見出し画像

ビッグボス新庄流SNS活用術は、日本の野球界とファンの関係に革命を起こすか

日本ハムのビッグボスこと新庄監督の様々な取り組みや発言が、開幕前から様々な話題を呼び続けています。

特に、業界に衝撃が走ったのは、開幕投手を新庄監督が自らのSNSで公開したことでしょう。

開幕投手をドラフト8位のルーキーに託すという大抜擢も衝撃ですが、開幕投手の発表をインスタグラムとツイッターでするのも前代未聞。

結果的に、普通に開幕投手を発表するよりも大きな話題になっていますから、SNSに慣れている新庄監督ならではの流石のアプローチと言えます。

そんな新庄監督のSNS活用は開幕投手発表に留まらず、日本の野球界とファンの関係を劇的に変えてしまうポテンシャルを秘めている、といったら皆さんは大袈裟に感じるでしょうか。

新庄監督ならではのファンとの対話

新庄監督のSNS活用の特徴を一言で表すとするならば、「ファンとの双方向のコミュニケーション」にあります。

一般的な著名人のSNS活用は、自身の活動の宣伝や紹介という一方通行の情報発信になりがちです。

なにしろ新庄監督のツイッターのフォロワー数は71万人で、インスタグラムにいたっては100万人を超えています。
1人1人との双方向のコミュニケーションを実施するには、多すぎる人数と言えるでしょう。

ただ、新庄監督のSNS投稿の多くはファンに対する投げかけであり、ファンの意見を取り入れるという姿勢を常に示しているのが印象的です。

象徴的なのは、こちらの投稿でしょう。

「皆さんならどっちを選ぶ?」という言葉とともに2枚のバイクの写真を投稿。

新庄監督がプライベートで購入するバイクの検討をしているのかと思いきや、実はこの2週間後のキャンプインに、このバイクが移動車として登場するのです。

間違いなくバイクの写真の投稿を見ていたファンは、自分達に問いかけたバイクに乗った新庄監督の姿を見て、新庄監督を身近に感じることができたはずです。

スタメンにもファンの意見を反映

こうした新庄監督のファンの意見を聞く姿勢は、野球自体にも反映されています。

実は新庄監督は、監督就任発表直後の10月30日に「たまにファンが選ぶスタメン試合を検討しています」とツイッターに投稿していましたが、3月には実際に有言実行でファン投票でスタメンを決める試合をしています。

3月19日に行われたこの試合では見事な逆転勝ちを収めたそうですから、ファンの方々の盛り上がりは容易に想像できると思います。

こうしたファンを大事にする姿勢は、新庄監督自らツイッターに投稿されていましたが、選手時代の経験が影響しているそうです。

従来のプロ野球チームの監督が、どちらかというと孤高の存在で、ファンからすると口をきけるような相手ではないという印象が強かったのを考えると、新庄監督が規格外の監督であるのは間違いありません。

ファンの投稿を積極的にリポスト

さらに新庄監督のSNS活用で興味深いのは、ファンの投稿を自らの投稿に活用するいわゆるリポストやリグラムと呼ばれる行為を積極的にされている点です。

例えば3月12日には、「さすがスター BIGBOSS出待ちえぐい」と、ファンがインスタのストーリーズに投稿した動画を自らのインスタにリポスト。

「広島市民の皆さんの暖かさは昔から感謝しかないです 本当に沢山球場に足を運んでもらい選手達もハツラツとプレー出来ます」とコメント付きで投稿したことが、メディアにも取り上げられていました。

さらに、3月13日には、「今日はお顔が見れたので満足。かわいかった」というファンの投稿らしき写真を自らのインスタグラムにリポスト。

「50のオッサン捕まえてかわいいってイジり過ぎ」と、ファンとのコミュニケーションを楽しんでいる様子が伝わってきます。

これは想像ですが、インスタグラムのストーリーズの投稿は、他の人のアカウントをメンションして投稿することができ、その通知がインスタグラムのメッセージとして通知される仕組みになっています。

新庄監督はおそらくそこでファンの投稿に目を通し、気に入ったものに返事を書く形で、自らのインスタグラムにリポストをしているのでしょう。

取り上げられたファンからすると、まさか本人から返事が来るとは思ってないでしょうから、相当感動されていることが想像できます。

ある意味、新庄監督はファンと野球界の関係やイメージに革命を起こしているといったら大袈裟でしょうか。

SNS活用に積極的ではなかった日本の野球界

従来、野球のようなスポーツにおいて、選手はもちろん、監督が積極的にSNS投稿をするというのは、想像されていなかった方が多いのではないかと思います。

どちらかというと、SNSというのは選手が思わぬ投稿をして炎上してしまったり、誹謗中傷を受けるリスクの方が注目されがちですし、相撲協会のように連帯責任でSNS禁止になっているケースすらあります。

野球界においても、2019年に巨人の原監督がSNS禁止令を出したという報道が大きく注目されたことがあるほどで、どちらかというとSNS活用に積極的ではないチームが多かったように思います。

当然監督というのは試合を左右する大事な判断をする立場であり、秘密が多い仕事というイメージが強いはず。

その監督である新庄監督の積極的なSNS活用は、そうした野球界の雰囲気を大きく変えていく可能性があるように感じています。

日本のスポーツ界のSNSに対する空気は変わるか

もちろん、日本ハムもSNS活用のガイドライン自体を変えたわけではなく、新庄監督だけは特例で自由に使って良いと、川村社長からお墨付きがでたというのが実態のようです。

ただ、明らかに新庄監督の影響は日本ハムの公式SNSにも出はじめています。

選手やチームのSNSに対する印象も、変わり始めているのではないでしょうか。

また、最近Jリーグが、新しいSNSガイドラインを発表して、サポーターによる試合の写真のSNS投稿を明確に許可したように、新庄監督が実践しているようなファンのSNS投稿を促進する取り組みは日本でも拡がりはじめています。

野球界においても実は、横浜DeNAベイスターズは、「商標・肖像利用について」というページで、個人SNSアカウント等での自分が撮影した選手の写真の投稿は「許可を要しない行為」であると明確に宣言しています。

こうしたファンのSNS投稿に積極的なチームが増えてくれば、日本のSNS上でもっと野球に関する話題が増えていく可能性は大きいように感じます。

もちろん現在のところは、多くの野球関係者が、新庄監督のSNS活用は、新庄監督だからできる特別な行為だと感じているのが現状でしょう。

ただ、新庄監督がこのままシーズンを通してSNS活用で成功事例を積み上げていけば、確実に小さく参考にする選手やチームが出てくるはず。

今年は、新庄監督のSNS活用の拡がりにも注目したいと思います。

この記事は2022年3月24日Yahooニュース個人寄稿記事の全文転載です。


ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。