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【活動報告】第三回東京建築散歩「東急線の跡地をたどる」を実施しました

東京建築散歩は3月26日、3回目となる「東京建築散歩」を実施しました。

中の人、インスタグラムを見て参加してくださった方など、総勢6名。これでも過去最高の人数だったりします。テーマは「東急線の跡地をたどる」(ほぼ後付け…)2013年まで地上を走っていた東急線の線路沿いをテクテク歩く、約3時間のツアーとなりました。

実施当日。

雨ッ!!!!!!!!!!!!!!

超雨ッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

季節柄仕方がないのですが、それでも週前半にあったうららかな春はどこへやら、冷たい雨が降り続く1日でした。桜も散る散る。それでも皆さん迷わず集合してくださったのはありがたい限り。

散歩ルートは下記のとおりでした。

渋谷ストリーム

渋谷ブリッジ

アミューズメントメディア総合学院

代官山アドレスザ・タワー

旧朝倉家住宅

ヒルサイドテラス

それぞれ、現場の様子をお伝えします。

渋谷ストリーム


約10年前の2013年に地下化された東横線の跡地を利活用した施設として2018年に開業したのが渋谷ストリームです。ここで集合、出発しました。

キラキラ階段

キラキラ階段(画像はお借りしたものです)

1階の広場にはキラキラ光る階段が幻想的に光っていました。

これ、東急が最近お気に入りなんですよね…二子玉川の「二子玉川ライズ」バス乗り場付近の階段や、南町田グランベリーパークの駅階段にも似たような表現が見られます。

グランベリーパーク(画像はお借りしたものです)

「ストリーム」の由来


施設内は、東急の地上時代を彷彿とさせるようなレールやホームの跡が描かれています。道中、「なぜ”ストリーム”なのか?」という質問がありました。調べてみると、線路跡地というゆるやかな道、体験・交流・挑戦などの次世代に向けた流れ、そして隣を流れる渋谷川から命名されたようです。たしかに「ストリーム」って「流れ」って意味合いが強いですね。

幻のユーチューブ事務局


レンズがベタベタだったので別日撮影

渋谷ストリームを離れ、渋谷駅新南口を通過し、恵比寿方面に川沿いを歩いていくと、やたら新しいくせに、まったく人の気配を感じないビルが見えてきます。

外壁に「再生ボタン」!?

材木感のある独特なファサードの上のほうには、「再生ボタン」らしき何かが。実はここ、2020年にグーグルの「YouTube space tokyo」が六本木から移転してくる予定だった、しかしコロナでオジャンになってしまい、現在放置されている場所、という情報がありました。

情報源:
https://www.artarchi-japan.art/2023/01/youtubespacetokyo.html

コロナでいろいろ頓挫したっぽい

じゃあ「YouTube space tokyo」ってなんじゃい、となるわけですが、これについてははっきりした情報がありませんでした。たしかに2020年3月頃には「#YouTubeSpaceTokyo六本木から渋谷へ」というハッシュタグがTwitterなどに上がっています。

https://twitter.com/hashtag/YouTubeSpaceTokyo六本木から渋谷へ?src=hashtag_click&f=live

スタジオセットや編集機材などの揃ったクリエイター向け施設のようですが、コロナ以降完全に息を潜めてしまい、YouTubeSpaceTokyoの公式Twitterアカウントも2021年で更新を終えています。担当者、クビになったのかな。ちょっと心配です。

というわけで、渋谷のYouTubeSpaceTokyo(になるはずだった場所)、マニアックな東京名所なのでした。ファサードだけでも一見の価値あり。

謎の看板跡と謎のカウント

渋谷川沿いを歩いていくと、マンションのベランダにところどころ剥がされた看板跡がありました。

あるいはこの「朝日新聞」のように、ほとんど人通りがないにも関わらず、看板が残っている場所も。

確証はないのですが、おそらく東急線が地上だった頃は、看板として機能していたのかと。カーブと終点に挟まれたこのエリアは、必然的に電車がゆっくり走っていきますから、当時は広告効果があったんでしょう。地下化とともに契約が切れて剥がされたのかな…?など考えたりしておりました。


天気の良い日に撮影

さらに、ところどころに謎のカウントが。渋谷から離れれば離れるほどその数は増え、60~70台にまで増えました。

実はこれ、「渋谷駅」からの柱の数を表しています。駅の0キロポスト周辺に今にも消えそうな「1」が。(※別日撮影)

東急の地上時代を彷彿とさせる作りですが、これをやって何になるんだろう?と思わなくもない…ちょっと歴史が感じられるスポットではあります。

閑散とした渋谷ブリッジ


そのまま進みます。並木橋を超えて、東急線の線路跡地がカーブするエリアに行くと、「渋谷ブリッジ」があります。低層ですが線路跡に合わせてグッと右カーブをしており、周辺のマンションにまったく劣らない個性を発揮しています。

線路跡を保育園として活用

A棟とB棟に分かれており、A棟はかなーり静かです。保育園として使用されているため、土日はほとんど人がいません。

やっと傘をたためるエリアまで歩いてこられたので、遅めの自己紹介。Sさん・Hさん・Sさんのメンズ3名がゲストでした。建築業界の方、海外との関わりが深い方など、さまざまなバックグラウンドを持った方にご参加をいただきました。


B棟はハンバーガー店などが揃い、賑わっていました。外国人の姿もチラホラ。

代官山っぽいエリアを散策


外壁と吹き抜けのデザインが特徴的なアミューズメントメディア総合学院を経て(説明会にお越しの方ですか?とスタッフに声を掛けられ焦った)、線路をくぐり、坂道を登っていきます。

「まさに代官”山”って感じ!」と思っていたのですが、実は代官山という地名は東急線の線路の西側、かなり限られたエリアのみのものだそう。なので、このあたりは地名は恵比寿なのに代官山を名乗る、代官山っぽい高級感のあるエリア、ということになります。

ヘリンボーンってなんだ。

やはり財力のあるオーナーが多くいらっしゃるのか、外壁にも力が入っています。参加いただいた建築業界の関係者複数名が、特に着目したのがこちらの建物。

やや古風なヨーロピアンテイストを醸しながらも、開口部をかなり大きく取っており、なかなか難しい設計をこなしているのだとか。入り口のランプや、おそらく人為的につけられたであろう汚し。随所にこだわりが感じられるのだそう。

そして、そのニ軒となりの建物にも熱視線が。ヘリンボーンというデザインを外壁のコンクリート部分にふんだんに採用した建物です。

この加工はそもそも手間がかかり、さらにこの作業ができる職人も限られるなどの理由で、相当難しいのだとか。家にもこだわりがありますね。

こういったニッチな建物は通常の建築雑誌や観光雑誌にはまず出て来ないはずです。これぞ東京建築散歩の醍醐味、と思っていただければ。

賛否両論の代官山アドレスザ・タワー


代官山は、もともと代官の屋敷があったからという説や、代官が管理する山林があったからとする説があるが、由来を示す資料は残っていません。間違いないのは、代官山というワードが東京エリアで強力なブランドになっているということでしょう。

元々は震災復興の象徴だった

代官山駅と歩道橋でつながっている代官山アドレスザ・タワーも、その象徴の1つかもしれません。ここにはもともと同潤会アパート・代官山アパートメントという歴史ある建築がありました。

日本最古のRC 造の公共共同住宅で、関東大震災からの復興の一環で1927年に作られたもの。1996年に解体となり、現在タワマンになったという歴史がある土地です。

2000年にできた古参タワマン

この代官山ザ・タワーは2000年築。当時としてはまだ珍しいタワマンでした。その一方で代官山というエリアに高層建築は似合うのか?と議論された建物でもあります。とはいえ2023年にもなり、すっかり街に馴染んだ感もあります。建物を高層化することで空いた土地は広場や公園になり、大きめのスーパーを始めとする商業施設も揃っています。にぎわいという観点ではいろいろ学ぶポイントのあるまちづくりです。

道中、ワインコルクが道端に捨てられていたのが個人的に印象深かったところ。かつて自分が住んでいた江戸川区ではストロングゼロが相場だったんですが。道端のゴミにも地域性がありますね。(ちゃんとゴミ箱に捨ててくださいね)

旧朝倉家住宅


代官山駅から足を伸ばしたところに旧朝倉家住宅があります。ここはもともと渋谷区議長などを歴任した朝倉虎治郎が住んでおり、その自宅がGHQに接収されたり、売却されたりを繰り返し、一時期は省庁の会議室、また現代では大正時代の日本建築を今に伝える場として、時代とともに移ろってきた建築です。

日本の伝統建築を今に

入り口で100円(やっす)を支払い、建物内へ。やはり日本建築らしく、日当たりの良い部分は客間や主人の部屋に、日当たりの悪い場所は女中や事務室に。玄関口も正面玄関と勝手口があり、来客時に正面玄関を使用していたなど、当時の世相が建物の機能として反映されているように見えます。

また、日本らしい床の間や違い棚も。違い棚の縁の部分の曲線、かつては「生首を置いたときに血が流れないようにしたもの」っていう説が提唱されたんですが、これはマジなのか都市伝説なのか。

一見するとサザエさんの波平が出てきそうな空間ではあります。しかし、瓦に銅を使用しており、格式を感じます。また窓ガラスは戦前~戦後まもなくの大量生産体制が整う前のガラス(独特のゆがみがある)など、保存状態は良好。

お庭も見事!

見事なのは庭です。雨が降っていたこともあり、中庭の池や手水鉢に注ぐ雨水の波紋が、なんともエモーショナル。秋には一面の紅葉、初夏には若葉の新緑を楽しめます(案内役のおじいさんがいっぱい写真を見せてくれた)。これはリピートしたい場所。

ヒルサイドテラス


旧朝倉家住宅のすぐとなりはヒルサイドテラスです。代官山エリアを象徴する、低層かつ回遊性の高い商業施設が揃っています。テナントもなんとなく高級感です。今回の建築巡りで一番ベタだった場所かもしれません。

代官山ブランドの象徴的建築

ヒルサイドテラスは旧山手通りに面した、朝倉家の広大な所有地を活用したまちづくりプロジェクトでした。建築家・槇文彦氏の代表作の1つと言われることもあります。1960年代から徐々に開発が進み、現在の形になっています。

ただでさえ広い通りに、建物をオフセットし、なおかつ低層階を全面に押し出した作りとなっています。そのため通りと建物、地上と空中階の境界は非常にあいまいになっており、回遊性の高さにつながっています。

まとめ


このあとは、雨も強まってきたこともあり、体が冷える前に近くの東京音楽大学に忍び込んで、カフェでコーヒーを飲むなどしておりました。(ゲストのみなさんはアイスコーヒーでした。猛者。)今回は肌寒い雨のなか、ご参加いただきありがとうございました。充実した時間を過ごせたと思います。

東京建築散歩では、新旧様々な建築、さらに雑誌に載らないマニアックな建物を、みんなでわいわい楽しみながら散歩するコミュニティです。2019年から活動しており、コロナ明けというタイミングでリアルでも色々と企画するようになってきました。

次回はGW空けあたりを目処に「銀座」で開催を予定しております。参加費無料なので、ご興味があればインスタグラムにDMを送ってください。追って日時など、共有いたします!

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