小話集(1ツイート)#01-#11
01 量子力学
むかしむかし、入江の浜辺で相撲を取っている二人の漁師がおりました。地殻が変動し、大陸が移動した今も、彼らは相撲を取り続けているのです。その場所は大西洋にある海底火山の噴火口であるとも言われています。ふしぎなふしぎなものがたり。【量子力学】
02 山うなぎ
峻嶮な岩山を登り、彼は神々が降り立つという山の頂に立った。重く垂れ込める暗雲が渦巻き、雷鳴が轟く。ゴソルリオンは眼を見開いた。青い稲妻が閃く雲の中から、巨大な白銀の龍が顔を覗かせた。山うなぎの咆哮が空気を響もす。ゴソルリオンの拳が唸る。後に語り継がれる闘いが始まった。【山うなぎ】
03 工場
金属音と蒸気のファンファーレ。曲線状に並ぶ電球列をオレンジとピンクの光が駆け抜ける。灰色の粘土の様な工員が随所で働いている。蛍光色の縞々のふにゃふにゃを、回転する金属塊が大質量でプレスする。たまに工員もプレスされる。大合奏のうねりは破裂せんばかり。室内は一つの交響曲だ。【工場】
04 たけのこの里
山深く、船頭に船を漕がせて河を遡上するうち、朝靄の向こう、突如奇怪な光を放つ竹林が現れる。私は酒の入った瓢箪を取り落とす。更に進むと、そこには人里があった。一面光るたけのこに囲まれた信じがたい光景だ。人界から隔絶されたこの里では、たけのこは不老長生の霊薬であった。【たけのこの里】
05 プランクトン
14歳の誕生日、文化人類学者の父さんが数ヶ月ぶりに帰ってきた。プレゼントは旅先の原住民が儀式に使う極彩色のお面。クンショウモみたいだな、と私は思った。
その晩私が寝ていると、壁に飾ったお面がぼうっと光って宙に浮いた。『我はプランクトンの王なり。これより汝は我だ』
【プランクトン】
06 ヤゴ
「ヤーゴ!ヤーゴ!」狂乱状態の男が鬨の声を上げながら斧を振り回し、逃げ惑う隣人達の背中を次々斬り付ける。貧しい山間の寒村に突如それは現れた。何処とも知れぬ深淵より、忽然と。そいつは今も淀んだ沼の中央に造られし三角錐の筵の城にいる。闇の奥から邪悪な光を湛えた双眸を覗かせて。【ヤゴ】
07 懐中時計
君の姿を見る度、僕の心は掻き乱される。真鍮製の身体をいとも容易く貫き通す。全身を巡るスチーム系統が過剰活動し、両の眼の計器針は左右に忙しく揺れ動く。僕の胸の奥に何があるのか、君は知らない。心臓の横に大切にしまってあるものを。この気持ち、懐中時計を君にあげるよ。
【懐中時計】
08 山アナゴ
王宮を抜け出したわんぱく王子、後のゴソルリオン七世は、国境付近の山道を歩いていた。日が傾きだんだん心細くなってきたその時、彼を取り囲む複数の気配に気づいた。中から恐ろしい髭を生やし目をぎらつかせた山賊の頭領が進み出る。さしもの王子も後退る。その時、遠くで雷鳴が轟いた。【山アナゴ】
09 ピザ
これはピザ。星間航行用の乗り物です。その昔、私達の祖先は星々に調査団を派遣しました。その一つ、地球で不運な墜落事故がありました。地球の住民は何でも自分達の食べ物に改良する驚くべき技術を持っていました。火星人も食糧になったと聞きます。こうして宇宙船型の食糧が生まれた訳です。【ピザ】
10 飯テロ
飯テロとは古代の忍者が用いた恐るべき暗殺手段である。代表例に「ばくだんおにぎり」「かやくごはん」がある。炊いた米の中に炸薬を混ぜ、口にした途端爆ぜてマキビシが飛び出し、頭が吹き飛ぶ仕組みだ。一撃で殺せずとも、マキビシに神経毒が塗られていれば標的を仕留められるのは確実だ。【飯テロ】
11 車、めがね、和風、地震、魚介類、管狐
(お題を全部使って創作キャラをつくりあげる)
怪人名鑑#087【常磐左衛門尉惟光】
平安時代より三百年間に亘り時の権力に仕えたとされる怪人。陰陽五行を始め古今東西の叡智に長け、地震をも予知した。丑三刻には着物を纏った鯰の如き姿となり、朧車の眼鏡を掛け、煙管から棚引く七色の管狐を使役する様子は異界の者に他ならなかったという。
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