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【Q&A】自分(自社)で作れないものでも、特許を取っていいのでしょうか?

最近は、インターネットの動画サイト(YouTubeなど)で情報収集することも多くなりました。
テレビと違って、必要な情報を必要なタイミングで集めることができます。

良し悪しは別として、便利な世の中になりました。


シェーバーでヒゲを剃る時間、だいたい5分~10分程度でしょうか。
わたしはこの時間も、ずっとYouTubeを付けていることが多いです。

残念ながら、シェーバーの音がうるさくて、動画の音声は聞き取りにくいです。
そこで欲しくなるのが、「音の静かなシェーバー」です。

これまで、シェーバーの改良と言えば、どんなものが多かったでしょうか。
よく見るのは、「剃り味」とか、あとは「洗浄システム」とかでしょうか。

剃り味など技術の高度さがポイントとなる部分については、大手の企業であれば、多大な研究開発費を投じて、他社との差別化を図ることもあるでしょう。

一方で、「使用者にとっての音のうるささ」のような、ちょっと変わった課題に着目したアイデアって、どうでしょうか。
あるのかも知れませんが、見たことがありません。

一般的に、大企業になればなるほど、ちょっと変わった課題(ニッチな課題)には手を付けたがらないものです。

比較的小さな事業者は、大企業と同じ土俵で争う必要はありません。
大企業とは別の観点に着目することは、とても面白いと思います。

(例)地肌に当たる網目部分にゲルマニウム素材を利用した「美肌シェーバー」など


さて、シェーバーの話題で長々とお話ししてきましたが、これに関連して、先日こんな質問を受けました。

(Q)わたしは事業を行っているのですが、ある製品について、素晴らしいアイデアを思いつきました。
ただ、その製品は、自社の事業とは、まったく関係ない別の業界のものです。
つまり、自社では、その製品を作ることはできません。
このようなものについても、自社で特許を取っていいのでしょうか?

(A)まったく問題なく、特許を取っても構いません。そのような事情によって、特許が拒絶されることはありません。

<補説>
この質問者の意図は、さまざまだと思います。例えば、以下のように考えてみてはいかがでしょうか。

①仮に現時点で、その製品を作れなくても、将来的に作れるようになるかも知れません。
②特許を取れたら、その段階で、本格的にその業界に参入するという考え方もあります。
③仮に将来も、自社ではまったく作らないとしても、その業界の他社に対して、ライセンスしたり権利譲渡したりすることで、その業界の発展に貢献するという考え方もあります。


この質問者の意図には、
『その業界と無関係の人間(会社)が、その業界の発明を独占していいものか?』
という心配のようなものもあったようです。

しかし、特許の本質を理解していれば、そのようなことを心配する必要はありません。

特許と言うと、どうしても「独占」ばかりが注目されるので、そういう心配もあるかも知れません。しかし、特許とは、「独占」だけでなく、「利用」の側面があることを忘れてはいけません。

その業界に、新しいアイデアを提供することで、そのアイデアがその業界で活かされるのです。

たしかに、そのアイデアを利用する側としては、ライセンス料が必要となることはあるでしょう。しかし、そもそもそのアイデアが出されなければ、そのアイデアを実施することはできなかったのです。

●アイデアのアウトソーシング

アイデアのアウトソーシングという考え方があります。事業者にとっては、自社で製品の企画・研究・開発部門を抱えるのは、難しいという場合もあるでしょう。

そんな際に、特許を利用することができます。他者の特許に対して、適正なライセンス料を支払って、そのアイデアを利用させてもらうのです。つまり、アイデアの外注化(アウトソーシング)です。

単純に、経費の面だけを見ても、自社の企画・研究・開発部門を維持するのと、ライセンス料を支払うのとで、比較してみるのもいいと思います。

また、いずれか一方ではなく、併用してもいいと思います。

●独占的なライセンス契約

特許では、独占的なライセンス契約という考え方があります。法律上も実務上も、特許権者と、独占的なライセンス契約を結べる仕組みがあります。

自社ですべてアイデアを出すのもいいですが、良い特許をいち早く見つけて、ライセンスしてしまうというのも、立派な特許戦略の一つです。

●いかがでしたでしょうか

ちなみに、特許取得のためには、上述したように、自社で実施(製造等)できることは必要ありませんが、特許の出願書類は、「実施可能要件」を満たす必要があります。つまり、発明の実施ができるように、出願書類を作成する必要があります。この点には注意してください。ご不明な点は、弊所までお気軽にご連絡ください。

●YouTubeで音声でもご覧いただけます

●元ブログ(+αの情報あり)

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東雲特許事務所(しののめ特許事務所)
弁理士 田村誠治(元特許庁審査官)
【東京都港区新橋】【東京都中央区八丁堀】【東京都北区田端】
【稀有な経歴】特許技術者→特許庁審査官→特許事務所運営

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