春秋(12月25日(金))

イエス・キリストの誕生日は、実は定かではないらしい
では、25日に祝うのはなぜか?
古代ローマ帝国で初期の教団が布教を始めようとする時分、庶民の間ではペルシャ由来のミトラス教が流行していた
その太陽神が冬至生まれだったことにあやかったようなのだ
▼本紙にも寄稿する出口治明さんの著書にあった
聖母マリアがイエスを抱く像は、やはり人気だったエジプト生まれのイシス教から、さらにひげを生やしたイエスの顔はギリシャの神、ゼウスから借りたものという
教勢を拡大するため、さまざまなイメージや逸話を集め、親しみやすさを打ち出す必要があったのだろう
▼サンタクロースの姿だって、1930年代に清涼飲料メーカーが広告で赤い衣装に白いひげとして造形し、世界的に定着したそうだ
家族や友人でおごそかな中にも、楽しく語らうひとときのはずだが、ヒット曲「クリスマス・イブ」
のように失われた恋を振り返る機会ともなって、この催しに深い陰影を与えている
▼コロナ禍だからこそ、味わいも増す年中行事なのだが、ここへ来て、政治とカネの問題が歳末セールよろしく相次ぐ
聖夜に元農相が現金受領を認めたとの報が走り、降誕を祝う日に前首相が国会で弁明する事態になるとは
どうか今年限りに願おう
いにしえから積み重なったこの日のよろこびを
台無しにしてほしくないのだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?