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夜のバラと信号機

雨が降った日の夜に散歩をするのが好きだ。冬は特に気温も低くなり、乾いた空気と、濡れたアスファルトの反射で少しだけキラキラした地面。その中で人のいない道を歩くのが心地いい。
昼と夜では景色が変わり、夜の方が街の景色がはっきりと見える気がする。

例えば、昼間は気づけなかったが、道が曲線になっていておしゃれな造りをしている事。
昼間はただの平和な街並みだったが、夜にきてみるとなんだか外国に来たような気分になる。

サイドの街路樹もいい味を出している

昼の道は多くはないが人通りがあるので、邪魔にならないように歩く道を無意識に考えたりする。お互い歩道の左右に寄って歩く事が多いが、夜は人がほとんどいないので何も気にせず道のど真ん中を歩く事ができる。自分のペースで気にせず歩ける事が意外と重要で、より散歩が楽しくなると気づいた。

夜のバラ園

そこから少し進むとこの街のシンボル、バラ園がある。夜にバラ園に来る人なんていないのでとても寂しい雰囲気だった。
まだバラの季節ではないが、近づいて眺めてみるとほんの少し花を咲かせているバラがあった。
誰かに見られていてもいなくても、花はいつでも咲いているという事に少しだけ元気づけられる。私たちもこの花と同じように、他人の目線は関係なく花開いているのだ。みたいな事を言っている有名な人がいなかったけ、と思いながら元気をくれたバラに心の中で感謝する。

ほんの少しだけ顔を見せている花びらが愛らしい

夜にバラを覗き込んでいたので、不審者に思われないか不安になりながらも、まだ満開ではないバラ園を楽しむ。満開のバラ園も見てみたいが、少し寂しいこの季節のバラ園も、私に寄り添ってくれるようで好きだった。

信号機の悩み

昼間は自動だったが、夜になると手押しになる信号機がいくつかある。人通りは少なくても、車はまだ走っている時間帯なので、ここで信号を押して停車させるのはどうだろうか、他の道から渡れるところを探そうか。なんておそらくあまり意味のない葛藤をしながら、ボタンを押す。
ごめんなさい、と停車した車に思いながら横断歩道を渡る。こんな葛藤もこの時間帯にしか起きない事なので、このタイプの信号に出会うと「また会ったな」というような気分になる。

悩んだ割には開き直って毎回ボタンを押している

大きい通りにはこのような手押しタイプの信号機は見かけない。街の奥を歩く事で見つけられる事から、発見した時は悩むのと同時に少しだけ嬉しくも感じる。子供の頃はたくさん見かけた手押し式の信号も、時代の変化なのか、住む場所の違いなのか全くみかけなくなった。しかも触れる式のボタンではなく、しっかりと押し込むタイプのボタンで、かなり前からある信号機なのだろうか。と、信号機一つで果てしなく思考が広がる。

夜の魔法

昼間はお店がたくさん開いていて、散歩は何かをする事(買い物や外食など)のついでである事が多い。夜は基本的に開いているお店は少ないので、目的もないからこそ景色を純粋に楽しんだり、信号機で悩むというようなくだらない事も楽しめる。
昼間の明るい光を浴びるのもいいが、疲れた身体には夜の静けさをただ感じる方が癒される事も多い。
今の自分の気分で昼と夜の街を使い分ける事で、毎日の忙しい日々を乗り越えている。

Written by HINA

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