見出し画像

断片 『君の住む町で』の抜粋、「I」


 平凡な時代になれば、むかし家柄、いま学歴で大衆の目を引いて、小池百合子さんや小泉進次郎さんが実態よりも、親に泣きついて大学や大学院の卒業証書を欲しがるのは自由でも、何度もいうように所管する大学に恩恵を受けて弱みを握られ、エジプトやアメリカに国益や外交が左右されれば個人の問題ではない。だって力量がないんだもんとか、都知事とか国会議員はけっして芸能人の人気投票みたいに登場すべきではない。
 それにまた、手っ取り早くヒトラーやムッソリーニみたいにアホーマンスをして、権力を欲しがるような、むかし小泉純一郎や橋下徹、いま石丸ナニガシや泉ナニガシらが登場したがっていた。

 王将みたいに一歩一歩進むのを嫌い、見た目の上っ面で登場してきたので、跡はいつも虚しい感情だけが残るのはしかたがなかった。
 元はといえば地道に読解力を養うのを嫌う、薄利多売の大衆相手の文化に似て、実力より瑣末的な人気、質より量の文化でした、このような雰囲気はいたる所で見られ、時代の情況をうつしだしていた。

 むかしマスコミは為政者によって「弾圧」に屈して、いまは為政者と深く利害関係で「癒着」して屈し、われわれ国民はむかしもいまも「無関心」で屈していた。

 それでも、傍観者みたいに感傷的になってばかりいられない、政治家は言論活動して、作家は言語表現するがお仕事であり、クリエイティブするのが使命である、
 などと最近、小説を書き始めた江輪維井涌えわいいわ、やっぱり変なペンネーム、そう意気込んでみても才能ばかりはひしひしと、最後まで読んでくれたらとてもうれしいです、そんな、あなた頼みの小説を書いていました。


「おじちゃん、だめだよ」

 突然、子供が私の腕を握ってどこかに連れていこうとした、さきほどレストランのなかにいたあの少年、確かさとしとかいっていた。

 「ここでたばこをすっていたら警察に見つかっちゃうよ、警察署に連れていかれてしまう」

 大げさな。たばこをすっているぐらいでそんなもの、口頭注意はされるだろう、だめだよ、こんなところですってちゃ、喫煙所のあるところですいたまえ、マナーに反しているよ、そんな程度じゃないの。捕まえてみろ、そんなもの私が公務横暴罪で裁判所なんかに訴えてやる、だから少年、安心しろ、でもこの少年、変に深刻な顔だった。

-1より



 えっまた、そんなこと、本当かよ。まいったな、ここにはひと段落する場所もないのか、世も末だ、いくらたばこ嫌いが多いからってそんなに排斥していいものかよ、驚きというより、もうあきれてしまってどうにもこうにも。
 おじちゃん知らないの、さとしは壁の方を指さした。そこには、なにか告知版みたいなものが貼ってあった。ああ、そう。たぶんモラル的なものを書いてあるんでしょう、ここは市民が活用する場所です、迷惑なるような行為、飲食、喫煙はおやめください、子供たちもいますとかなんとかでしょう。

 さとしは私の顔をちらっ、指を横に振りながらそれだけじゃないよ。それだけじゃないってそれ以上か、それ以上もなにもなにしろ駄目なんだろうそんなもの、婦女子の市民団体がヒステリックになって、あれも駄目これも駄目って、大の大人がいちいちそんなもの。
 わかったよ、どんなこと書いてあるか、もしとんでもないひどいことが書いてあったら承知しないぞ。でも告知板には驚いた、承知されそうになった、どうしようもないほど。

-2より



「皆さん。皆さんの町を守るのは市民の皆さんです。市民生活をおおびやかす反良俗、反社会な行為を断じて許すことはできません。市民の健全さと健康を守るために、たばこの廃絶に尽くすことをあらためてここに力強く宣言したい。

 とにかく正義をおこなうとするとかならず反対する人がいます、どんな世界にもいます、そんなことに屈していたら何事も正義は実行できません。なかにはたばこと癌は関係ない、必然性がない、喫煙率が減っているのに癌が増えている、そう、のたまう連中がいます。

 そんなことはありません。わが国の同盟国である英米始め、国際の保険機関は健康の害を認めているじゃありませんか。わが国の大学のえらい先生による研究結果もそうですし、国立の大きい病院長も副流煙被害を大々的に説いていました、いったいどこにたばこがいいんでしょう。

 もしかして灰がらを放置されているだけでも、いつしか私たちに不利益をもたらしているかもしれないのです。どうして、このようなことが許されるのでしょうか、けっして許されません。

 でもね、皆さん。何事も、なんでもだめではあまり大人げない。逃げ道がなければ、かた苦しくって生きていけません。そこで一歩ゆずって、どうしてもたばこをすいたい人のためには、家庭内だけはたばこをすってもいいんじゃないかと私たちは努力したのでした。

 また、市民の健康を守るためにたばこの値上げに尽力したのです。どうしてもすいたい人はそれからさき、本人の手腕にかかっています。奥さんをどう説得するか、私なんか、とてもたち打ちできません。はははっ、せっかくプロレス観戦なのに、こんな野暮な話をする羽目になってしまいました、どうか、お許しください。

 さあ、スポーツを楽しみましょう。これからも私たちは市民生活を守るために、この美しい町を守るために、市民の敵を排除していきましょう、守っていかなければなりません」

-3より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?