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15年越しの個人的な妄想を「書籍」として出版できた感謝をメモとして残すべく、「あとがき」をテキストでも公開しておきます。 #SNSの教科書


インターネットがあってよかった。
SNSがあってよかった。

今、心の底からそう感じています。

2019年末にこの本の企画がはじまり、このEpilogue を書く今日までの間に、新型コロナウイルスの影響で世界のコミュニケーションの姿は大きく変わってしまいました。

緊急事態宣言下で、ぼくたちは飲み会やイベントはもちろん、会社への出勤や、学校への通学も自粛を余儀なくされる事態に追い込まれました。
ただ、自宅でリモートワークをしながらふと気がついたのは、じつはSNSでつながっている友人や同僚とのコミュニケーションは、ウイルスに影響を受けないどころか、かえって強くなった面があったという点です。

SNSの活用が進んでいる企業、デジタル化が進んでいる企業は、コロナ禍においても技術を活用して企業活動を止めずに、前に進むことができていました。

インターネット上はコロナフリーだったからです。


15年前、ぼくはブログに人生を救われたこともあり、自分みたいな会社員がもっとブログやSNSをはじめれば良いのに、とことあるごとに周りにすすめていました。

ただ、その当時、普通の会社員の方々には、あまりまともに相手をしてもらえなかった歴史があります。

日本は国土が狭く、多くの場合言語も通じやすいので、リアルのコミュニケーションがとりやすい国です。
そのため、ネットやSNSというのは、どうしても一部の人のための「特殊な」ツールとして扱われてきました。

いまだに多くのシニア世代、とくに経営者や政治家など権力のある地位にいる人ほど、ネットやSNSをつかいこなしていません。
つかいこなさなくても、インターネット以前の仕事のやり方でとくに問題を感じずにすんでいたというのが大きいでしょう。

その結果、日本は世界的に見て、デジタル化で遅れている国になってしまいました。

 

これまで、日本社会や日本企業においては、ネットやSNSに詳しい人というのは、「特殊な」人として、ある種の偏見をもたれていじられたり、浮いた存在になりがちだったように思います。

ただ、今回のコロナ禍で、そうしたSNS活用やデジタル化の遅れが、企業にも、ぼくたち会社員にも深刻な影響をもたらすことは明らかになりました。 

デジタル活用が進んでいた企業のなかに、じつは全社員でのリモートワークに切り替えた結果、逆に業務の無駄を削れて効率が上がった企業すらあるのです。

ぼく自身、去年からブログやSNSのように情報発信ができる日本のプラットフォーム企業であるnote 株式会社で仕事をしていますが、15年前とは比べものにならないぐらい大勢の方が、ネット上のコミュニケーションに挑戦しはじめているのを目の当たりにしています。

いよいよ、ネットやSNSが「普通」になる時代が目の前に来ているのを感じます。


もちろん、みなさんが会社でネットやSNSの話をすると、ひょっとすると上司や管理部門の人たちから、ネットやSNSは危ないとか、自分の会社には関係ないという反応をされることがあるかもしれません。

ただ、その反応は電話やテレビが登場したときに、「電話やテレビは危ない」と言っていた人たちと同じではないでしょうか?

ひょっとしたら明治維新で、チョンマゲや帯刀をやめることができなかった頭の固い武士と同じかもしれません。


じつはSNSもブログも、電話やメールと同じコミュニケーションツールです。

いまだにネット上で実名をさらすのに抵抗がある方が多いのは理解できますし、実際大企業の方が会社の看板を背負ったまま実名を出すことにはリスクもあります。

また、これまでSNS上で目立っていたインフルエンサー的な人たちのSNS活用術が、とくに「普通」の会社員の方にとってはリスクが多いものであったのも事実です。

組織の看板を背負っている人が、SNS上で本音や批判を書き続けていれば、組織に属さない個人よりも、炎上したりトラブルに巻き込まれる危険性が高くなります。


ただ、これからみなさんが自分の名前でビジネスの世界で勝負していきたいのであれば、実名を出すことには間違いなくメリットがあります。

多くの人が普通にネット上で、実名で、コミュニケーションをするようになれば、ネットやSNSの価値はさらに上がりますし、実名を出すこと自体が珍しくなくなっていくでしょう。

リアルであっても、ネットであっても、アナログであっても、デジタルであっても、コミュニケーションをとっているのはぼくたち人間です。

人間同士がコミュニケーションをしている以上、ネットもSNSもじつは特殊な場所ではありません。
やはり「リアルの延長線上」でつかってこそ、ネット上での発信は回り回って、リアルにもいい影響をあたえてくれるのだと確信しています。

最後に、この本を読んでくださったみなさんにお願いしたいことがあります。 

まだSNSやブログのアカウントをお持ちでなければ、ぜひ、本を閉じる前にアカウントをつくってみてほしいのです。

そして、「傾聴」「リアクション」からはじめてみてください。

巻末に、ビジネスパーソンの方々におすすめしたいアカウントのリストを閲覧できるURL(QRコード)をつけました。まずは自分と同じ業界の人、近い業界の人、気になる人の発信を「傾聴」し、ご自身の発信の参考として役立てていただければ幸いです。

既にこの本に書いてあるような基本的なことは実践しているよ、という方はこの本を同僚や後輩に渡してあげてください。SNS上に仕事の議論をできる仲間が増えれば、絶対におたがいのメリットになります。

みなさんがSNSをはじめることは会社のためにもなります。

自分の所属する組織や業界を盛り上げるために、発信や議論にチャレンジしてみてください。

リアルの「分身」をネット上に置いて、まだ見ぬ世界の人たちとコミュニケーションをとりながらネットワークをひろげ、リアルでできることをどんどん拡張していきましょう。
SNS発信を続けて小さな成功体験が得られたら、それを組織内でも共有して、SNS発信の仲間を増やしていきましょう。


なお、ふだんからぼくのnote を読んでくださっている方なら気がつかれたかもしれませんが、この書籍はじつはぼく一人ではなく、複数の方々に支えていただいたプロジェクトとして制作されました。

これまでの著作は自分で執筆してきましたが、今回の本はあえて、「教科書」という名のかっちりしたものにするために、ライターの横山瑠美さんのお力を借りて、歯切れ良くハッキリと読みやすい文章にしていただきました(普段のぼくがネット上で書いている文章、つまり徳力メソッド特有の結論のないものではなく)。 

ぼく一人の特殊事例ではなく、さまざまな事例をかさねることができたのは、ぼくのnote 上での呼びかけに答えていただいた100人近いSNS上の友人の方々と、実際にインタビューにご対応いただいた20人以上の方々のおかげです。

15年前に一度あきらめたブログやSNSの啓発活動に、再び力を入れてみようと思うことができたのは、加藤貞顕さん深津貴之さんをはじめとしたnote の社員やクリエイターのみなさんとの出会いのおかげです。

また、ぼくが10年後ぐらいに出せたらなぁと思っていた「教科書」をタイトルにいれた本をこのタイミングで出すことができたのは、本の企画を提案してくれたアップルシード・エージェンシーの遠山怜さんと、その企画を通していただいた朝日新聞出版の森鈴香さんのおかげです。

そして、その「教科書」をタイトルにいれるという決断に、たいして文章力や影響力があるわけでもない「普通」のぼくが今回踏み切ることができたのは、ぼくがブログやSNSの世界に足を踏み入れてから、さまざまなかたちでぼくにリアクションやアドバイスや勇気をくれた師匠や友人のおかげです。

そしてもちろん、オンラインゲーム廃人になりかけていたぼくが、ブログやSNSにそのパワーを転換できたのは、妻と息子たちのおかげです。

全員の名前は書ききれませんが、この場を借りてみなさまに、改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。


この本のタイトルである「普通の人」の「普通」という言葉は、人によっては「平凡」とネガティブに受け取るかもしれません。

ただ「普通」という言葉は「ひろく通用する状態」を意味する言葉でもあります。

ぼくは、一部の過激なインフルエンサー的な発言や行動をしなくても、「普通」の会話をSNSでしてみるだけで、多くの人にメリットがあると信じています。


ぼくは、ブログとSNSに人生を救われました。 

ぼくだけでなく、この本に協力していただいた多くの方の逸話からもわかるように、SNSには思いもよらない良いハプニングを引き起こす可能性がたくさん眠っています。

是非そのハプニングを、一つずつのんびり楽しんでください。

これからの「ニューノーマル」の世界で、ビジネスパーソンがSNS発信をしていることが「普通」になることを願って。


「普通」のブロガー 徳力基彦




追伸
 

この本の感想やコメント、そしてみなさん自身が、SNSをはじめて良かったことを、ぜひ「#SNSの教科書」とハッシュタグをつけて、Twitternote などに投稿していただければ幸いです。

感想やコメントがない方でも、もしこの本を読んでSNSをはじめたという方がいらっしゃったら、ぜひ、その最初の投稿に同じく「#SNSの教科書」 と入れて投稿してください。

全部の投稿にお返事はできないかもしれませんが、どの投稿にも必ず目を通すことをお約束します。


※この文章は、書籍『「普通」の人のためのSNSの教科書』のEpilogueの全文転載です。試し読み用PDFは下記からご覧下さい。


ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。