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強みに特化しつつ、対応範囲を広げるという戦略:燕三条の町工場の一例

地方の町工場が持っている経営資源など微々たるもので、あちらこちらに勢力を分散させても成果が得られるものではありません。
自社のコア技術を見つめ直し、既存顧客から評価されている部分、社会から必要とされている部分を伸ばしていくことが賢明です。
その中で、更なる成長を望むのであれば、自社のコア技術を新規顧客にPRし、採用してもらうことが必要になります。

既存顧客からの仕事の依頼に対し、自社の技術(トクニ工業であれば精密板金加工ですが)を駆使し、製品を作っていきます。
メーカーであれば、出来上がった製品を新規の顧客に提供すれば良いのですが、加工業者の場合、クライアントから製造依頼が来なければ加工することは出来ません。ほとんどの場合、クライアントによって作るものは変わってくるのです。そして業界が異なれば、更に求められるものに違いが大きくなってきます。
但し、トクニ工業の場合、共通の部分としては金属の板加工ということになります。金属の板加工に特化し、コア技術から外れたものに関しては、協力会社に頼るか、対応できないのであれば、依頼を断る。

素材が異なったり、加工内容が異なるものに関しては、協力会社にスライドさせていくことが賢明です。
素材が異なるとは、同じ板でも木工品やアクリル板の加工の場合、加工する機械が異なりますので、社内で加工することは出来ません。ノウハウを持った協力会社に案件をスライドさせ、直接取引してもらった方が良いでしょう。
付随部品として異素材の部品を用いるのであれば、間に入って完成品としてクライアントに提供した方が良いでしょう。対して、単品の依頼だった場合、安易に中間に入ることによって、管理のリスクが生じます。管理費を取ることが出来るので、問題が発生しなければ良い案件です。しかし充分なノウハウを持たないまま、間に入ると、いざトラブルが発生した場合、クライアントに対して充分な対応を取ることが出来ない場合があります。また管理費以上の負担を強いられるかもしれません。手離れも良くないでしょう。
同じように加工内容が異なる場合もそうです。機械加工品やワイヤー加工品など、依頼する側から見れば同じ金属の加工だし、大差ないように思われるかもしれません。しかし加工する側から見ると使う機械も異なりますし、必要とされるスキル・ノウハウも異なってきます。

どのような業界もそうだと思いますが、加工分野は外から見るよりも細分化されているものです。そのような場合も、無理に社内で加工するのではなく、得意とする協力会社に依頼することが賢明です。
相互に得意分野の案件をやり取りすることで、仕事の受け入れの窓口は広がっていきますし、クライアントからの評価も実績を積むことで、高めることが出来ます。

新規の案件を受け入れるためには、生産予定に余裕がなければなりません。
予定びっしりと仕事をしていては、いざ新規の案件が来た時に対応できません。
たいがい新規の案件は、仕事が暇なときには来なくて、仕事が忙しいときに来るものです。
どう対応するかは、日常業務の取り組み方にかかってくるわけです。
新規の案件を取っていかなければ、均衡縮小の中で、仕事は先細りとなっていきます。
既存の仕事を横において新規の案件を優先するようでは、既存顧客からの信頼を失いかねません。
バランスよく新規の案件を受け入れながら対応範囲を拡大していくためには、その会社に見合った余力が必要になります。

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