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発明の効果が複数あるときに【発明が解決しようとする課題】をどう記載するか?

(Q)ある課題(1)を解決するために発明をして、課題(1)を解決する効果(1)が得られました。その発明によって、同時に、別の効果(2)も得られました。【発明が解決しようとする課題】の欄には、効果(2)に対応する課題(2)についても、記載したほうがいいのでしょうか。

(A)課題(2)については、【発明が解決しようとする課題】の欄に記載する必要はありません。ただその一方で、課題(1)の代わりに課題(2)のほうを中心に、特許出願書類を書いた方がいい場合もあります。

●発明の効果が複数あるときに【発明が解決しようとする課題】をどう記載するか?

【発明が解決しようとする課題】の欄には、少なくとも1つの課題を記載します。とは言え、一般に、課題を複数記載するメリットはほとんどありません。本事例のように、結果として2つ以上の効果(本来の効果と、副次的ないくつの効果)が得られたとしても、課題は1つで構いません。

その理由は、あまり厳密に考える必要はありませんが、すぐに思いつく範囲で挙げれば次の2つです。

・特許の出願書類を作成する時点で、副次的な効果に気づかない場合もあり、その点は非難されるべきでない(もちろん、意図して書かなくても構いません)。

・一般に、特許取得までの過程で、【発明が解決しようとする課題】を補正することはほとんどありません(そもそも特許請求の範囲以外を補正する必要はあまりないものです)。

一方、特許取得までの過程で、特許請求の範囲の内容が変わることがあります。例えば、請求項1(独立項)が削除されて請求項2(従属項)の内容で特許になることがあります。請求項2に記載の発明は、2つ以上の効果があることが多いですが、それに対応するように【発明が解決しようとする課題】を補正することはほとんどありません。このことは、発明が解決しようとする課題と、発明(課題を解決するための手段)とが、厳密に対応していなくても構わないということです。

●課題(1)の代わりに課題(2)のほうを中心に、特許出願書類を書いた方がいい場合

いかがでしたでしょうか。【発明が解決しようとする課題】の欄に、効果(2)に対応する課題(2)を記載しなくてもよいことが、ご理解頂けたと思います。

ただその一方で、課題(1)の代わりに課題(2)のほうを中心に、特許出願書類を書いた方がいい場合もあります。

本事例の発明者は、もともと課題(1)を解決しようとして、発明をしました。その発明には、効果(1)と(2)が得られました。

このとき、課題(1)の代わりに、課題(2)のほうを中心に、特許出願書類を書いた方がいい場合もあります。つまり、発明者は課題(2)に着目していたのだと考えます。

(出願書類案1)
従来、課題(1)があった。
そこで、発明Aをした。
発明Aによれば、効果(1)が得られる。また、効果(2)という(副次的な)効果もある。

(出願書類案2)
従来、課題(2)があった。
そこで、発明Aした。
発明Aによれば、効果(2)が得られる。また、効果(1)という(副次的な)効果もある。

●課題の発見も、発明の重要な要素

上記でどちらがいいかは、ケースバイケースですが、例えば、課題(1)と(2)を比較して、課題(2)のほうがあまり一般的でない課題(ニッチな課題)であれば、そちらを中心にしたストーリーにするのも一つの手です。

課題の発見も、発明の重要な要素です。「ニッチな課題を見つけたこと」自体が、発明の評価を高めることにつながることもあります。

●その他参考

あまりよくないのは、従来の課題を(1)と(2)の2つにすることです。

(出願書類案3)
従来、課題(1)と(2)があった。
そこで、発明Aした。
発明Aによれば、効果(1)と(2)が得られる。

これだと、将来的に課題(1)だけ(または課題(2)だけ)に対応した発明で特許を目指したい場合に、支障が生じるおそれがあります(いわゆるサポート要件やシフト補正との関係)。また、外国にも特許を出すときには、権利が限定的に解釈されるおそれもあります。余計なリスクは避けておいたほうがいいでしょう。

なお本記事は、小手先的な内容です。重要なのは、もちろん発明の内容そのものであり、どんな発明で特許を目指すかです。この点については、本ブログの他の記事もご覧頂ければ幸いです。

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<前半>https://www.tokkyoblog.com/archives/73600055.html
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弁理士 田村誠治(元特許庁審査官)
【東京都港区新橋】【東京都中央区八丁堀】【東京都北区田端】
【稀有な経歴】特許技術者→特許庁審査官→特許事務所運営

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