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「短編」 おれってヤザワ、いたってナイーヴで、ナルシスト

( スーパースターは大国でしか通用しない、小国では通用しないだろう。
エチオピアにエルビス・プレスリー、ビートルズはいるだろうか、芸能界かあるかどうかもわからない、むしろ日本人のどれだけの人が興味あるだろううか。世界に興味持たせるにはひと目をひく華やかな大国になるしかなく、その大国になるには手っ取り早い暴力で戦争してセレブ国家になり、絶えず戦争の火ダネを与えて国家を印象させねばならないのは、薄利多売の大衆的な文化や実用品でもっている大国アメリカの情けない事情もあった。

営利目的の薄利多売な文化が、とにかく世間を炎上させて名前と顔を売って、羊頭狗肉であっても、またインスタント外食産業同様に口当たりも残らない刹那的なモノと言っても、強い時の大国発祥文化なら世界に通用するだろう。でもそんな国家に追随しなければ生きていけない国家政府、そんな「大手資本家に餌付えづけされた文化」がカッコいい、と思っている国民がいる限り安泰だろう。

けれども
芸術、文学が人間を知る手段であるならば、食べ物と同じく風土や国民性に根ざしていなければ意味がないし価値もなく
世界中どこに行っても画一的なファーストフードを食べ、あたかもロボットや家畜みたいに餌付けされたワンパターンな文化におもしろ味があるはずもなく、
われわれが知らない異文化に興味を持つのは自然の欲求でもあり、違うものを味わって初めて日本人を感じ、大きくいえば地球に住む同じ共同体である人間を知る。

日本人ほどに中国文化を知らない欧米人にとって、中華料理はうまいのかな。
ヨーロッパの絵画、クラッシック音楽がもてはやされたのはヨーロッパ列強のときで、そこからヨーロッパの人間性とか文化を知っていった、薄利多売でもなくても料理同様にいつまでヨーロッパ文化が日本人や世界に根づいて行くものかどうか。

それにしても中国やヨーロッパ、アメリカが大国のときに、学んで応用してきた日本人にとって、日本独自の言語、芸術文化はいったいどのようにして可能だろうか )


 おれってヤザワ、日本人好みのホラ吹きミュージシャン
そう、これって、ヤザワがビッグになっていた頃の話さ


 カレ、ヤザワはビッグになっても、初心をいつも忘れていなかった
ハングリー精神をいつも心に携えていた

 むかしは自己主張するあまり、意見のちがう相手や意気地のない男を攻撃したりすることもあった
すべての人がヤザワみたいに強いわけでなく、カッコよく派手に行動したくても性格的に地味でどんくさくて、思っててもできない人が多く、むしろ人前で自己主張できないで、傍からみれば弱い人間だなあ、と思われている人が多かった
だからこそヤザワの存在意義があった

 そんなヤザワ
逆境の中から生まれた産物だった
いまも小さい頃を忘れていなかった
おいしいものを食べた思い出がなく、誕生日のごちそうにおばあちゃんからタマゴをふたつ貰えたことぐらいで、いつか大きくなってぼた餅を死ぬほど食べたかったそうだ

 そんなカレも今では

 おれがビッグになって、お金が入り、なんでもできて、もう欲しい物ないね
あるとしたらビッグからグレイトと呼ばれることぐらいかな、とホラ吹きミュージシャン

 そんなホラ吹き男
いまでも反面教師だといわれても、自分がこう成りたいと願い、そのように自分を鼓舞していこうとする頑張り屋さんでもあった

 そんなカレ
ひとつのルーティンというか、習慣の癖があった
朝起きて顔を洗い、鏡に向かって、自分に問いかけるのだった

「今日もヤザワを演じるぞ、はい」

「おまえはヒーローだ、はいはい」

「アナタって口でワイルドなこと言ってもからっきしで、あのときはいつも、ワンパターンのセクシャル•ポジションなんだから、何をー、はいはい」

「今日も一日がんばるぞ、はい」

 そして最後に軽くニッと笑って、鏡にやさしくウィンクした
「グッモーニング、ヤザワ、よろしく」









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