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ある春の美容室

今の街に引っ越してきてもう一年が経った。

一年というのは短いようで意外とあっという間で、いろんなものが変わるには十分すぎる時間だと思う。

一年前今の街に来たばかりだったころの私は、今の家の場所もまともに覚えられなかったし(道順を覚えるまでに3日かかった)、どこにどんなお店があるのかわからなかったので適当にその辺のコンビニで食べ物を買ってめちゃくちゃ出費をしていたし(家の近くにめちゃくちゃスーパーがあったのに気づいたのは半年ぐらい経ってからのことだった)、カフェに入ろうとして間違ってジムの入会をしようとしていたこともあった。(それはなんで?)

しかしそんな状態でも、一年も経てばだいぶ慣れてきたもので、今は家に駅に着けば即帰宅できるようになったし、お買い得なスーパーを探すのが楽しみになっているし、カフェと間違えてジムに入ることもなくなった。結局ジムには入っていない。

最初は慣れなかった街並みだが、最近はどこか懐かしささえ感じる

一年もすれば割と街の人に顔も覚えられるのか、この前ランチで入ったお店では「いつもので大丈夫ですか」なんて聞かれたりもした。(私はその店でランチはカレーしか食べないのですっかり顔とメニューを覚えられてしまっていた。これは少し恥ずかしい)

私が今住んでいる街は、改めて思ってみると程よく人とのふれあいを楽しめるような街だなあと感じる。お店の店員さんなども積極的に声をかけてくれる。最初この街に引っ越してきた当時は、そのやり取りに少し安心したものだった。

この街に引っ越してきたばかりの去年の年明けごろ、長くなった髪を近くの美容室で切ってもらった。当時はかなり忙しく、店を調べたり予約しているような時間がなかったので歩いていて何となくよさそうだなと思った美容室に予約なしで飛び込んだのだが、そんな状態でも嫌な顔一つせず迎え入れてくれた。

可愛らしい外観の美容室

こじんまりとした、夫婦二人で営んでいる店だった。常連さんが多いような印象だったが、完全に新入りの私にも快く接客してくれた。

「随分伸びてますね~」
「最近切る機会がなくて」
「髪は伸ばすんですか?」
「長いのも鬱陶しいので春ごろにばっさり切ろうかなと思っています」

こんなあたりさわりのない会話だったが、和やかで居心地がよくて、気が付いたときにはカットは終わっていた。

引っ越しやら仕事やらでバタバタしていた当時の私にとっては、こうしたなんでもない会話が癒しになっていた。

お会計の際に、「今度は春ごろにまたいらしてくださいね」と言われ、良い店だなと思った。
春ごろにまた行きたかったのだが、仕事が立て込みすぎて結局行けずじまいで1年が経ってしまった。髪もあれからずいぶんと伸びてしまった。

折角だからそろそろ切りに行こうかな、と伸びきった髪を見ながら最近思う。

一年越しにはなってしまったが、「春になったので髪を切りに来ました」と言いに行くのもまた一興だろう。

Written by yuuun

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