見出し画像

群馬CSCロードレースDay3レースレポート

大会名:JBCF 群馬CSCロードレース9月大会 Day3

開催日:2021年9月26日

開催場所:群馬サイクルスポーツセンター

距離:6km x 20Laps=120km

天 候:雨

リザルト:6位(チームメイトの今村選手が優勝)

※写真はサイクルスポーツ様より

【使用機材】

バイク ANCHOR RS9s

コンポーネンツ SHIMANO DURA-ACE R9100シリーズ

シューズ SHIMANO S-PHYRE RC9

ヘルメット Kabuto IZANAGI スペシャル・チームカラー

グローブ Kabuto PRG-8(ブラック)

ウエア Wave One         

サングラス OAKLEY ENCODER 

サプリメント SAVAS(株式会社明治)

ヘッドバンド HALO 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

5月から参戦し始めたロードレースは出場する度に様々なことを学んできているが、今回もまた得難い経験をさせてもらった。7名のチーム全員が自分の仕事を全うし、作戦通りにはいかなかったが本当にギリギリのところでチームは勝利を手にできた。同じく勝った1日目、2日目の内容も素晴らしかったが、自分としてはこの3日目のレースがとても印象深い。それは今回初めて自分がこの常勝チームのエースとしてレースに臨ませてもらったからだろう。序盤からチームメイトが自らを犠牲にして動いてくれているのを見て、こみ上げてくるものが沢山あった。ロードレースの素晴らしさをまた一つ知った上に、勝利への執念、プレッシャー、そして勝つことへの難しさを改めて感じたレースであった。

これまではレース序盤にできる逃げに乗ることがずっと自分の仕事であったが、今回の群馬は違った。1日目と2日目は逃げを潰すための集団のコントロール。そして3日目はチームメイトに序盤にできる逃げのチェックと集団コントロールは任せながら自分は集団に待機し、そこから後半にできた少数の逃げに乗って最後は心臓破りの坂でアタックして独走で勝つというものだった。

自分の主戦場であるMTBように序盤から動いて脚を使っていく消耗戦なレース展開とは違い、今回は前半にできる限り脚を使わずに最後の勝負所での爆発力を残しておかなければならない。ロードレースにおいて重要な我慢する力を身に付けるための絶好の機会。そして必ず自分が勝つと集中しており、3日連続のレースにも関わらず気持ちは非常に前向きで疲労感も無く、変わりに良い緊張感があった。もちろんチームがここまで作戦を忠実に実行して二連勝している影響もとても大きい。

レース当日はあいにくの雨。山深い場所にある会場は気温も13℃ほどとかなり低く、霧が出ていて冬のシクロクロス会場のようだった。ここまでの2日間で身体に十分に刺激は入っているのでアップは軽めに済ませ、冷えないように気を付けながらスタートを待つ。雨の日のトレーニングやレースは呼吸がし易く感じて調子が良いことが多いので得意意識があるが、雨のロードレースほど危険なものは無い。

レースが始まれば濡れた路面でブレーキの効きが悪く、下りではついリスクを恐れて前の選手との車間を開けてしまっていた。これにより2周目まではなかなか先頭付近に上がることができなかった。ようやく路面に慣れ始めて安定して集団前方で走れるようになった頃には10名ほどの逃げが既に決まっている状況であった。集団後方にいたことでレースの状況を把握できていない。逃げにはチームメイトの河野選手が乗ってくれているようだが、雨の影響で無線も取り難く、どの選手も普段のチームジャージとは違うレインウエアを着て走っているために選手の判別も難しかった。

そうこうしているうちに50km地点でタイム差は4分まで開いてしまい、チーム全員で集団先頭に固まり逃げ集団を捕まえるための牽引が始まった。自分と今村選手のみが前を引かずに後半に向けて脚を残しておく作戦だ。

しかしここまでのレースで自分は大きな問題を抱えていた。とにかく寒いのだ。スタート前からずっと雨が降り続いていたが、自分はチーム内で唯一レインウエアを着ずに走っていた(集団内でもそんな選手はほとんどいなかった)。寒いとはいってもシクロクロスのように走り出せばすぐに暖まるだろうと思っていたのだが、ロードレースの寒さは全く次元が違った。速度が速く風を受け続けている上に、脚を使わないように動いているので身体が全く暖まってこないのだ。

レースが半分を過ぎる頃にはチームメイトの後ろでガタガタと震えているような状況で、手がかじかんで補給食すらまともに取れなかった。正直たった1人で参戦していたらこの時点でリタイアしていたと思うが、今日自分のために仕事をしてくれているチームメイトのことを思うと、こんな凡ミスのせいでレースを降りることなんてできない。

どうしたものかと絶望を感じていたが、様子に気づいた今村選手がなんと自分のレインウェアをわざわざ脱いで渡してくれた(今村選手はレインウエアを二枚着ている徹底ぶりだった)。どの競技種目でも言えることだが、強い選手というのはいつも余裕があって、レース中の動きも常にスマートでかっこいい。今村選手から受け取ったレインウエアを羽織った瞬間から震えが止まり、身体が少しずつ暖まっていくのが分かった。

アシストとして集団をコントロールしてくれたのは橋本選手、徳田選手、兒島選手、山本選手の4人。それに加えて名前を聞きそびれてしまったがシエルブルーの若い選手も集団牽引を手伝ってくれた。(余談だがこの選手はレース後にわざわざチームテントまで挨拶に来てくれた。僕らは敢闘賞として彼にカステラを渡した。)

まずは橋本選手が一本引きで3周ほど引き続ける。このおかげで前とのタイム差は2分半ほどから動かなくなった。簡単に聞こえるが逃げ集団11人に対して橋本選手が1人で同じ速度で走っているということなので物凄い。ただ実はこの時、本当は一本引きでなくローテーションしながら回してくれと今村選手が指示していたのだが、無線が通じなかった橋本選手には聞こえていなかったらしい(チームメイト全員が前日の今村選手の漢気溢れる一本引きに橋本選手が対抗してきたのだと思っていた)。

橋本選手が仕事を終えてからは3人で回してもらいながらタイム差を詰めていく。ブリヂストンの選手は全員が下りと平坦の牽引がとても速くてジェットコースターのようであるが、登りはペースで踏んでくれるので後ろで十分に脚を休められた。3人とも必死の形相で前を追っているが、タイム差は本当に少しずつしか縮まってこない。逃げ集団の中には全日本チャンピオンの入部選手もいるので、集団とのタイム差を計算しながら絶妙なペースで逃げ集団をコントロールしている様子が想像できた。しかしタイム差が1分を切ってくれば逃げ集団は協調体制が崩れてペースが乱れるはずなので、そこまでの我慢だ。

前日優勝した兒島選手、落車の影響もあったはずの山本選手もそれぞれ牽引後にリタイアとなるほどに追い込んで集団とのタイム差を詰めてくれた。みんなチームのために、今日僕が勝つために死力を尽くしてくれていて熱い気持ちが込み上げてきた。そしてこのタイミングで逃げ集団から遅れた河野選手が見えた。僕らはてっきり前日同様に監督の指示で逃げ集団から牽引のために河野選手を戻らせたのだと思っていたのだが、実際は体力が尽きて遅れてしまっていた状況だったらしい。そうとも知らずに体力の限界を超えているはずの河野選手の背中を叩いて激励し、先頭に立たせて前を追いかけてもらった。ゴール後の河野選手は低体温症で震えながら全然引けなくて申し訳なかったと謝ってきたが、むしろ謝るのはこちらの方だ。あの時にほんの数十秒でも引いてくれたから最後に逆転することができた。本当に感謝したい。

ラスト2周。逃げとのタイム差が1分を切ってくるとこれまで後ろにずっと付けていたチームがアタックをかけて抜け出しを狙ってくる。前に追いつきたいならもっと早くから協力してくれれば良いのにと僕は思うが、これもまたロードレースなのだろう。逃げにメンバーを乗せているから引かなくて良いという理屈が通るなら、うちのチームも河野選手を乗せていた。しかしこれは昨日のレースでも経験していたことだったので、腹は立ったが冷静に対処できた。むしろ他チームのアタックがきっかけでペースが上がることは好ましい状況なので、淡々と速いペースを刻んでいる選手の後ろにつけて、集団の速度を落とさないようにする。ここでムキになってアタック合戦をしたところで消耗して逃げ集団とのタイム差は広がるばかりだ。

ラストラップに入る時点でタイム差は30秒ほど。先頭は入部選手がアタックして抜け出しているようだ。追いつけるかどうかはかなり微妙だが、ここで自分が前に出て引いてしまえばチームメイトの努力が水の泡となるので集団の中で我慢した。今村選手と話して予定通り心臓破りの坂でアタックすることを伝える。

ラスト2kmの登りからかなり速いペースで進むが、ここまでずっと脚を溜めてきた自分はまだ余裕があった。しかし先頭の姿はこの段階でも確認できず、もう追い付くのは無理だと思っていた。それでもここまで懸命にアシストしてくれたチームメイトのことを思うと、何もせずにゴールまで雪崩れ込むのは嫌だった。

どちらにせよ集団の頭は今村選手が必ず取ってくれるだろうと思っていたので、予定通りに最も急勾配なヘアピンコーナーからスピードを乗せていき全力でアタックした。振り向かなくとも集団から抜け出せたのが気配で分かった。登り切ると4名ほどのパックが見えた。おそらく逃げ集団から遅れた最後の選手達だ。一瞬後ろにつこうか迷ったが、本能的にここで休んだらレースが終わると思ったので、そのパックの先頭に立って全力で踏み続けた。そして残り500mで遂に先頭の入部選手と織田選手の姿が見えた。本当に2人が先頭かどうかも分からなかったが、牽制している様子なのでどうやら間違いない。

残り300mで追い付く。100mほど牽制があり、入部選手の後ろにつける形でスプリントを開始。残り200mで先頭に立った。これで勝てれば最高過ぎる。しかしそこからの100mが長かった。脚が一気に重くなり上体が起き上がってくる。左から勢いよくシマノの選手、右から愛三の選手に抜かれる。みんなゴメンと真っ先に浮かんだ。ここまでしてもらって勝てなかったと。しかし残り50mで今村選手が物凄い勢いで自分を追い抜いていった。シマノの選手を差し切ったかどうかは分からなかったが、アナウンスで今村選手の勝ちを知る。この瞬間に全てが報われたと思った。本当に良かった。

もし自分が心臓破りの坂で動いていなければ、入部選手と織田選手が逃げ切っていたと思う。しかし自分の動きは結果的に多くの選手を引き連れてきてしまっているので、もし今村選手がスプリントで勝ってくれなかったら他チームのアシストになってしまっていただろう。最後まで強いチームメイト達に助けられたレースであった。

ゴール後に最後まで引いてくれた徳田選手に「こんなにみんなからアシストしてもらっておいて自分が何もできずにゴールしたらどうしようかと思った」と話したら、「時さんが何もできなかったときは僕ら(アシスト)の力が足りなかったということだから僕らの責任ですよ」と間髪入れずに答えた。心の底から尊敬した。僕はこのチームでロードレースを始められて本当に良かったと思う。そしてこのチームの誰かで、また全力で勝ちを狙いにいきたい。

最後となりましたが、いつもサポート頂いているチームとスポンサー各位、応援、祝福のメッセージを送って頂いた方々に感謝します。本当にありがとうございました。

僕の次戦は今週末のシクロクロスの開幕戦、1ヶ月後には全日本ロードとまだまだ大きなレースが続きます。これからも精進して参りますので、応援頂けたら嬉しいです。

TEAM BRIDGESTONE Cycling

沢田 時


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?