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将棋の棋譜利用を巡る裁判の結果について語る

※本記事は法律を全然知らない素人が共同通信の記事を元に書いた文なので見解や解釈などが間違っている可能性が十分にあります。真に受けないでください。本記事を信頼したことによる損害発生の責任はとりません。

普段あまり裁判に興味はないが、自分の趣味の領域に関連した裁判が1つあり、どうなるか気になっていた。以下がそれである。

どういった裁判なのかと言うと記事にもある通り、ネットなどで中継されているプロの棋譜を配信で映しそういった動画を元に収益化していた配信者が起こした裁判である。映像をそのまま移すのではなくあくまで棋譜や盤面を映すということである。裁判を起こした男性youtuberの主張としては将棋連盟が出資している「囲碁・将棋チャンネル」の申請により動画が削除されてしまったから損害賠償を求めるという内容になっている。

この裁判は前から気になっていた。以前からプロの棋譜をリアルタイムで映し評価値などとともに配信をしている人は何人かいた。中には盤面や手を映さず評価値だけを映している人もいたりして、ネットでも賛否が分かれていた印象がある。裁判を起こした男性youtuberというのも明言はされていないが「あの人かな」となんとなく予想できる(が、その予想を書くと角が立つのでやめておく)。

将棋の棋譜に著作権があるかどうかというのも以前から論争になっており、様々な見解が入り乱れていた。棋戦によっては棋譜の利用ガイドラインなどが発表されていたりして基本的には棋譜に著作権があるという立場をとっている棋戦主催者が多かったと思われる(ただ先ほど竜王戦のガイドラインを見たら棋譜に著作権があると明言してるわけではなく、あくまでも映像著作権や肖像権という観点からそれらを犯すことが著作権侵害に該当するという書き方がされており、棋譜については非常にぼやかして書いてある、他の棋戦は知らないが)。

しかし今回の裁判により棋譜に著作権はないという判決になった。今後の将棋界にも大きく影響を与える判決と言えるだろう。棋譜に著作権がないとされてしまった以上、様々な問題が浮上してくるように思われる。

そしてこの記事を書いている最中に以下の配信が行われていた。今回の問題に関係の深い配信なのでURLを載せておく。

上の動画は将棋AI水匠の開発者であるたややんさんの動画である。たややんさんは本業が弁護士で、今回の裁判の訴訟代理人ではないが、将棋界隈にも明るいので今回の裁判の解説もしているようだ。動画の内容を見てみると裁判の争点などが細かく提示されていてわかりやすい。ネットに落ちている他の記事よりも細かい点について言及しているので現時点で一番詳しい情報源なんじゃないかと思う。

まだ控訴する可能性はあるので今後の判決がどうなるかはわからないけど、棋譜自体に著作権がなかったとしても映像に価値を見出す人は多いわけだから個人的にはそこまで影響ないんじゃないかと思っている。SNSなどを見ているとスポンサーが撤退すると言っている人もいるけど、スポンサーの利益を構成するものとして棋譜利用が寄与する度合いってそこまで大きいと思えないのでその指摘には疑問がある。

そもそも将棋中継見てる人の中で将棋の内容を真剣に見ている人ってどのくらいの割合いるんだろうか?自分の想像でしかないが、ほとんどがなんとなくしか将棋がわからずプロの解説(雑談)や対局室の映像の雰囲気で楽しんでる層なんじゃないかと思っている。ある程度将棋がわかったとしてもAI評価値と予想手さえ表示しておけば公式を見たほうが楽しめるだろうし、棋譜を使われるだけでそこまで弊害があるとは思えない。

もちろんそういった配信者の棋譜を利用した配信が結構な同接を稼いでいることもあるが、個人的に公式の読み筋の表示方法の問題もあると思う。公式だと場合によっては評価値や読み筋が表示されていなかったりするときもあるし、表示されていたとしても分岐や変化の表示が少なく深さもそこまで表示されてない時がある。配信者だとたいていの場合、将棋GUIの「将棋所」を使っているがそれだと上位5手の読み筋が深くまで表示されているので深いところまで変化が読めて面白かったりする。対して公式だと現局面の上位5手と最善手の応手くらいしか表示されていないことが多い。読み筋を見たい人間にとっては公式を見るより配信者を見る場合の方が良い場合が生まれてしまうため、そちらに人が流れているのだと思う。だから「映像と別ページで読み筋だけ出すとかそういう風にすればいいんじゃないの?」と個人的には思うわけだが、一向にやる気配がない。単純に読み筋の情報量で負けてるわけだからそこを正せば配信者なんて見ないでしょという話。

スポンサーになってる新聞社も独自のチャンネルを持っていたりして、動画での対局者インタビューなどのコンテンツを配信していたりするから、棋譜利用以外にもスポンサーになることでそういった動画を撮れる恩恵があるというのもあると思う(他にも藤井八冠を使うことで得られるメリットはあると思う)。なのでスポンサーの利益として棋譜利用が寄与する割合は結構小さいんじゃないかと個人的には思っている。実際問題としてスポンサーとしては今回の裁判によって将棋界の人気が下がったと数字で出ない限りは撤退しないのではないかと自分は予想している。

仮に藤井聡太が存在していなくて、このニュースがあったら「将棋界終わったな」と思うところだけど藤井聡太人気が続く以上まだ将棋界は安泰なんじゃないだろうか。藤井人気が落ちてきたら今の囲碁界みたいになっていきそうだけど、現状だと棋譜利用以外に存在する何かがまだ続きそうなので棋譜の著作権が主張できなくなって棋譜利用配信者が蔓延ったとしても別にそこまで変わらないのでは?というのが自分の見立てである(妥当かどうかは知らない)。

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