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《美術人類史.Ⅳ》 美のバランス

『人の思考表現の共有で、人類にとっての「物」の全てがある』 

これまでの内容から美術人類史の見方です。

また「物」は実体の無有に関わりません。私達は実態不明瞭な物事にも、他の解明要素を引用し空想して期待予測をします。夢や幻を「物」として扱うほどです。

人々の潜在意識は丁寧にも日々時間をかけて「 物」の構築と成立に否応無く執着している事になります。

そして発生する「物」が何事でも、人工物の故に、意味や意義において変化自在で絶え易く、折角の成立状態を保てないのが特徴なので、明滅の間を思考コントロールする「更新」を重ねる宿命にあります。

途絶えない努力と、精一杯の表現が人間世界には貪欲に永劫に課せられ、この形が文化、文明となるので、「物」と関わりが一人一人の性格や運命をも位置付けるとなると、文化文明とは「物と命」の共存関係なのです。

関係は時には「物か命か」の瀬戸際の命がけに迫られますので、そこで「物」に尊厳も美学も哲学や概念の思想宇宙が宿ると言う訳です。(美術も物と命の間で美のバランス=思考のかたちと在り方を見出して、示唆しています。)

文化文明の実態の不問の観点では人と人に無関係はなく、何一つ無影響な出来事もありません

感受性豊かな先導者や表現者、研究者(美術家も含む)が伝え持つ思考の鍵もほぼこの中にあります。即ち受け継いだ世相を背景に「思考バランスを意欲的に取る者」と言えましょう。

それで無くても個人の思考行動は、多様な世界分野のどこかに属し、相対的に補い合っています。人種、家系、国籍など既にそうで、平和も争いも含まれ、引いては人類の歴史を作ります。

廻めく私達の思考が全ての物の価値を見出し、物を利用し、物を伝えているのです。

引き続きお付き合い下さい。

美術を含むどの人工物も、カタチは出来た時点から風化を始めます。私達の今の時間の流れで100年も経てば、ほぼ様変わりします。良いも悪いも文化の更新ですので、派生的にどんどん進行し、やがて意図しなければ元すら見失います。

そうして次に構築されるのが斬新性ある物事の発生です。新しくインパクトのある物事の誕生に見えますが、これはその時代を生きる人々の誤解で、単に循環サイクルなのです。

人類は無から有は作れません。必ず意図が加わるからです。また意図が加われば加わる程、真偽の質が巧妙になりますので、そこで美術を含む物事の、有意義に論ずべき着目点は表面的な結果ではなく「どうしてそうしたか?」に尽きます。

例えば巨石の建造物はカタチよりも
何故巨石で積み上げたのかです。
出来たものは美の結晶で結果です。
どうしてそれが必要なのか?
時代背景の人類エネルギーに
美のバランスがある筈で、
私達の祖先の意識を辿る術です。

以上で美術人類史の前置き的なところは修めたいと思います。長々とお付き合い頂き有難うございました。

次回から時間旅に出てシリーズで紐解きます。美術人類史をお楽しみ下さいませ。

                                日本画家 戸倉英雄


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