俺は全てを【パリイ】する 8話「俺は竜をパリイする」感想

 有限会社ウインドブラスト運送 特殊オプション全乗せ直送便 料金は竜殺しになります。ローンも可。

前回のあらすじ

 元S級冒険者「死人のザドゥ」は出血大サービスで超大赤字を出して帰りました。そして王都にはネームドの空飛ぶ竜が現れました。

※この記事は「俺は全てを【パリイ】する 8話」のネタバレあり感想になります。

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これはおとぎの話

 竜殺しの英雄。文字通り、竜を倒す英雄に贈られる異名だ。最近では農家の娘がクワで竜を倒した作品もあったな……

 ノールがまだ子供の頃に父親から聞かされたお話で、彼にとって忘れられない幸せな記憶。いつか自分も英雄みたいになれるかもと根拠なく信じていた子供時代の夢。

 だからだろう。今回ばかりはノールも竜を見て、トカゲだの言わずに竜だと認識していた。お父さん、ミノタウロスとかそういう基本的な魔物の知識もつけてあげて欲しかった……あと一応ドラゴンスレイヤーの称号は前回の毒ガエル撃破で達成しているのだが、本人は一切気付いていないのでノーカンである!



厄災の魔竜あらわる

 馬鹿でかい竜が、空から来た。その巨体をリーンちゃんが直前まで見れなかったのは姿隠し(シール)、或いは「注意深く観察しないと視認できない」結界を張っていたとかそういう感じかな? それとも単純に「信じがたい光景を前に脳が理解を拒否した」?

 英雄(ノール)を送れば勝てると希望に満ち溢れていた彼女の心に不可能の言葉を突き付けるような圧倒的存在感。リーンちゃんも絶望的表情をしている。

 並の魔物であれば死への恐怖で済むが、こんな竜を前にした諸人の反応は「あ。俺たち死ぬんだな」だと思う。ゴジラの映画でもブレス吐く時にそんなシーンあったな。それでも逃げ場を示すものたちがいたらそっちに逃げるくらい、生きたいと思う気持ちはあって何より。



150年の休暇

 これでもまだ寝足りないはずなのに起こされてここに来たという。魔導皇国ヤバすぎでしょ……手駒の中でも恐らく最大規模のを送りつけやがった。

 最初から見せしめとして各国にその力を誇示するためにクレイス王国を滅ぼすつもりだったな……更地になった国を実効支配してから迷宮の所有権を奪おうって算段だ。じゃなきゃこんな怪物を送りつけようなどとは思うまい。

 羽ばたくだけで建物が悲鳴を上げるほどの破壊力、有り余る力を一度ふるえば人も木っ端。6聖は怯まないが、全員集合しての戦いがしたくても出来ない状況に追い込まれている。

敵の計画が何となくわかってしまった。

①クレイス王国の各所に強力な魔物を同時に出現させて厄介な6聖を集結させないようにする。計画②により生じる避難民の避難経路に魔物を配置して集結をさらに遅らせる。

②厄災の魔竜を国の中心に送り込み、建物を破壊。こういうピンチに必ず先陣切って飛び出すであろう王を亡き者にするか、相打ちに持ち込む。

③避難民の集団を、遅れてきた黒死竜が一網打尽にしてクレイス王国に壊滅的な打撃を与える。

 のっしのっしと、やたらゆっくりやって来た黒死竜が町を壊滅させる役目と思っていたけど、そうではなかった模様。

 尤も、③に関しては既に失敗しているので民の安全は保障されたわけだ。数多の命を救っているぞノール!



状況は絶望的

 最早クレイス王国は風前の灯火、膝を折って父と兄の命を案ずる以外他にないとリーンちゃんも諦めムード。ここまでか……

ノール「竜か…あんなに大きいのか。実物は初めて見た」

 緊迫した空気をパリイし、長閑なBGMを引っ提げて現れるノール。ウインドブラストによる超加速なら間に合うかもしれないと宣言。リーンの父と兄を救って逃げるだけなら出来るかもしれないかと、頼りになり過ぎだろ……リーンちゃんはそろそろ先生としてでなく男性としてノールのことを見てしまうのではないかってくらい好感度爆上げだ。



ノール直送レールガン

1:ディバインシールドを砲身に見立て
2:各種魔法で砲身を強化(以下効果は推測)
「マジックバリア(耐久性アップ)」
「リフレクト(衝撃反射)」
「マジックリフレクト(魔法反射)」
「エンハンス(各種バフ)」
「チャージ(力溜め)」
「バースト(爆発力アップ)」
「??(うまく聞き取れなかったので不明)」
「マルチキャスト(魔法複数同時発射)」6重詠唱!!!

 その結果がこれだよ! ロロ君は超困惑しているがそれが普通だ。だってこれ人を送りつけるんじゃなくて門を破壊するための攻城兵器みたいな威力だろうし! 黒い剣じゃなきゃ人も武器も木っ端微塵でオシマイだったでしょ! dアニメストアのサムネイルも妙な事になっていたけどこれが原因かい!! 今までで一番命の危険を感じたんじゃなかろうか? 笑わせてもらったよノール。

 流石のノールも意識を失いかけるし一歩間違えれば死ぬ超兵器、こんな緊急時でなきゃ二度とやめとけって。

リーンちゃん「先生…ご武運を…!」

 ノールへの信頼度がカンストしているため、これで死ぬことは絶対ないとリーンちゃん……ノールと行動を共にし続けたせいで考え方がかなり常軌を逸し始めていることに気付いて……!



一方そのころ

 良い感じに姫様が常識をかなぐり捨てている頃。

 王様は決死の面持ちで厄災の魔竜に立ち向かい、目だけでも頂くと相打ち上等の覚悟だった。ところで王様、脳裏に浮かんでいた小さい頃のリーンちゃんと戯れていた思い出をもう少し見せてくれませんかね?

魔竜のブレス

レイン「あれは、数百年前、この大陸を焼き尽くした、魔竜のブレス!」

 知っているのかレイン!? 吸引機能もあってまともに動けないというおまけ付き、絶対に相手を倒す意思を感じる必殺技を最初からぶちかましに来る鬼畜竜。

 そこで王様が取り出した小刀のように小さい、光り輝く「爆砕の魔剣」。使ったらただでは済まないだろう事が容易に想像できる輝きっぷり。かつての仲間たちも王の覚悟に沈痛な面持ちだ。

 今まさに壮絶な王の物語が幕を閉じようとして


ノール「パリイ!!!!」

 ブレスも、シリアスも…パリイだよ!

 馬鹿でかい竜の横っ面に放たれたパリイ。明後日への咆哮。

 それを目撃した誰もが「え???」と呆然自失。竜ですら「何故だ??」と困惑している。そりゃあまあ……そうよな。

 なんというか……この流れ、シリアスをぶった切る流れ。ああ、そうだ。無秩序に暴れまくる問題戦隊の40話で見た流れだよこれ!!



強き者が弱き者を支配し蹂躙する

 というわけで王様を倒せとかそういう命令受けていたか知らないが、攻撃対象はノールのみに絞られた。長く生きる魔竜にとって小さい人間に後れを取った事実はことのほかショックが大きかったようです。

 城壁を薙ぎ払えるだろう威力の長い尻尾がしなり、鞭のようにノールの真上から迫るが

ノール「パリイ!!」

 まあ当然のように弾き飛ばした。あり得るのかそんなことが!? ノールの体重の何十倍ではきかないだろう重量の加速付きの一撃だぞ!? これでも黒い剣はびくともしないしノールもノーダメージとか完全ぶっ壊れ性能。

ノール「死ぬかと思った」←ウインドブラスト便で

 魔竜は2度も地に倒れた。絶対的強者としてあってはならぬ失態を2度も晒し、羞恥と困惑と怒りで頭に血が上っている事だろう。しかもそうさせた本人からは、先ほどの王が放っていた決死の気迫を一切感じない。まだまだ余裕の面持ちだ。

 こんなことがあっていいはずがないだろう。(しかも最初のブレス封じのパリイは急ブレーキ用に使っただけという事実を知ったら腰ぬかしそう)



あれはゴブリンです

 魔竜と戦うノール。その間に、リーンちゃん達3人は王の救出と脱出を図るため馬をかっ飛ばしていた。しかし瓦礫に阻まれ、目の前には小柄ながらゴブリン(エンペラー)が3体。

リーンちゃん「どう戦う…こんな時、ノール先生なら…」

 ピンチを前にリーンちゃんは、師匠から学んだことを思い出した。

リーンちゃん「臆することはありません。相手はただのゴブリンです」

 間違ってないけどさあ!? 確かにノールと一緒に倒した個体よりずっと弱そうだけど、それでもただのゴブリンじゃねえぞ?! 周りが聞いたら単なる根性論だよそれ!

 最初は呆気にとられるイネスも、しかし魔竜と戦う男が近くにいるのであれば、「まあ、アレに比べればゴブリン……みたいなもの」そんなノリ。

連携攻撃(必殺)

 迫るゴブリン(エンペラー)3体にアイシクルダンスを仕掛けたが、威力は低い。多分6聖対策で魔法への耐性が高く調整されているのか? 大柄の時とは違って回避すらしない突撃。シールドで防げるかと言ったタイミングで

ロロ≪ そこから 動かないで ≫

 魔族として魔物への言葉を賜ると、命令通りに体を硬直させた。その隙にリーンちゃんは凍結魔法を、イネスは盾を並べて剣に変えるディバインソードを展開、氷像になったゴブリン(エンペラー)達をばらばらにした。

 この時の、盾を中空に並べて剣に返る一連の所作が痺れる。盾が身の丈を超える大剣になるって何それカッコいい。

 魔族、魔法使い、メイン盾&剣。これなら勝つる!



最大奥義

 パリイ1回で美しい爪や皮膚がいとも容易くひび割れていく。その剣、先日までドブ攫いに使ってたんです……なんて言ったらプライド滅茶苦茶になるから黙っておこう。

 厄災の魔竜としてのプライドにも大きなヒビが入った。最早なりふり構っていられないと、目の前の男を倒す事だけに集中する最終奥義へ。人が届かない遥か上空まで飛翔し、思いきり力を溜めて、溜めて、ブレスを放つ!

 これで滅びぬ者は無い、絶対的自信を誇る最強破壊のブレスは

ノール「パリイ!!」

 あっさりと弾き飛ばされ、大空に爆散した。

 厄災の魔竜にとっては信じ難い光景だろう。

 最強の奥義を、上空に逃げてから放つという強者としてのプライドを捨ててまで練り上げた一撃を、小さい人間1人に無効化されてしまったのだ。

 更にロロ君の言語解読で「怒っている。それだけではなく、自分は敵だと認めているのに相手にまるで認められていない」と分かる。

 今までの常識が一切通用しない規格外の人間に、魔竜もただただ悲痛な雄たけびを上げる事しか出来ない。自分こそが弱き者だと突きつけられた事実を承服できない。苦し紛れに、通用しないと分かっていても腕による一撃をノールに向けた。

 まあそれもパリイされてしまうわけで。爪を折られた時に、心もポッキリ折れてしまったのだろう。「自分はこの男に勝てない」と認めた。

「強気者が弱き者を支配し蹂躙する」

 先ほど自分が言った言葉通りに、ノールの前に腹も顎も全て地につけて、服従のポーズをとった。何をされても文句はないという姿勢。



このパリイ、概念技??

 ノールは基本技しか習得できなかった代わりに、その技を極限まで練り上げ続けている愚直な漢。忍び足は瞬歩並に、プチファイヤーはファイヤー以上に、身体強化もローヒールも恩恵は存分に発揮されて、投石は何故か爆発する。

 では、パリイは? 「自分に向けられた敵の攻撃を弾き飛ばす」という単純極まりないこの技を極める時、ノールは実践訓練ではなく吊るした木剣にパリイしていた。よく考えるとあの特訓がおかしかった。自分から弾き飛ばしに行ってる。完全カウンター技のパリイとは別方向の進化を遂げてしまっているのかもしれない。

 まさかとは思うが、「指向性の攻撃であれば全て弾き飛ばす」に効果が変わってないか? まあ並の武器ではノールの握力にさえ耐え切れないし、魔竜の攻撃なんか1発で武器が駄目になる。だから黒い剣なしにノールのパリイは成立しない。



超メンタル

 厄災の魔竜でもノールにとっては竜。しかも規格外のパワーとサイズ。それでも一切臆さず勝負を挑める奴が、果たしてどれだけいるのか。ノールと同じ条件の技や武器や装備でも、これを前にしたらビビり散らかすわ。

 魔竜がノールに服従のポーズをとったのは、そういう部分もあったかもしれない。

 父からのお話に出た「良質な爪や骨は武具や薬になり、富になる」という部分を思い返しても、ノールは魔竜を倒す気にはなれなかった。

ノール「俺は。とても英雄になれそうにないな」

 魔竜を屈服させ、慈悲深く生かし、謙遜の心(勘違いともいう)も忘れない。竜殺しの二つ名はつかないが、英雄の名を冠するには相応しいと私は思うけどね。

 リーンちゃんの声に振り返って笑顔を見せるノールの爽やかな顔ったらない。これは来週、褒章をパリイしなきゃだな! 前回は黒い剣を貰ったけど今回は流石にそれと同等か何か受け取らないといかんぞノール!

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