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小学生の年賀はがきのアイデア(3)~「アイデア」と「発明」との関係

先日の記事で、ある小学生の、年賀はがきに関するアイデアをご紹介しました。

①まず、くじの番号をどこかに控えておきます。
②年賀はがきのくじの部分に、有色のテープを貼って、隠します。
③年賀はがきの裏面に、先ほど控えておいたくじの番号を、ボールペンで記載します。
④その上から、鉛筆で塗って、くじの番号が見えなくなるようにします。

さらに詳細は、
年賀はがきにちょっとしたイタズラをしてみる【工夫】【アイデア】

このアイデアは、特許の対象である「発明」にあたるのでしょうか?


特許の保護対象は「発明」です。この小学生のアイデアは、発明に当たるのでしょうか。

「発明」の定義や、どのようなものが発明になるか(ならないか)については、ネット上に多数の情報があります。
とは言え、あるアイデアが「発明」に該当するかどうかの判断は、非常に難しい場合があります。

そこで、ちょっと異なる観点から考えてみるのも面白いので、以下、ご紹介します。

そもそも特許とは、発明を独占的に実施できる権利です。
しかし、たとえ独占的に実施できたとしても、その特許で「お金」にならなければ、特許を取る意味はないと思いませんか?

「発明であるか?」は判断が難しいとしても、「お金になるか?」は、より容易に判断できる場合があります。
そこで、ある「アイデア」が特許の対象になるかを考える際に、まず、「お金になるか?」を考えてみてはいかがでしょうか。

(1)発明である&お金になる ⇒ 特許を取る意味がある
(2)発明である&お金にならない ⇒ 特許を取る意味がない
(3)発明でない&お金になる ⇒ 特許は取れないが、お金にはなる
(4)発明でない&お金にならない ⇒ 特許を取れず、そもそも特許を取る意味がない

では、この小学生のアイデア、お金になるでしょうか?
別の言い方をすれば、この小学生にお金を払ってまで、他者がその実施を望むでしょうか?

答えは残念ながらNOでしょう。①~④は、個人レベルでも簡単に実現できてしまいます。
ですので、この小学生のアイデアは、(2)か(4)になります。
そうすると、(2)か(4)の判断が難しくても、いずれにしても、特許を取る意味がないと判断できます。

(注)「お金になる」という表現に違和感があるなら、「産業の発達に寄与する」と言っても構いません。
この「産業の発達に寄与する」というのは、特許法第1条の表現です。


以下は蛇足ですが、この小学生のアイデアを生かして、特許を取得する手もあります。
例えば、①~④を単純に方法として考えるのではなく、「年賀はがき加工装置」のように、装置として考えることができます。

さらに詳細は、
小学生の年賀はがきのアイデア(2)~アイデアの本質を考える

「年賀はがき加工装置」であれば、少なくとも個人レベルで実施(製造等)できないでしょう。
メーカーが装置を製造して販売することで、お金になります(産業の発達に寄与します)。

装置以外にも、例えば、プリンタの「機能」として、特許を取得する手もあります。
「①~④を実現する機能を搭載したプリンタ」という特許の請求の仕方が考えられます。

以上、「アイデア」と「発明」との関係について、一つの考え方をご説明しました。
ご参考になれば幸いです。

最後までお読みくださりありがとうございました。

●YouTubeで音声でもご覧いただけます

●元ブログ(+αの情報あり)

https://www.tokkyoblog.com/archives/19991091.html

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弁理士 田村誠治(元特許庁審査官)
【東京都港区新橋】【東京都中央区八丁堀】【東京都北区田端】
【稀有な経歴】特許技術者→特許庁審査官→特許事務所運営

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