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生きるとは

何をやってもうまくいかない。
もう自分が嫌になってくる時がある。

それでも時は待ってくれない。流れ続けていく。

どんなにダメでも生きねば。
私がそう思う話。


私の両親は共働きで、
ほとんど祖母に面倒を見てもらっていた。

祖母は優しくて、本当に可愛がってくれたし、
何よりどんな状況でも私を信じてくれた。

天使のような人だった。

思春期で不安定な時も、
祖母にだけはいろいろ相談できた。

「生きることは辛い。でも頑張れ。修行してると思えばええんや」

よく祖母は言っていた。


月日は流れて、私は地元を離れ、
なんとか社会人として生活できていた。

そんなある日、
祖母が緊急搬送されたと連絡がきた。

駆けつけた時目にしたのは、
延命治療を受け、自力で呼吸ができず、
管だらけになった祖母の姿だった。

笑顔が素敵だった祖母の顔が、
薬で意識を飛ばされて虚になった表情になっていて、言葉を失った。

あんなに泣いたのは生まれて初めてだった。

ここまでしないといけないのか。
いっそ楽にしてあげた方がいいんじゃないのか。
もう十分頑張ったじゃないか。

そんな思いでいっぱいになり、
家族にその思いの伝えた。

搬送に付き添った叔母が言った。

「救急車の中で、延命治療するかの選択を迫られた。私もその思いだったんよ。もう十分頑張って生きたやんって」


「でも、辛うじて意識があるばあちゃんに聞いたんよ」

「生きたい?って」

「そしたら、頷いたんよ。だから延命治療を決めた」


胸が締めつけられた。

まだ祖母は生きることを諦めなかった。
すごい人だと感じた。


私は最後を看取ることは出来なかったが、
最後は身内みんなに囲まれて旅立っていった。



祖母が生きたかった明日に私はいる。

大層な人生でなくていい。
ただ自分から諦めることはしたくない。

どんなに情けなくても、歯を食いしばろう。



今私を根底で支えてくれている考えである。


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