「一歩、二歩、プロポ」 炒飯(チャーハン)、ひとつください
1.
英語を学んだとき、一番困ったのが発音でした
英文解釈は中学のときからやっているので、まあまあなんとかなります
ほとんどの日本人が帰国子女みたいに外国に住んでるわけでなく
島国のなかで、英米人と言葉を交わすわけでもなく、
テレビラジオ、ネットから流れる音が頼りの、一方通行
まるで通信講座で習った空手みたい
それでもなんとか英語好きな人は、ポップスなどの歌などで発音稽古したり工夫します
英単語の発音練習が終わったら
次につながった連音の発音で、フランス語のリエゾンみたいなもの
Take it easy
テエイキット イーズィ、テエイキティーズィ、そしてテエイキリィーズィ
Let it go
レティト ゴー、レティッ ゴー、そしてレリッ ゴー
などと発音しながら、そうかこの it のtは、ら行なんだなと感心して稽古したものでした
四天王を「してんおう」といわずに「してんのう」と同じだな
思わず小学生になった気持ち
こんな感じでいろいろ発音稽古しても、じっさい外国に行ってどうなの、ほんとうに通じるのかなと不安に思う
昔、英語の達人で植草甚一さんという人がいました
英語の本や英雑誌に精通して、部屋のなかは英語の本でヒラヤマのマウンテン状態
あるとき劇作家の寺山修司さんが、植草さんにアメリカのある小さな場所を知らないと思って聞いたら、即座に答えられたのにはビックリしたといっていた
そんな植草さん、じつは一度もアメリカに行ったことがなかったそうです
経済収入の面もあって行けなかった
60才過ぎに収入安定して初めてアメリカに行ったところ、英語の発音がまったく通じなくて大変だったとこぼしていました
それから毎年のように、何か月も行っていたので、読書と同じく達人になったことでしょう
2.
ボクにも同じような経験があります
L とR の発音の区別はとても困ります
語尾のL は
Beautiful
Pool
のように歯茎近くの「う」
語尾のR は
Father
Matter
のようにのどもと近くの「あー」
でも困るのが最初にあるL とR の発音で、こちらが意識して発音しても、聞きとりは区別ができなくてとても大変です
ドイツ語のR みたいに「るるる」と巻き舌を使うのもわざとらしいし、
聞きとりでは、状況で感じとるしかありません
同じ「はし」でも箸、橋、端みたいな、一休さん問答
そんなこんなで寒さを逃れて、あるときバンコクに行ったときのことです
レストランでライスをたのんだとき
思わず発音の L と R が浮かんできました
Rice[rais]と Lice[lais]
発音は似てるけど意味がまったくちがう
Lice は Louse の複数形でシラミの意味があります
まさかこんな場所で頼むわけがなく
でも外国に来ても、なぜか世間体を気にする気弱な日本人
ここでもきちんと対応したがります
以前レストランでメニューに「白飯」と書いてあったのを思い出し、
そうか 、White Rice
White のhは発音しないし、語尾の子音はあまり強く発音しないから
ワイッ ライッ
White Shirt「ワイシャツ」は、 ワイッ シャーアッ
だからな、と思い浮かべていた
そこでそばにいた中年のオーダー係にいった
ワイッライッ、プリーズ。ワン。アーユー、オウケイ。
中年のおっさんはイエスとかいいながら、引きさがっていった
うふふふっ、完ぺきだ
でもニコニコして持ってきたのが、なぜか炒飯だった
えっと思ってふり返ると、先ほどのおっさんがボクの両肩を優しくふれながら、笑顔でシェシェといっていた
どうも Fried Rice と勘違いしたらしい
あとで、こんな発音の間違いをしたという有名人の話を聞いて、だれでも一度は経験しているんだな、と変に同感したものだった
ちなみにライスをたのむとき、百発百中の言葉をあとで見つけた
Steam Rice
日本人好みのライスはこれで通じるし、発音も容易だから安心というものさ