ソニーと任天堂の決算から浮かびあがったPSユーザーの旺盛な購買傾向とダウンロード版への移行率の高さ

ファミ通でのパッケージの週間販売本数を見ると「PSユーザーって最近はもうswitchユーザーと比べて全然ゲームを買わないな」という風に見えます。
トップ30までのランキングのほとんどをswitchソフトが占めていて、PS系のソフトがランキングに入る事はあまりなかったり、入っても数本程度。

しかし先日公開された任天堂とソニーの両方の決算を見ると、「世界規模で見るとswitchユーザーよりPSユーザーの方がゲームソフトやDLCをかなり多く買っている」という実態が見えてきました。
PSユーザーはコアユーザーの割合がswitchユーザーより高い事もあって、「PS系ではパッケージ版よりダウンロード版をよく買っている人がかなり多くなっている」というのも今回のデータでよくわかりました。

実際に私もゲームをよくプレイする人間(コアゲーマー)でswitchとPS4,PS5、ゲーミングPCを持っていますが、そういう人達はもうあまりパッケージではゲームを買わず、ほとんどのゲームをダウンロード版で買っています。
コアユーザーは一部の人を除き、もうよほどの事がない限りはあまりパッケージ版は買わなくなったと思います。
 

24年度の半期(1,2Q)の決算データを記載すると

<ソニー ゲーム部門>
ハード売り上げ台数820万台
ハード売り上げ高4744億円
ソフト売り上げ高8855億円
(パッケージ版は599億円、ダウンロードソフト3542億円、DLC4340億円、その他371億円)
ネットワークサービス(ps plusなど)2583億円
その他1074億円
売り上げ高1.726兆円

<任天堂>
ハード売り上げ台数684万台
ハード売り上げ高2901億円
ソフト売り上げ高4332億円
(パッケージ版2157億円、ダウンロード版+DLC+switch onlineが2175億円)
モバイルIP関連550億円
その他44.6億円
switch以外(3DSなど)134億円
売り上げ高7962億円

という感じです。

パッケージ版の売り上げ高を見るとPSユーザーは600億円ほどしか買っていないのに対してswitchユーザーは2157億円と3倍以上もソフトを買っている事になります。
日本でパッケージ版のみのランキングではswichが無双しているのも頷ける数値です。

一方でダウンロード版で見ると、switchの方はswitch onlienの収益も数字として含まれているので実際はこの2175億円よりさらに数値がかなり小さくなり、ダウンロードソフトとDLCあわせて8000億円近くも金を使っているPSユーザーに対して、switchユーザーはダウンロードソフトとDLCあわせた数値はおそらく1600億円かもっと少ない数値となるでしょう。(switch onlineは500億円かもっと高い売り上げとして)

「インディーゲームがswitchではかなり売れる」という状況はあれど、フルプライスゲームよりインディーゲームは価格がかなり安く、またセールではそこからさらに大幅値引きされて売られる事があるので、金額ベースで見るとコアユーザーが多くてフルプライスゲームのダウンロード版もよく買っているPSユーザーの方がswitchユーザーの5倍くらいもダウンロードソフトやDLCに金を使ってくれているみたいです。

パッケージ版とダウンロード版とDLCを合計した数値でも「PSユーザーはswitchユーザーの二倍近くもゲームに金を使ってくれている」という感じです。

日本のパッケージ版のランキングだけを見るのと実態がかなり違う(むしろPSユーザーの方がめちゃくちゃゲームを買っている)というのには驚く人もいるでしょう。

<パッケージ版とダウンロード版の比較>

パッケージ版とダウンロード版の比較でみると「switchユーザーはパッケージ版を買う人が未だに結構多いのに対して、PSユーザーはかなりダウンロード版へ移行している」というのも見えてきました。

ソニーの決算データではパッケージ版の売り上げ高が599億円に対してダウンロード版(DLCは除外)の売り上げ高が3542億円と5倍以上ダウンロード版の方が売れています。

任天堂の決算データではダウンロード版とDLCとswitch onlienの数字があわさっているのでダウンロード版のみの売り上げ高が明確ではないものの、およそ1300億円くらいと考えるとパッケージ版が2157億円に対してダウンロード版が1300億円と、「switchではダウンロード版よりパッケージ版に金を使う人が多い」という感じです。
(PSのダウンロードソフトとDLCの比率を考えると、1300億円より実際はもっと大幅にダウンロードソフトの売り上げ高は低くなるかも)

PSユーザーはもう多くがダウンロード版での購入に移行している一方、ライトユーザーが多いswitchでは今もパッケージ版で結構買われているという感じです。
日本のパッケージ版のみの週間販売本数ランキングではPS系がフェードアウトしていってるのも納得できるでしょう。
 

<フリープレイなどの数値も売り上げ高に含まれるのか?>

ダウンロード版とDLCの収益がswitchよりPS系の方が5倍くらいと高いのを見ると、「フリープレイで無料で配った分も売り上げ高としてカウントしているのでは?」みたいに考える人もいるかもしれません。

しかしps plusは会員数が4000万人を超えていて、毎月配られるフリープレイソフト3本は合計すると5000円以上(月によっては1万円以上)もするのがほとんどです。
4000万人X5000円として計算するとたった一月だけで2000億円になるので半年だと1兆2000億円以上になってしまい、「フリープレイで無料で配った分もダウンロード版の売り上げ高にカウントしている」というのはありえないでしょう。

<国内向けのインディーゲーム製作者はこの数値をあまり真に受けない方が良い>

ダウンロード版とDLCの合計だけを見ると「PSユーザーは半年で8000億円くらい金を使っているのに、switchユーザーは1600億円以下しか使っていない」という感じなので、この数値を真に受けてインディーゲームで日本人にしか受けないようなソフトを国内向けPSに頑張って出す人もいるかもしれません。

しかし世界でも受けそうなソフトをswitchとPS(とその他のプラットフォームに)出すのならswitchとPS、その他でそれぞれ好調に売れるでしょうが、国内でしか受けなそうなインディゲームをswitchと同時にPSでも頑張って出してもPSでは売り上げはあまり期待できないと思います。

私自身switchとPS4,5を持っていますが、「switchではインディーゲームをかなり頻繁に買うが、PS4・5ではインディーゲームは時々買う程度で、どちらかというとフルプライスゲームやそれのセール品をよく買う」という感じです。
世界規模で売れるゲームならともかく、日本人にしか受けなそうなインディゲームをswitchだけでなくPS4,5で頑張って出してもPSではあまりまともに相手されないと思った方が良いでしょう。

switchの方ではインディーゲームをよく買うのは、switchの方はサードパーティーのフルプライスソフトがあまり充実しているとは言えないのも大きいと思います。
インディーゲームはPSよりswitchの方がかなり充実しているのに対して、性能が必要なフルプライスの3Dゲームの場合、switchではリリースされないソフトがかなり多い。
switch次世代機でスペックアップするとこの点はかなり改善されるでしょうが。

またswitchのインディーゲームは極端な値引きセールをしている事が多く、値段が安すぎるため気軽に買いやすく、そのためにswitchでかなりインディゲームを買っているというのもあります。
さらにインディーゲームの中にはPSでも出しているのもあるものの、switchとPSの両方のストアを良く見ている人なら知っているように「一部のインディーゲームは何故かswitch版だけを大幅に価格を安くして売れ行きを増やそうとしている」というのがわりとあります。
同じセールをやっているのに、PS版の割引率は低く、switchの方はかなり割引率が高くて値段が安くて買いやすいというのがわりとあります。
(PSもswitch版も同じ価格でセールするというのもありますが)

ソニーと任天堂の決算では「PS系のユーザーの方がswitch系のユーザーよりかなりゲームに金を使ってくれる」というのはわかったものの、日本人にしか受けなさそうなインディゲームを頑張ってPSでも出しても思ったような売れ行きが期待できないと思います。