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国葬にかかる法的根拠の必要性について

安倍元総理の国葬についての世論動向に驚いています。その理由として「統一教会との関係」があることはいうまでもありませんが、もう一つ「国葬の法的根拠」について保守派も左派の議論にたぶらかされている傾向が読み取れますので整理しておこうと思います。 

1 国葬に法的根拠が必要だという議論ですが、憲法論としては、必要ありません。これは「法律の留保」というタイトルで議論されていることですが、法によることが必要な場合は、権利侵害を伴う場合であることは最高裁判例で確定していることです。これを「侵害留保説」といいます。

2 支出における国会の議決については、憲法は87条で予備費制度というものをもうけており、その支出については閣議決定で決めることができます。

3 国葬が思想信条の自由を侵害するという議論は、国歌斉唱事件における判例の適用場面であり、強制がない以上直接侵害はなく、間接侵害も参加を拒否できる場合には認められる余地はありません。 

4 「1」に関してですが、反対論者は、国民葬や合同葬なら良いというような主張ですが、「国葬」に法的根拠が必要という議論であれば、「国民葬」や「合同葬」では法的根拠がなくても構わないという理由が不明です。「国民葬」でも「合同葬」でも税金から国庫負担があることは同じです。 

5 政府が法的根拠としてあげている内閣府設置法4条33号の「国の儀式」は、国葬も含みますし、国民葬も含みます。海外からの多数の弔問客を迎えるのに「国葬」にしない理由はないでしょう。  

6 上記のことから、日弁連は、共産党や左派から強烈な突き上げをくらいながらも国葬に反対する会長声明を見送りました。大阪弁護士会もそうです。
国葬には反対せず、それが思想信条の強制にならないよう配慮すべきだというところで落としました。
共産党・左派勢力は、今でもガンガン突き上げてきますが、法律を必要とする法的な根拠がないので、これを押しとどめることができたのです。

もちろん、政治的判断として国葬に反対するという判断は保守派からもあってしかるべきところですが、法的状況については、上記のとおりであることを踏まえたうえで行うべきかと考えています。   

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