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アニメ『WHITE ALBUM2』の感想

ゲームではなくアニメの方の『WHITE ALBUM2』を見たのでその感想を書いていこうと思う。

実はこのアニメ、自分は放送当時リアルタイムで追いかけていた。当時もそれなりに面白かったという記憶はあったが、再度見直してみると予想以上に面白くて驚いてしまった。当時は「片手間に見ていたのか?」と思うほど、良さを十分に味わえていなかったと思う。

単純に面白かったというのもあるけど、やっぱり話の流れや脚本の上手さが際立っている。春希・雪菜・かずさの気持ちの変遷が丁寧に描かれていてそれぞれの距離感の描き方が絶妙なのだ。それぞれが不義理な行動をするけど、それも全体を通してみると「仕方ない面もあるよな……」と観る者に感じさせるような出来になっているのがすごい。全体的にそういったバランスが丁度よく、それぞれに過度にヘイトが向かないような作りになっていると思う。

具体例を挙げると、まず雪菜のちょっとしたウザさが過去のトラウマに起因しているから仕方ないよなと思えるというのがある。雪菜は過去に人間関係のトラブルで友人を無くしてしまった経験があり、それにより仲間外れにされてしまうことを極度に怖がっているという設定がある。それゆえに春希とかずさと自分という3人の関係性に固執する。そういった過去があるからこそ若干鬱陶しいようにも思える雪菜の過度な関係性への執着も仕方ないものだと観る者に映る。この部分は単純に「ライターのヘイト管理が上手いな」と思ってしまった。丸戸史明おそるべし。

結局は雪菜のそういった関係性の執着も3人の関係性を面倒で複雑なものにする一因となるわけだけど、その執着自体は仕方ないものとして見えるのが上手いと思う。雪菜の心情は非常にリアルなのだ。アニメのラストで雪菜が春希とかずさに裏切られるシーンでも、普通であれば2人を軽蔑するという展開になりそうなものだが、雪菜は春希から離れないし、人間関係に執着する雪菜ならそういう行動をとってもおかしくはないという説得力がある。

前回見た時は雪菜の行動を表面だけ追っていたので単に鬱陶しさだけが目についてしまったが、改めて見ると雪菜の心情も繊細でそれぞれの場面における変化が丁寧に描かれているように感じる。雪菜は本人が言うように春希とかずさの間に割り込んでしまったという見方もできるかもしれないけど、雪菜の過去を考えると「可哀そうな面もあるよな……」とどうしても思ってしまい嫌いになれないというのがある。

そういう意味で言えば、春希がかずさの家に泊まり込みで練習していたのを雪菜に隠して後にバレるという流れも、雪菜の性格を描写するうえで上手い展開だと感じた。普通だったらそういう隠し事に気づいても流してしまったり、そこまで気にしなかったりすると思うが雪菜の場合は過去の経験により隠し事をされるのも極度に嫌っているためどうしても気になってしまう。このシーンにおける雪菜の心情は「男女関係における嫉妬」という側面もあると思うが、それ以上に「仲間内でのけ者にされてしまった」という寂しさが大きかったのだと思う。安易に前者のような嫉妬という描き方をせずに後者のような文脈を乗せてくることによりキャラクターの生々しさがより際立ってる感じがするので本当に描写が上手いと思う。

このシーンは古いアニメかもしれないが、『ひぐらしのなく頃に』の鬼隠し編の圭一を思い出した。鬼隠し編の圭一も些細な件から仲間内で隠し事をされたように感じてしまいどんどん不信感が募っていく。こちらの場合はより過激な行動をとるので単純に一緒だとは言い難いが心情的には似ていると思った(似ているからと言って何があるわけでもないが思い出してしまったので仕方ない)。

でもやっぱり「自分はかずさ派だな~」と思ってしまう。10話から11話にかけて、かずさ視点で春希とのかかわりを描いてくるのはズルすぎる。「いくらでもかずさと春希がくっつくタイミングあったじゃん……!」とどうしても思ってしまうのだ。雪菜の出会いや文化祭を通しての出来事など、様々な些細な出来事の積み重ねでこんな複雑なことになってしまった……という「この時にこうなってたらな……」と感じさせるような描き方が本当に上手い。いくらでも丸く収まる道はあったのに一番厄介なルートを歩んでしまったという運命の残酷さがここにはある。もちろん創作物なのでそう感じさせるように描くライターの凄いわけなのだが……(丸戸史明おそるべし)。

雪菜の場合は春希やかずさという個人に執着してるわけではなく、関係性に執着してるように感じるので、どうしても「他の関係性で代替可能なのでは?」と思ってしまう面がある。対してかずさの場合は春希しかいないという風に感じるのでやっぱり自分はかずさ派になってしまう。

ただやっぱり春希とかずさは明確に浮気をしているわけでそこは言い逃れができない。2人は完全に雪菜を裏切っている。そういった負い目があるからピッタリなペアに思えても雪菜側に同情してしまう。だからやっぱり何度も言うが本当にヘイト管理が上手いのだ。少しでも描写が違っていたら誰かに過度にヘイトが向くような構成になってしまっていただろう。つまりそういったところを上手く描く丸戸史明はやっぱりおそるべし……

ぶっちゃけ今までは丸戸史明を過小評価していたというような気がする。過去に『この青空に約束を』のコンシューマー版だけはやったことはあるけど一番評判の良い海己ルートは実はプレイしていない。なぜ避けてしまったのかというと単純に一番評判が良いから後回しに……というショートケーキのイチゴを最後まで残しておくのと同じ理屈でそうしたわけだが、結局なんとなく面倒になったのかやらないままで今に至る。

その時に海己ルートやっていたら丸戸史明に傾倒していたかもしれない。遠い昔の些細な判断の過誤、「この時にこうなってたらな……」と思ってしまうわけだがこればかりは仕方ない。これも運命の残酷さである。

なんにせよせっかくアニメを見たし、続きの原作ゲームも買ったので大学生編も読んでみようと思う。後半の方はエロゲ史上においても1位2位を争うほど人気なのでさらに期待している。

『WHITE ALBUM2』の後にはなるけど『この青空に約束を』も読み返そうかなと思う。プレイしてから相当な期間が経っているので新鮮な気持ちで楽しめるだろう。ホワルバ2は長いらしいのでいつになるかはわからないが、いつかは読み返したい(アークナイツ・学マス・シャニマスもやらなきゃいけないので時間が足りない……)。

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