「ただ聞くだけの人」は、インタビュアーではない?

初めまして、インタビュアーの徳橋です。僕が立ち上げたオンラインメディアを中心に、これまで国内外の様々な分野で活躍する人々1,000人以上にインタビューしてきました。

僕は10年以上前までテレビ業界にいましたが、そのキャリアをスタートさせた夜のニュース番組に配属されたばかりのこと。ある先輩スタッフが専門家にインタビューする様子を、研修の一環で見学させていただきました。その先輩は、用意していた質問を1つ1つ相手に聞き、答えをもらったら「ありがとうございます。では次に・・・」と、質疑応答スタイルでインタビューを進めていました。

その様子を見て僕は生意気にも「絶対にこの人の真似だけはしない!」と固く誓いました。インタビューの経験は皆無だったにもかかわらず、僕は「自然な会話のようなインタビューをしよう」と思いました。それを僕は、単独で専門家インタビューを任された時から実行。すると1つの質問への回答から、さらに別の質問が生まれることを感じました。

でもこれって、普段の会話でもよくあること。ましておしゃべりの時に質問リストを用意する人などいないから、質問から質問が生まれるのは当然です。でも僕は、そのようなインタビューができたことに満足感を覚えました。そんな“俺流”のインタビューを重ねるうちに、ニュース番組の編集長から「徳橋、良いON(業界用語で「放送で使う音声」のこと)取れたな!」と言われるようになりました。

それから10数年後、僕が独自にメディアを立ち上げて1人の人間に向き合い深くインタビューをするようになってからは、さらにインタビュアーとしてのステージが上がったように感じました。

会話のような自然なインタビューをするのは当然。質問から質問が生まれるのも、もはや当たり前の現象ですが、やがてこんな言葉が相手から出るようになります。

「そうか!自分では気がつかなかったけど、そうかもしれない!」

この言葉の元となる僕からの相手への質問は、こんな感じです。

「つまり、この出来事があったことが、この行動につながったのではないですか?」

その人の人生を深堀するうちに、様々なエピソードに出会います。その人の中では、それらはただ点在しているに過ぎないケースが多い。しかし第三者の視点を取り入れると、点と点の間に線が引かれているのが分かります。それを伝えると、先のような言葉をおっしゃいます。

つまり、その人が取った行動や選んだ道には、たとえそれらが本人にとって何気ないものであっても、必ず背景や理由があるもの。もしインタビュアーがそれに気づいた場合、それを伝えるのもインタビュアーの大事な役割ではないかと思うのです。

もっと言えば、単に相手の話を聞くだけが、インタビュアーではない。

相手に気づきを提供すること、それこそがインタビュアーの真の価値だと思います。

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