの不足は以前から言われています。私は、平成の大合併当時ベンダー側にいましたが、地方では特にエンジニア不足が深刻でした。
 今回も、ベンダー側は既存の顧客対応で手一杯になりますので、なかなか新規顧客の開拓はできないと思います。ベンダーロックインを外す機会ですが、既存のベンダーで対応することになるのではないでしょうか。

萱野
 標準化と伺ったときに、どのベンダーに頼んでも同じ仕様で同じ機能のシステムができるものと思っていましたが、ベンダーさんによってプログラムの違いが出てくるのではないか、と聞きました。

金子
 私の知る範囲では、ベンダーはマーケットで差別化の努力をしますから、ベンダー色は出ます。例えば、UI/UXの部分は顕著に出ると思います。今回は、標準仕様書で極力排除しようとされていますが、顧客の声を開発に生かしていくところがベンダーの腕の見せ所なので、付属的な機能は相違が出てくるのではないかと予想しています。

萱野
 同じベンダーさんから標準プログラムを提供された自治体は、同じものを導入してそれをカスタマイズするということになるのでしょうか?

金子
 基本コンポーネントは同じでないとサポートできなくなってしまうので、そういうことになると思います。

萱野
 ありがとうございます。次に、財政的なお話で、ガバメントクラウド移行に際して国から西東京市に2億円の財政支援があると思われます。しかし、移行費用は概算で11億円ぐらいになる見込みで、財政負担が大きいことが懸念されています。
 それと、ガバメントクラウドに移行した後も自前のシステムが残り、データセンターが存続して、二重投資のようになりその点の負担も増えますが、他の自治体ではどうでしょうか?

東京都CIO:宮坂(以下「宮坂」)
 移行期間が必要なので、その間は国と自治体独自のものが2系統あり、バトンゾーンのコストが上がることは聞いていますね。

東京都CIO

金子
 止められないシステムだと思いますから、クラウドとは言え、移行に際しては重なる期間がないと切り替えが難しいのです。その間は二重負担になってしまうと思います。
 どの程度ガバメントクラウドに移行するかについては、二重にするか、どちらかに寄せるか、自治体で使われているクラウドの費用見合いを踏まえて検討が必要だ、という声を聞いたことがあります。

宮坂
 ガバメントクラウドの移行により、国の支援と費用の間に大きな差があることは分かりました。
 GovTech東京ができて、直接お話しする場もありますので、区市町村の皆様のお声をよくお聞きして、要望として国に伝えるものがあれば、しっかりと伝えていきたいと思います。

行政手続のオンライン化と共同電子申請について

スケールメリットの実現のために最適な枠組の構築を

萱野
 
西東京市では、今年の7月からLogoフォームの活用を始めました。私も担当者から使い方を教わりまして、目から鱗です。推奨派に転じております。

宮坂
 
よかったです。

萱野
 
まずお聞きしたいのはデジタルデバイド対策でして、なかなか浸透しないことが課題です。東京都さんで今後何か新しい対策をお考えであれば、教えていただけませんか?

宮坂
 
都でも、来年度予算の検討の中で、議会からデジタルデバイド対策に取り組むよう要望されていますので、皆さんと一緒に進めていきたいと思います。ただ、方法としては、地道に直接セミナーをしていくことかな、と思います。オンラインでビデオを見てもすぐに使えるようにはなりませんから。
 それと、デジタルデバイドについて、よく、スマートフォンを使えないという話になりますが、私としては、デジタルガバメントを作りたいのであって、スマホガバメントを作りたいわけではないと思っています。

 今後も、スマートフォンが苦手な方は窓口にいらっしゃって紙で申請されると思います。たとえそうでも、バックエンドの事務処理はBPR等を活用してデジタル化できると思います。そうなれば、職員が都民の方の相談に対応できる時間が増え、回りまわって、デジタルの恩恵を都民の皆様に還元できると思います。
 やはり、デジタルガバメントが本当に目指したいものだと、自分の考えを整理しています。

萱野
 
ありがとうございます。地道にやるということですね。
 もう1つは、東京都の共同電子申請についてです。先ほどお話ししたLogoフォームを積極的に活用していこうということで、東京都の共同電子申請からは離脱してもよいのでは、という議論が内部で始まっています。

宮坂
 
私も、共同電子申請については、いろいろと課題があると思います。
 しかし、区市町村がバラバラにシステムを作ると、コストがかさみ、区市町村間のノウハウ移転の障害になると思います。皆で同じものを使うという共同電子申請のコンセプトは、デジタル化を享受するうえで適切な選択だと思います。ただし、その枠組みの進化の速度を、皆様の期待値に見合うよう上げる必要があるとは思っています。
 皆様としても電子申請自体が嫌だというわけではなくて、より良いものを求めてらっしゃると思いますので、共同のキーワードだけは外さずに、少しでも多くの区市町村の皆様が同じものを使うようにできればと思います。
 今後共同電子申請をどうするかは、骨太な検討を始めておりますので、どんどんご意見を頂けたらと思います。

金子
 
SaaS型サービス導入の要望は他にもいただいていまして、まさに今、検討部会において西東京市様も含めて都と区市町村の皆様と一緒に、導入するツール、仕様、導入のスケジュールを検討中ですので、来年度皆で一緒に使える良いものを、一緒に選んでいただければと思います。

座談会参加者の皆さん

GovTech東京について

自治体にとってのGovTech東京のメリット「4つの共同化」

萱野
 
西東京市は以前から、情報政策専門員という形で専門人材を民間から登用していまして、現状で私どもが一番の課題だと思っているのは職員のスキルの向上です。まずは、東京デジタルアカデミーについて教えていただけませんか?

宮坂
 
私からは、コンセプトについてお話いたします。私は、デジタルのことをデジタルチームの人だけでなく、みんなに覚えてほしいと思っています。都では、大体年間4万人規模ぐらいから始めようということで、オンライン教材を準備して実習できる環境を作っています。

 オンラインは限界費用があまり掛かりませんから、ぜひ区市町村の皆様にも受けたいと思っていただけるようなカリキュラムを作りたいと思います。内容についてフィードバックを頂ければ、より良いものにしていけると思います。皆が同じ勉強をして、同じ言葉で同じ考え方でコミュニケーションできるようになると、仕事の連携がうまくいくと思います。 

 また、オンラインだけではなくて、オフラインもやりたいと思っています。システムの連携以前に、人と人の連携がないとうまくいかないと思いますので、一緒に勉強した者同士の同窓会のようなものができて、62区市町村のICT担当者のコミュニティを作る機能も担えたらいいなと思います。

東京都デジタルサービス局戦略部区市町村DX支援課課長代理:中山(以下「中山」)
 
東京デジタルアカデミーの概要をご説明します。区市町村職員の皆さま向けに勉強会と研修会をご用意しています。
 勉強会については、今月末から実施しており、6回パッケージで行う予定で、参加者の募集を行っています。研修会については、情報所管課の皆様だけでなく事業所管課の皆様のご参考になるようなメニューをご用意する予定です。
 さらに、東京都職員が受けている研修の共同化も本年度から始めておりまして、後日ご案内させていただくと思いますので、よろしくお願いいたします。

萱野
 
ありがとうございます。人材育成についてはお力添えいただきたいので、今後ともよろしくお願いいたします。
 次に、人材育成以外の面について区市町村に対するGovTech東京のメリットを教えていただけませんか?

宮坂
 
先ほど少しお話しした、「共同」が一つのキーワードです。デジタルのメリットは、共同で取り組んだ時に限界費用があまりかからないことだと思います。単発の共同化で終わらせず、GovTech東京の枠組みで、共同でできるものを増やしていきたいと考えており、大きく4つのものを共同化したいと思っています。

 1つ目は「人材」です。採用、研修の他に、都の職員が区市町村に行ったり、区市町村の皆様にGovTech東京に来ていただいたり、配属を通じた育成をして、人材の確保を容易にしたいと思います。

 2つ目は「調達」です。ソフトウェアやハードウェアを皆で買った方が、コストメリットが取れたり、サポートがよくなったりする可能性があるのではないかと思います。また、ノウハウの横の移転も容易になると思います。

 3つ目は「新規システムの制作」です。例えば、校務支援システムや図書館のシステムを共同化した方がいいのではという意見があり、ガバメントクラウド以外にも、共同で開発した方が都民にとって便利でコストが安くなるものがあると思います。

 4つ目は「データ」です。ちょうど都知事杯のオープンデータハッカソンのファイナルが終わったところですが、良いソフトウェアがたくさんエントリーされていて、感動しました。しかしながら、データがないと活用できません。62区市町村全部が提供しているデータの種類が増えれば、利用者にとって便利になると思います。アプリケーションができたものについては、一早く都民の方が使えるようにしたいと思います。

 共同でできることを、4つの分野で年に1つずつでもいいから増やしていって、10年後、20年後に共同化されたものが随分増えたな、と振り返れたらいいなと思います。

萱野
 
ありがとうございます。やはり各団体でやっているとコストがかかりますし、サービス面でも不揃いになりますので、その辺を共同で開発できればと思いました。
 最後に、次第にはありませんが、デジタル化に伴ってアナログな仕事が増えて職員の負担が重くなっていることについて質問させてください。
 西東京市では、事務処理のミスが続いていまして、その原因は、ICT機器の進展によって、処理量が増加しスピードも増しており、職員の負担が増えているためです。AI-OCR等を活用していますが、データの読み取り等に一定のエラーが生じるため、結局、紙で出力して職員が2人1組で読み合わせしてチェックをしているような状況です。
 宮坂CIOはヤフーにいらっしゃったので、民間企業で工夫されていることがあれば教えていただけませんか?

宮坂
 
その点は耳の痛いご指摘だと思います。残念ながら、本来人を楽にするデジタル技術が、逆に仕事を作ってしまっているケースがあるのではないかと思います。働く人を楽に、楽しくするための技術を入れないと、長期的に見ればうまくいかないと思います。

 私が意識しているのは、デジタル化のゴールは全自動化だということです。最初はBPR等でステップや処理を削減するところから始まりますが、最終的には、どれだけ人が入らなくても業務が回る領域を増やしていくか、が重要だと思います。

 私の経験した範囲では、自動化のプロセスは、業務に精通してエラーが起こりやすいポイントが分かる人が、汗をかいて少しずつ自動化できる余地を広げていくといった感じでした。

萱野
 
ありがとうございました。

中山
 
今後、私どもも、いつどのようにご協力させていただくかということを考えていかなければいけません。区市町村の皆様やベンダーさんの状況を伺って、意見交換させていただければと思います。
 本日はありがとうございました。

―お時間も来たようですので、今回の座談会はこれで終了します。

本取組については、今後も継続して実施する予定です。次回もお楽しみに!


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