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匿名から実名へーハチと米津玄師

米津玄師とは


米津玄師という名前、今では知らない方の方が少ないのではないでしょうか?
2013年に同名義でメジャーデビュー後、2021年現在に至るまで圧倒的な人気と知名度を誇っている日本のシンガーソングライターです。
有名な楽曲は東京メトロのCMに起用された「アイネクライネ」やTBSドラマアンナチュラルの主題歌「Lemon」、TVアニメ僕のヒーローアカデミアOPテーマ「ピースサイン」など。
米津玄師名義以前はハチという別名義でインターネット上で音楽活動をしていた人物です。

匿名性の高いインターネットという場所から、メジャーデビューを経て一躍露出したアーティスト・米津玄師。その存在について考えていきます。

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出典:公式HP

ハチとは


米津玄師はその名義での活動以前にはハチという名義でVOCALOIDプロデューサー=VOCALOIDを使用した音楽活動者として楽曲制作を行っていました。
当時はインターネットが普及し出し、VOCALOID楽曲を含む動画の発信はYouTubeよりもニコニコ動画が主流。
初音ミクや鏡音リン・レンといったヤマハ発の音声ソフトが、いわゆるオタクコンテンツ・萌えコンテンツとして流行り出す時期でもありました。
多くのVOCALOIDプロデューサーが活動するその中で、米津玄師はハチという名義で活動し始めます。
処女作投稿後、メジャーデビューに至るまで大手VOCALOIDプロデューサーとして、多くのファンを獲得していきました。

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出典:公式HP

活動の場


ハチ米津玄師の両名義を通し、それぞれに、あるいは両方に多くのファンを持つ彼。
その活動の場はニコニコ動画、YouTube、そしてメジャー音楽業界へと変化していきました。
それによって活動の中にどのような変化があったのかを考えていきましょう。

ニコニコ動画


VOCALOID初音ミク・DAWを用いた処女作「お姫様は電子音で眠る」を2009年にVOCALOIDプロデューサーとしてニコニコ動画へ投稿。
その後もコンスタントにオリジナル楽曲を発信。
VOCALOID楽曲の発信の場として圧倒的に人気のあったニコニコ動画で、その独自の世界観を音楽という形で発信していきます。
また、動画内のイラストが本人制作のものになったことも相まって、更にハチの世界観は視聴者の心を捉えていきました。
当時インターネットを拠点に活動する人物の匿名性は今よりずっと高く、ニコニコ動画での活動においてもハチは「VOCALOIDプロデューサー」「イラストも描く」程度の情報のみで、特にハチ本人のプロフィールは広まっていませんでした。

YouTube


2012年、「ゴーゴー幽霊船」をYouTubeに投稿。
この時点で動画のキャプションには「米津玄師と申します。」と記載し、YouTubeアカウントの名義は米津玄師に。
自身の声で歌い上げた楽曲へは米津玄師の名義を使用し始めた彼ですが、「ハチという名義でVOCALOID楽曲も作っています。」との明記もあり、同一人物であることは一切隠していませんでした。
米津玄師のソロデビューアルバム「diorama」のクロスフェードの公開などを行います。
ハチ改め米津玄師としての活動はここから一気に躍進していくことになりました。

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ただし、全ての名義を変更したのではなく、あくまで「VOCALOIDプロデューサーのハチ」と「シンガーソングライターの米津玄師」を両立するスタンスでの活動。
インターネット上の姿と、露出したメジャーな姿を一人で背負い始めます。

2021年現在も、ニコニコ動画はハチ、YouTubeは米津玄師としてアカウントを管理している彼。
ハチという人物、米津玄師という人物。それそれが創り出した作品という事実を含めて、ひとつひとつの作品であるということなのでしょうか。

YouTubeでの活動を開始した時点では、ニコニコ動画時代の情報に加え、「ハチと米津玄師は同一人物」「声から男性であることが推測できる」ということが判明します。
じわじわと「彼」という存在の輪郭が見えてきた頃でした。

メジャー音楽業界


そして2013年、ユニバーサルシグマからシングル「サンタマリア」をリリースした米津玄師。
これが彼のメジャーデビューとなります。
実写MVに本人が写ったり、2014年には初ライブを行ったりと、米津玄師という人物の露出度は一気に上がっていきました。

メジャーデビュー後、「米津玄師は男性」「容姿」といった情報が露出し、米津玄師としての彼は一躍メジャーミュージシャンとしてはっきりと姿を現わしていきました。

一方、ほとんど停止していたニコニコ動画・ハチのアカウントでは、2017年に「砂の惑星」を公開。マジカルミライ2017のテーマ曲としてハチ名義を使用したことで、ハチのファンを中心に話題になりました。

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出典:公式HP

活動の変動と露出


ニコニコ動画、YouTube、メジャー音楽業界と、「彼」の活動が変化していく中、その情報も段々と大きく露出していきました。
匿名から実名へ。その大きな変化は、ひとつ間違えれば作品に影響したり、ファンだった人が離れたりすることも多いもの。
それでも、彼が何年もの間、ハチとしても米津玄師としても愛され続けていることには、どのような秘密があるのでしょうか。

ファンを魅了する姿


アーティストからファンが離れるパターンの共通として「お金の匂い」があげられますが、活動の変化にそれが伴うことは多々あります。
「メジャーデビューしてからは好きじゃない」といった言葉、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
多くの場合、メジャーデビューに伴ってアーティストはいわゆる「大人の事情」でスタイルを変えたり、何かに合わせて世界観を変えたり、名前を変えたりすることがあります。
そうすると、インディーズ時代のアーティストへの熱量があればあるほど、ファンは違和感を覚えたり、お金の匂い、大人の事情を感じ取ったりしてしまうものです。
故に、メジャーデビュー後にインディーズ時代のファンが離れるということは残念ながら珍しくないこと。

しかし、ハチ・米津玄師の場合はどうでしょうか。
「メジャーデビューしてから変わった」という言葉をなかなか聞きません。
「ハチの方も更新してほしい」などの声は多少あれど、そんな人々も米津玄師から離れていくということは珍しいんです。

名義を増やし、実写を取り入れ、それでもなおファンを魅了する米津玄師。
そこには「変わらない音楽」があります。

そもそも彼はメジャーデビューにあたって、ナタリーのインタビュー記事にて「自分が作る音楽にちゃんと理解があって、同じ熱量で同じ方向を見てくれる人とモノを作るっていうのが一番正しい姿」、それに該当する人物がたまたまメジャーにいただけと回答。
自身の作る音楽を変えることを、そもそも選択肢としてすら持っていないんです。

ハチであれ、米津玄師であれ、その世界観や創り出される音楽は「彼」のものである。
そのただただ変わらない音楽に、ファンは魅了され続けているのです。

まとめ


匿名から実名へと活動のスタイル・情報の露出度を大きく変えていったアーティスト、ハチ・米津玄師。
その2つの名義は今も音楽作品として生き続けていますし、今後も生き続け、彼というアーティストの中で共存し続けていくのでしょう。

匿名・実名に関わらず、アーティストが自身を曲げずに、その世界観を守り育て、作品を生み出し続けること。
それこそ、ファンが真に求めているものなのではないでしょうか。


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