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三島由紀夫『春の雪』の感想

※三島由紀夫『春の雪』のネタバレがあるので注意!

たまには三島由紀夫でも読むかと思い、『春の雪』という小説を読んでみた。なので今回はその感想を書いていこうと思う(以下の小説)。

この本は豊穣の海という三島由紀夫4部作の第1作品目となっている。wikipediaによると豊穣の海の最終作である『天人五衰』を入稿した日に三島由紀夫は割腹自殺したらしい。本シリーズはそんないわくありげなシリーズとなっている。

そういった経緯からして最初は「お固い小説なんだろうなー」と身構えて読み始めた。しかし実際に読んでみると完全に恋愛小説。内容こそ戦前で重いものの2人の禁断の恋が描かれるという恋愛メインの作品になっている。

その恋愛における心理の描き方がこれでもかというくらいに丁寧だ。胃もたれしてしまうくらいに心理描写が描かれる。正直ちょっとくどいなと思うところもあって読むのが大変だったが、随所に感心させられる表現があってやはり文章が上手いなと思わされた。

そして禁断の恋というモチーフが良いと思う。ヒロインと別の名家の男に結婚しろとの勅許が出されるのだが、主人公はその勅許が出されてからヒロインに好意を示し、禁断の恋に落ちていくという内容。勅許が出されるまでにいくらでもチャンスがあったのに主人公は面倒な自意識からヒロインを拒絶してしまう。そんな姿が描かれるのが本作となっている。

本作で特異なのは、恋が終わってしまった後の話が結構な分量をかけて描かれているという点だと思う。ヒロインが妊娠してしまった後に禁断の恋が家族に見つかってしまい、親たちが何としてでも妊娠をごまかして事態を上手く処理するという様子が長々と描かれる。当時も少なからずこういうことあったんだろうなと思うのでこのあたりのシーンは面白い。結局ヒロインは仏道に入り、主人公は死ぬという展開になるけど様々な描写が示唆的で面白かった。

現在、豊穣の海の2作目である『奔馬』を読み進めているが、この作品では1作目に出てきた主人公の友人である本多が語り手となって物語が紡がれる。どうやら本多だけは4作にまたがって登場しそれぞれの時代を見ていくという話になるようだ。本多は1作目では法律を志す学生で、2作目では裁判所に勤めるようになっている。1作目と2作目の冒頭を読んだ限りの予想だが、本シリーズにおいては裁判や法律、仏教というのが大きなテーマとなっており主に本多の視点が重要なのだろうと思われる。1作目でもうまく咀嚼できない部分はあったが、このあたりを注視して読み進めていこうと思っている。

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