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「短編」 スカートがひらめいたのはだれのせいかしら


 名誉か金か、それが問題だ

1,

 困ったもんだ、
明治どころか昭和も平成も遠くになった
石川啄木が食べるための歌を模索したのに、
最近は金儲けの歌ばっかりで、歌謡曲を作る前から皮算用するやつもいる

 衣食住足りて愛を説く夏目漱石より、
愛を説いて衣食住を得ようとするモノばかり

 労働や経済の下部構造が、
倫理宗教や芸術の上部構造を規定するってマルクスが言ってもなんのことやら
共産主義国を批判するのに資本論を読んだことを自慢し、推奨する学校の先生やインテリに似て、ホンネを包み隠しタテマエを語りたがって、頭隠してお尻まる見えだった

 たしかそのときは、
陽射しが心地よく風が舞う、春三月の頃だった

 下宿の近くにある禅寺の帰り道、古葉野次こばやじ秀雄はそんなことをつぶやきながら歩いていた
そばにはカレが禅寺で座禅をくむようなきっかけになった少年がいる
ポップキャンディーが大好きな子供で、名前をさとしと言っていた

 古葉野次は最近の文学業界について、
いくぶんなげいていた
クラッシック音楽とポップスと同じような、文学業界とマンガ娯楽小説界
高慢と偏見がうごめくナカ、会社のイメージと会社維持の商売経営

 自己満足から始まったサロン的な同人雑誌の文学が、
いつの間にか独りよがりなモノになり
いっぽう大衆相手から始まった読みもの雑誌は、売り上げアップをもくろんで、どこを取っても同じような金太郎飴みたいな小説ばかりだった

 昔からあっただろう、
タテマエもあれば生活もある
文学を追求したいけど、金も欲しい、ともなって名誉も欲しい
けど、現実はそんなにうまくいかない
いい小説も書きたいけど、
そんな面倒くさいものより、てっとり早く面白いのが読者が取りやすく売り上げもよかったし、出版社も経営維持できて、その反面で純文学と言われる文芸誌を出していたら、社のブランドにもなった

( 娯楽番組で会社維持して、報道番組で顔を上げようとするテレビ局みたいだった。
 でもじっさいは昔は娯楽番組見てバカになると言われ、いまはニュースをみるとバカになると言われている 。
 アメリカ国民の7割がニュースを信じていないと言われ、すなおな中国人や日本人にはとても信じられなかった)

2.

 小乗仏教と大乗仏教に似て、
と言ったら大げさに感じて、あちらに立ったら、こちらが立たない、うーん

 そんなことを考えていたら、ふと目の前に若い女性と思われる人が歩いていた、
たぶん前にまわって見なくても美しいと思われる後ろ姿は、明るいカラフルな花柄のワンピースを着込んでいても、たおやかで弾力あるヒップが垣間見えて、ススッと歩行を歩んでいらっしゃいました

 そこに突然、思わない幸運な出来事が起こった
ワンピースのスカートがフワッとめくり上がって、女性の白い太ももな脚足があらわになってしまった

 すかさず
「春風のいたずらだね」、とさとし君
「まあな」、とオレ

 すると、さとしが変なことを言ってきた
「ねえ、おじちゃん、あれはスカートが動いたのか、風が動いたのか、どっちだと思う」


 変なことを言うやつだな
どっちだと思う、と言われても、
風が吹いたからスカートが吹かれたんじゃないのか
でも逆に、スカートが吹かれたから風が吹いたのがわかったわけだし、
うーんそうだな、
風も動いているし、スカートも動いているぞ

 作用反作用の前後の違いがあるにして、スカートがひらめいたことに変わりがなかった
だから風が動いているのか、スカートが動いているのか
端的にどっちと言われてもなあ
すると、さとしはこちらを見てニッと笑った

「ふふふ、どちらでもないよ、動いたのはおじちゃんの気持ちだよ」

 そう言い残すと、胸ポケットからペコちゃんポップキャンディーを取りだし、口に放りこんで、先にスイスイ歩いていった

 あのやろう、生意気言いやがって、まだあそこにケも生えていないくせに、
しかし心中さっせられて、名誉か金かに似て、また一本取られてしまった


 ペコちゃんがいいのか、キャンディーが好きなのか

出典:japan food


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