【連作詩:東の翼望】 その三 訪れ
それはあまりにも突然だった
女が店に現れた
彼女は凜々珠と名乗った
兎に騙されて落とし穴から不思議な国をくぐり抜けてやって来たのだと
嘘をついた
凜々珠は目玉の話を読みたいと言った
聖は思い当たるところを確認してみたが
店内にそのような書物は見当たらなかった
イスラフェルは凜々珠を追いやりたかった
しかしながらその術を知らずにいた
アズラエルは店内に溢れ始めた微香を
愉しんで良いものかと躊躇した
そしてそれはまた
彼に悦びと
少なからず心地の良い恐怖感を与えた
けれども
翼を失った背中はかようにも鈍感で
それと察知する能力は失われていたらしい
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