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『ガールズバンドクライ』の魅力

『ガールズバンドクライ』というアニメが春から放送されている。自分はそのアニメの存在こそ知っていたものの、なんとなく見る気はなかったのだが、最近やたらと話題になっているので試しに視聴してみたらハマってしまった。今回はそんな『ガールズバンドクライ』の魅力を語っていこうと思う。

このアニメで特徴的なのはなんと言っても主人公である井芹仁菜の性格だろう。

上記の公式サイトのキャラ紹介文を見ると井芹仁菜の性格は以下のようになっている。

やや引っ込み思案の普通の女の子。小中高と目立たない存在で、成績もごく普通。特に大きな夢もなく、空気を読んで、みんなに合わせて生きてきた。

アニメ「ガールズバンドクライ」公式サイトより引用

これを見ると、よくある感じのちょっと暗めの主人公という感じを醸し出す紹介文だが、2024年5月30日現在、放送された8話まで観た自分からするとこの紹介文は完全に嘘である。

やや引っ込み思案の女の子にしては行動力がありすぎるし、小中高については断片的にしか描かれていないのでわからないが、作中の行動を考えると絶対目立っていたと思う。空気は読むというより壊す方だしあのメンタリティの人間がみんなに合わせられるわけがない。

小中高の時に自分を抑えていたからこそ、中退した後に性格が反転したという見方もできるかもしれないが、やっぱり少なからず悪目立ちしてたんじゃないかと思う。そんな一風変わった少女が本作の主人公なのである。

この作品はSNSなどを見ても賛否分かれているが、作品を好きになれるかどうかは井芹仁菜を好きになれるかどうかで決まると言っても過言ではないと思う。仁菜のマインドに理解を示せれば名作だし、仁菜を見ても奇怪な人間としか感じられなければ本作は駄作認定されてしまうだろう。井芹仁菜にはそんな人を選ぶ尖った魅力があると思う。

仁菜の行動を一部抜粋して紹介しよう。

最初に自分が「とんでもないキャラだ……!」と思ったのはライトをサラリーマンにぶつけようとするシーンである。バンドのメンバーに家でぶら下げるタイプのライトをもらうシーンがあり、その帰り道に酔っぱらったサラリーマンに絡まれるのだが、なんと仁菜はそれに対してキレ返してライトを振り回しサラリーマンにあてようとする。ここでは完全に頭部を狙っており、サラリーマンが避けなければ確実に当たっていた。

このシーンはギャグとして描かれているが彼女の内面を表すという点でも大きなシーンだと思う。その時点で鬱屈した感情を抱えていたのでそれに追い打ちをかけるように現れた酔っぱらったサラリーマンに対して怒りをぶつけるというシーン。この場面はギャグとして描かれているという面ももちろんあると思うが、彼女の衝動性を象徴している面もあると思う。彼女はこのように衝動で行動する場面が多々ある。

この衝動性を見ると自分はどうしてもZガンダムのカミーユを思い出す。カミーユも初期の頃は衝動で行動するしこのあたりのメンタリティが相当似ていると思う(実際にSNSで調べるとカミーユと似ているという人は自分以外にも結構いた)。自分はこの無茶苦茶感が好きなのでカミーユも井芹仁菜も非常に好きだ。この良さを考えると、物語のセオリーに従って行動するのではなくそれをことごとく破っていく意外性が魅力に映るのかもしれない(単純にいろんなところにぶつかっていく姿勢が心地よいというのもあると思う)。

ライトをぶつけようとするシーンだけだと単に猟奇的な女の子という印象しか抱かないと思うが、このあたりの衝動性の良さは実際に観て判断してもらわないと良さが伝わってこないと思う。他にもコップのお茶を相手にかけたり、ところかまわずバンドメンバーと喧嘩したりととにかく荒っぽい。そんな狂犬みたいな一面が井芹仁菜の魅力の1つだと思う。

井芹仁菜の魅力はそれだけではなく厄介で面倒くさいというところも大きな魅力だろう。仁菜は同じバンドの桃香が元いたバンドである「ダイヤモンドダスト」のファンなのだが、そのバンドに対して面倒くさい感情を抱えている。いわゆる「厄介ファン」と呼ばれるやつだ。

「ダイヤモンドダスト」は生き残るために売れ選を意識するようになっていき、それに嫌気がさした桃香はバンドが人気になる直前に辞めてしまう。仁菜としては売れ選を意識するようになった「ダイヤモンドダスト」には嫌悪感を抱いており、桃香がいたときの「ダイヤモンドダスト」こそ理想であるという面倒な感情を抱えている。ただその面倒な感情の熱量は半端ではなく、そこは一本筋が通っていて凄まじいというのが彼女の普通とは違う点だと思う。

井芹仁菜の桃香(旧ダイヤモンドダスト)への想いは信仰とも呼べる強いもので、それを生きる糧としそのためなら人生のすべてをかけてもいいと言うほどの熱量がある。本作を8話まで見るとその真摯さと思いのアツさに心を打たれる。井芹仁菜はクレイジーだがクレイジーなりのストレートさがある。そういったところも彼女の大きな魅力だ。

最初に書いたように彼女のキャラクターは賛否分かれるのも仕方ないと思う。衝動的すぎる彼女の行動にひいてしまう人もいるだろう。だがハマれば強烈にハマる。少なくとも自分はハマった1人だし、ここまで作品人気が出ているということは他にもハマっている人は結構いるのだろうと思う。特にZガンダムのカミーユが好きな人は見てみると好きになれるのではないかと思うので観てみることをオススメする。

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