見出し画像

第2期 #V名人戦 挑決T準決勝 観戦記

 現在開催中の第2期V名人戦、挑戦者決定トーナメント準決勝の観戦記です。

V名人戦について

 Vtuberの、Vtuberによる、Vtuberの一番を決める棋戦「V名人戦」。将棋が指せるVによる棋力別総当りリーグ戦となります。詳細は公式サイト、Twitterをご確認ください。

総譜

中継配信

観戦記

 ついに開幕

 いよいよ幕を開けた挑戦者決定トーナメント。
 インタビューでは意気込みとV名人を目指す理由が聞かれました。川山さん「世良さんにまだ勝ったことがないので、堅実にいきつつチャンスがあればズバッと斬り込んでいければ」「V名人になって、Vtuberとして弾みをつけたい」、世良さんは「棋力は互角。勝つにしろ負けにしろいい将棋になると思う」「あるてま虹に救われた。V名人戦で優勝して少しでも恩返しがしたい」とそれぞれ語られ、この一戦にかける思いを感じます。
 開始直前に世良さんが「いい将棋を指しましょう。また後で」と声をかけられるなど、堂々とした姿が印象的でした。

 超速vsゴキゲン中飛車

 序盤の戦型選択は皆様予想通りでしょうか。一誠さんの3手目▲2五歩から超速と世良さんの後手ゴキゲン中飛車△4四銀型に。
 居飛車が二枚銀で圧力をかけ、端を詰めてから仕掛けます。振り飛車側の囲いが金美濃+△6四歩型という形でやや中途半端なため、一つの仕掛けどころでした。

画像1

 世良さん「端を受けなかったのは桂馬が手に入りやすい戦型のため、端を受けると端攻めをくらいやすい」
 川山さんの仕掛けに世良さんは△4二角~△3三桂と桂馬をぶつけてさばきにいきます。▲4六歩と支えますが、△6五銀が面白い手。圧力をかけ返すような、鍛えの入った印象の手です。
 少考の上で▲5六銀と打ちますが△同銀▲同歩△6五銀と打たれて再度少考。▲5七金と我慢し、△7六銀にも▲7七歩と辛抱を繰り返します。川山さんからすれば気分が良くない展開ですが、世良さんもいきなり決める順はありません。△6五銀と撤退して立て直しを図ります。

画像2

 川山さんは上図から▲6八金△6三銀▲6六歩△7四銀の交換を入れてから▲3三桂成△同角▲4五歩と少しずつ盛り上げて反撃の機会を伺います。
 △5四歩がやや感触の悪い手。感想戦では△1五歩が有力だったかもしれないという意見もありました。

画像3

 武士は食わねど高楊枝

 世良さんがじっくり陣形を盛り上げていき、川山さんはじっと受けて辛抱を続けます。

画像4

 ▲5八桂が異筋の受けですが、後にこの桂馬が大活躍するとは誰も予想しなかったのではないでしょうか。
 図以下△7五歩▲6六歩△7四銀▲6七金! が観戦席からも悲鳴の上がった金上がり。感想戦では川山さん「▲6七金寄が優った」という感想もありました。城壁を押し上げるような、甲冑で振りかぶるような手に思います。

画像5

 上図から△7三桂でついに▲3八飛の手番がまわり、▲3五歩の攻めが見えてきました。これは部分的に受けがなく、世良さんはここで上手くさばく必要があります。

 歌姫の覚悟と決戦

 勝負所の一手。△6五歩と本筋の合わせです。

画像6

 ▲同歩△同桂▲6六金の局面で世良さんは秒読みに。△5五歩と突いて攻めの幅を広げます。川山さんもここで秒読みに。
 ▲5五同銀で△5七歩を緩和します。世良さんはそれでも△5七歩を入れ、先手は▲4六桂の一手に△5五角と叩き切ります。▲同歩に△4九銀と絡み、▲4八飛△5八歩成▲同銀△同銀▲同飛△4七銀までノータイム。全てをかけるような攻め、世良さんの手に力を感じます。

画像7

 しかし▲5九飛△3六銀成に▲5四桂で、あの5八の桂が手順に攻め駒に大躍進。冬の時代に溜めていた力を解放し、相手の攻めをかわして切り返すような鋭い一手です。

画像8

 しかし▲3三歩が怪しい利かし。川山さん「秒読みでびっくりしちゃって」「ぬるかった」。世良さん「歩を垂らして逆転してそう」。実戦では通り、世良さんは△3一金と引きました。

 武士の間合い

画像9

 図の▲7九角が感触のいい手。玉を広くし、ようやく角が働き始めます。
 △5六歩と垂らしますが、▲6八銀が驚きの受け。△4八銀▲2九飛△5八銀で、さらに▲8八玉がさすがの間合い。どこまでも受けてあと一歩を許しません。

画像10

 ここで△5四銀で桂馬をむしった変化も検討されましたが、▲4六角が絶好で逆転には至っていないようです。
 図以下、△6八成銀▲同金△5七銀▲同金△同歩成で銀を手持ちにしてついに▲6二銀を決行します。

画像11

 以下、緩みない寄せで逆転を許さず、川山さんの勝利となりました。

 対局を終えて

 川山さん「ずっと悪いと思っていたので、最後の詰みが見えてびっくりしました」
 世良さん「一誠さん、(次も)頑張ってね」「将棋の最後はやっぱりこんな感じに(明るく)しないと」「ヒナちゃんも(頑張って)ね」

 素晴らしい激戦を終え、宣伝などもそこそこに感想戦を始める姿をみて、本当に将棋が好きな方々だなと改めて感じました。
 次局はヒナちゃんと一誠さんによる挑戦者決定トーナメント決勝戦です。誰が挑戦者になるか。お見逃しなく。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?