【Q&A】完成品がないと特許は取れないのでしょうか?
(Q)良いアイデアが思いつきました。いま試作品を作っているところです。
完成品がないと、特許を出願したり、特許を取ったりはできないのでしょうか?
(A)そんなことはありません。完成品がまだできていなくても構いません。
特許の出願書類にその物を作れることを十分に記載できれば、特許を出願できますし、特許を取ることもできます。
<解説>
「特許を取るためには、アイデアレベルではだめで、完成品が必要である。」
このような表現を目にすることがあります。
この表現は、ある意味正しいとも言えますし、一方で、誤解を与える表現でもあるように思います。
例えば、永久機関のようなものを考えてみましょう。
たしかに「アイデア」と言えなくもありません。しかし、理論上、完成品は作れません。
永久機関として、特許を取ることはできません。
上記の表現が、このような永久機関などを想定したものであるなら、ある意味正しいと言えます。
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しかし、上記の表現は、以下のような誤解を与えがちです。
つまり、作れることが確実なものについてまで、あたかも完成品がないと特許出願できないとか、特許が取れないという誤解です。
作れることが確実なら、あえて完成品を作るまでもなく、特許出願できますし、特許を取ることもできます。
このことについて、以下4点ほど関連する事項を説明します。
(1)完成品が作れることを、きちんと説明する
実際に完成品ができていなくても構いません。
しかし、特許の出願書類には、完成品をきちんと作れるように記載することが必要です(実施可能要件)。
この実施可能要件を満たしていないと、特許を取れません。
なお、特許出願後に、作り方などの内容を追加することは、原則としてできません(新規事項追加は不可)。
出願当初から、きちんと出願書類を記載することが重要です。
(2)早く出す
特許は、基本的に早い者勝ちです(先願主義)。
また、特許を出すのが遅れると、その間に、公知の技術が増え、新規性や進歩性を否定される根拠が増えます。
完成品を作れることが確実であれば、完成品を作るのを待つ前に、特許出願を急いだ方がよろしいです。
企業の開発の場でも、製品の開発・製造と特許出願とを並行して進めることも、よくあることです。
(3)審査官もわからない
一般的には、特許の出願書類を読んだだけでは、発明者が完成品を作ったかどうかは、わかりません。
(わたしも審査官時代に、完成品の有無について意識したことは、ありませんでした。)
たしかに、完成品を作った方が、出願書類の内容も、説得力があるかも知れません。
しかし、それはまた別の話しです。(1)の実施可能要件も、そこまでを要求するものではありません。
(4)そもそも発明とは?
そもそも発明とは、アイデア(思想)であって、物(完成品)そのものではありません。
例えば、「細くて長いものを持ちやすくするために、補助部材を設ける」という『アイデア』があるとします。
このアイデアを具体的に適用した『物(完成品)』は、ペンであっても、スプーンであってもいいのです。
そして、特許を出願する前に、ペンやスプーンなど、すべての物を完成させていなければならないなんてことはありません。
いかがでしたでしょうか?
近年では、ネット上にも、特許に関するさまざまな情報があります。
基本的には、その情報をどう使うかは自己判断・自己責任です。うのみにしないことです。
当ブログでは、勘違いされがちな特許の情報について、正しい情報をお伝えしていきたいと思います。
少しでもお役に立つ部分があれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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東雲特許事務所(しののめ特許事務所)
弁理士 田村誠治(元特許庁審査官)
【東京都港区新橋】【東京都中央区八丁堀】【東京都北区田端】
【稀有な経歴】特許技術者→特許庁審査官→特許事務所運営