【読書感想】“世間の普通”から解放される物語/水を縫う(寺地はるな)
読みだしたきかっけは、主人公の高校生男子の印象が、息子と似ていたこと。
世間の普通にとらわれない。
新しい環境ですぐに居場所を作ることがちょっぴり苦手。
じっくり人の話を聞く。
おとなしいのかと思いきや、自分の意見はしっかり持っている。
乱暴なことを言ったり、声をあらげたりしない。
他人と自分と違うということを、ちゃんと知っている。
完全に母親目線で読んでいました。
主人公は男の子、そしてその家族
最初から最後まで主人公は男の子かと思っていたら、次の章から家族一人ひとりが順番に主人公になった。
「あ、そうなんだ」
実は男の子きっかけで読み始めたので、ずっとメインでいて欲しい。最初はそう思ってたんだけど、読みだしたら、それぞれの想いを知ることができて、それぞれの登場人物に感情移入してしまった。
お姉さん、お母さん、おばあちゃん、2人のお父さん、そして最後に、また高校生の男の子。
みんな過去からのなにかを抱えてる
他人から見れば「なんだ、そんなことか」「もう何年もたってるんだから、忘れちゃえばいいのに」なんてことだったりするんだけど。でも本人からすれば、その後の人生に影響し続けるほどのなにか。
性別や年齢、時代や立場に縛られて、思うように言えなかったこと、できなかったこと。
それぞれの章のなかで、それぞれの心につかえていたものが、ゆっくりと水に押し流されて動き出す。なんて清々しく、心地の良い世界なんだろう。
家事はそこそこに、1日半で読み終えました。本を置いて家事をはじめても、隙あらば本を手に取って読み始め、そのままソファに座り込んでしまう始末。久しぶりに集中して読んだ物語でした。
本って、物語って、やっぱりいいなあ。
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