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印刷博物館見学

印刷博物館へ見学に行って来ました。印刷博物館と言う名前からすると公的な施設のような感じを受けますが、凸版印刷が経営しています。どちらかと言うと企業博物館に近い形です。

博物館の中には印刷工房と言う体験施設があるので、それも合せて申し込んだのですが、申し込みをミスってしまいました。
申込フォームで体験施設付き入場券を予約しなければならなかったのですが、この予約フォームは予約が一杯になると予約用のボタンが消えてなくなる仕様なのです。しかも予約で埋まっているのにも関わらずカレンダーなり、予約不可の表示が出ないのです。
予約は時間指定なので、その時間の予約が取れたのだから体験施設の予約も取れたと思い込んでしまいました。
正直分かりにくいのでこれはなんとかして欲しかったです。

それなので印刷博物館のみの感想になります。
入場口で撮影禁止などの注意書きとともに、鉛筆以外でのメモ禁止となっています。理由を聞いてみましたが、職員の人は理由を知りませんでした。なぜなのですかね?

印刷博物館の中は1フロアにまとまられています。国内9海外1くらいの割合です。
印刷から見た日本史の展示になっており、時代ごとにどのような印刷物があったかの紹介になっています。

驚いたのは歴史の古さです。
日本最古の印刷物は764年(天平宝字8)、奈良時代です。称徳天皇が仏教のお経の一部を印刷した百万塔陀羅尼を作らせたのが最古のようです。
古さにも驚きましたが、この後印刷の空白期が250年もある事も驚きです。需要が一切なかったのか、それにしても250年も経てば当時では完全にロストテクノロジーです。

再度印刷が再開されるのは1009年(寛弘6)平安時代中期一条天皇の命で藤原道長が法華経の経典を印刷させたそうです。
この辺りから1300年辺りの鎌倉時代までは寺院で印刷が行われていたそうです。基本的に仏教の教えを印刷するので必然的にそうなります。この当時寺院は商工技術者の集住地でもあり、印刷もその一部分だったようです。

印刷物が急激に増えるのは江戸時代に入ってからです。
江戸時代にはすでに金属活字がありました。実現したのは徳川家康で駿河版銅活字と言うそうです。なんと実物が展示してありました。重要文化財だそうです。

印刷は元となる木版を1ページまるまる彫る必要があり大変手間のかかる物です。しかし活版印刷のように文字を1文字ずつ作ってしまえば、それを組み合わせて文章にする事ができるのでかなりの省力化になります。
ですが日本では仮名と漢字があるため、活版印刷は広く普及しなかったようです。家康の駿河版銅活字にしても漢字のみなので、基本的に印刷できるのは漢文のみだったようです。

ちなみにこれと同時期の1622年のイギリスでは初の週刊新聞が発行されていたそうなので、活字の力と言うのはかなり大きい事が分かります。

江戸時代には多種多様な本が印刷され、現代の本で江戸時代に無かった本はないと言われるほどです。そして木版を掘る技術が半端ないです。ノートと同じ程度のサイズならまだ分かるのですが、中にはA7版くらいの手のひらサイズの本まであり、その中には細かい文字がびっしり印刷されています。さらにカラーの挿絵まで入っているのですから、本当に人間が元版を手作業で彫ったのかと疑いたくなるほどでした。

明治期になると外国から活版印刷の技術が導入されていき、一気に現在でも馴染みのある形の本になります。
これ以降はいかに奇麗に大量に印刷していくかの技術的な説明となっていました。
ただ近代以降の説明文ではちょこちょこ印刷用語が注釈もなく書かれているので、印刷の知識が無いと解りにくいかもしれません。

ここで博物館は終わりです。貴重な展示物もあって興味深く見る事ができました。この他に別のフロアでは企画展が開かれていました。企画展はテーマを変えて常に何かしらの企画展が開かれているそうです。
せっかくなので、こちらも見学してきました。

私が行った時に行われていたのは現代日本のパッケージ2020です。
第59回ジャパンパッケージコンペティションの優秀作品が展示してあります。
堅苦しい名前が付いていますが、展示されているのはお菓子等の商品パッケージなのでかなり馴染みがあります。
この手の包装は普通であれば特に気にする事はほとんどないと思います。その商品パッケージで何が素晴らしかったのかの解説が添えられています。印刷技術よりも工夫やアイデア、包装の材質などに焦点が当てられているようです。
普通にスーパーなどで手にしていますが、解説されるとなるほどと気が付かされます。消費者から見ればその程度の差なのでしょうけど、開発側からするとその差を出すのが大変なのでしょう。

博物館だけだと多少物足りないので、出来れば体験施設に合わせて見学に行った方が良いと思います。


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