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町田市×都CIOの座談会を実施しました!part1

東京都・区市町村CIOフォーラムにおける活動の一環として、都内各自治体CIO等へ「東京都・区市町村CIOフォーラムマガジン」を発行しております。今回は、マガジンに掲載した内容を一部公開します。
第4回は、「町田市×都CIO座談会」をお届けします!
※CIO(情報統括責任者):組織の情報戦略における最高責任者
※東京都・区市町村CIOフォーラム:都CIOと各区市町村のCIO(主に副首長)等が相互に密接な連携と協力を深め、電子自治体の構築や行政施策へのICT活用等の諸課題に関して、テクノロジー情報や導入ナレッジの共有化を通じて、都及び各区市町村のDX施策推進に寄与することを目的として設置

この記事は全2回でお届けします。

令和3年10月15日に、「東京都・区市町村CIOフォーラム第4回座談会」として町田市と都CIOの対談を実施しました。

参加者(敬称略)
町田市総務部長兼情報システム担当部長(CIO補佐、CDO、CISO補佐):高橋 晃
都副知事(CIO):宮坂 学
都デジタルサービス局戦略部長:深井 稔
都デジタルサービス局戦略部戦略課長:小澤 洋之

クラウドネイティブなモダナイズ

所有から利用へシフト

―本日はお時間をいただきありがとうございます。それでは早速ですが、町田市様のDX取組についてご紹介お願いします。

町田市総務部長兼情報システム担当部長(CIO補佐、CDO、CISO補佐):高橋(以下「高橋」)
よろしくお願いします。大きく分けて2部構成になっておりまして、前半は戦略について、後半はグランドデザイン本体の考え方について紹介いたします。

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まずは戦略についてです。人口減少や社会環境の変化、コロナ禍、デジタルガバメント実行計画、そして町田市の情報システムの特徴から現状を振り返った結果、町田市の取組はデジタルガバメント実行計画として親和性が高いと思う一方、行政手続オンライン化の遅れ、ソフトウェアの構築や運用に手間がかかっているというのがわかってきたところです。
これに対する課題解決ということで、3つの方向性を定めました。1つ目は情報システムの所有から利用への転換、2つ目は国が策定する標準仕様書に準拠するアプリケーションへBPRしつつ転換、3つ目は、人手のかかるサービスデザインになっている行政手続をデジタルベースのサービスデザインに転換するということです。この3つの方向性を踏まえてデジタル化総合戦略2021を策定しました。
これまでの行政システムというのは、関係者の血と汗と涙によって支えられ、とにかく人・物・金がかかるデザインとなっていました。ここを解決するために、すべての情報システムを機敏性・迅速性・革新性・競争性が高いクラウドネイティブのサービスにシフトし、サブスクリプション形式で利用できるようにモダナイズする、つまりシステムを所有から利用へシフトすることが重要だと考えております。クラウドネイティブを活用したモダナイズによって期待する効果は2点あります。
1点目は市民サービスの向上と市役所の生産性の向上によってスマートシティ実現に近づくこと、2点目は職員がシステムに手間をかけずに済む分、企画立案や新サービスに注力することができるようになることです。
オールドファッションの行政システムのデザイン、これをクラウドネイティブのサービスデザインへ刷新するために、町田市では、これらの壮大な試みにスピード感をもって取り組んでいきます。

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都CIO:宮坂(以下「宮坂」)
ご説明ありがとうございました。私から言う話はなく、むしろ教えてほしい話の方が多かったぐらい素晴らしい進み方だと感動しました!(笑)こういった素晴らしい事例を是非区市町村の皆様に届けたいと思いますので本日はどうぞよろしくお願いします。
最初にお聞きしたい点です。2009年に新オフィスに移転された際に大きな方針が決まったかと思うのですが、相当早いですよね。きっかけは何かあったのですか。

高橋
当時は個々のシステムが独立していましたので、機器の量が多く、マシン室に機械が溢れかえっていました。そこでまずは機器件数を極限まで減らすことを重視しました。役所ではまだ流行っていなかったのですが、民間では仮想化オンプレミスという形で進んでいましたので、その技術を取り入れて物理的な機器の数を減らして適切な環境を作りました。また、外部のデータセンターを使いますので、ネットワークも考慮して移設しやすい環境を作ったというところです。

宮坂
出発点は庁舎のマシン室をどれぐらいのサイズにして、どう小さくするかというところなのですね。「所有から利用へ」に形態を変えるのはベンダーさんにとって大きな転換になるような気もするのですが、どういうリアクションをされるのでしょうか。

高橋
17基幹業務については、システムの形態は最新になってもホストの運用形態は昔ながらで、やはりその辺の意識は我々も含めベンダーさんにも変わってもらわないといけないなと思っていますが、そこが国には見えていないところだと思っています。そこをいかにシンプルな運用にしてベンダーさんがついてこられるかが大きなポイントだと思います。ベンダーさんもクラウドサービス上で自分のソフトウェアを展開するなど自分で資産を持たないような動きも出ていますので、流れがある程度できれば一気にブレイクスルーできるかと思っています。

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制度をいかにシンプルにしていくか

宮坂
ありがとうございます。利用する我々も変わらないといけない部分もありますよね、クラウドネイティブへと転換するために、カルチャーや仕事のやり方を変えるヒントを何かいただけますか。

高橋
世の中がパッケージシステムに移行していますので、システム側に物凄いカスタマイズが必要になることは中々ないと思っています。むしろカスタマイズが必要なのは現実ではないでしょうか。例えば国税と地方税のように、複雑な制度をいかにシンプルにしていくかが重要だと思っています。システムの課題というよりも、むしろ法律論のところをシンプルにする方が課題かなと。何と言うか…国から地方まで、シンプルなコントロールになるかというところが一つの課題かと思っていて、同時にすごく根源的な課題だと思っていますが、これが難しいのですよね、きっと(笑)

宮坂
そうですね(笑)制度がシンプルになると業務がシンプルになり、業務がシンプルになるとシステムがシンプルになる、システムがシンプルになると生産性が上がるということですよね。システムの一番根っこにある制度・法律がどこまでシンプルになってデジタルネイティブにモダナイズされていくか、というのはすごく重要なのだと改めて思いました。

高橋
システムは安くできる時代になっていますが、それを阻む制度の壁があります。そこの議論がやはり棚上げになっている気がします。DXではなく単なる電子化のようなノリで進めていて、ちょっとイケてないかなと思っております。逆にデジタルがここまで進歩したとも言えますし、ちょうどいいきっかけだと思っています。

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宮坂
それに関して、「法律もcode」という話を思い出しました。codeという単語には法律のcodeとデジタルのcodeの2つの意味があり、デジタルのcodeをシンプルに、生産性を高く保つには、もう法律のcodeがシンプルになっていないと、複雑でそのまま鏡として映してしまうという話です。そういうことを踏まえると、ちょうど今が現実をデジタル化するか、現実を作り変えてトランスフォームするかの瀬戸際なのかもしれませんね。

前半は町田市様の取組から制度に関するお話まで、多岐に渡る意見交換となりました。後半は人材育成や団体間のコミュニティ形成など、引き続き座談会の様子をお届けします!

執筆者:猪ノ口 渉(デジタルサービス局戦略部戦略課)
編集:星野 惇(同上)

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