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【音霧雑記】半沢直樹の1000倍返し!! 頭取の真意、大和田の涙を考察する

半沢直樹最新9話までのネタバレ、考察を綴る記事になります。考察ですので解釈違い上等です。以後はネタバレのオンパレードなので読むか、戻るか……どっちですぅううう!!?

予期せぬ3人まとめて

8話終了後の次回予告にあった「3人まとめて」が誰なのかの予想で一時盛り上がっていた。私は箕部・弁護士・紀本の3人と予想していたが、ものの見事に予想は外れてしまった。

箕部はまあ外さない。しかし大和田と頭取を予見していた人はどれだけいただろう?? 私はこの時点で頭ガツンとぶつけられた様でショッングだった。それはないだろうという選出で、完全に予想を裏切られた。半沢桃太郎の衝撃が霞む事態だった。

大和田が涙ながらに土下座を強要したのは何故

強制的に土下座をさせようとし、それでも最後の最後で半沢に吹っ飛ばされた大和田。その行動に至るまでの軌跡を辿っていく。

前期最終話にて、半沢直樹に100倍返しを決められて土下座をした大和田。本来は懲戒処分もやむ無し、良くて地方出向が妥当の所を、中野渡頭取からの恩情で、末席ながらも役員の席に残ることになった。

旧産業中央銀行(旧S)の行内融和を目的とした采配。と、当時の渡真利忍は読んだが……本当にそれだけなのかはわからない。確かに役員として残すのは有用だ。わざわざ三笠副頭取が追加融資を通すため、頭を下げるくらいは大和田に発言力も、旧S陣営の統率力も残っている。

しかしいつ、自分に牙を剥くか分からない相手をそれだけの理由で残すとは思えない。そういえば中野渡頭取は、大和田にこうも告げていた。

「私は、銀行員(バンカー)としての君を、尊敬していたんだよ」

当時の私には何のこっちゃかわからなかったし、その後の半沢への出向辞令で憤然としたので今更ながらこの言葉の意味を考える時が来たんだと思いました。

大和田暁は家に帰っても、待っている者がいない。妻はいるが、金をせびってくる以外には無関心。いつ帰ってきても帰ってこなくてもどっちでも良いという態度。夫との時間を共有する素振りも見せない。子供がいるかどうかの描写もないが、この雰囲気ではいないだろう。

そして先日見直した前期にて、出向取り消しの直談判に来た部下に対する温情。「介護は苦しいから」と地方には飛ばさないよう人事采配を振るった。それは他人からの又聞きから得た知識なのか、取り繕って良い人然とした応対をしたかったのか。それとも自身が既に経験したことがあるからなのか。真相は分からないが、大和田が見ていた白黒の映画は、家族で溢れている様に郷愁や哀愁を見る。

そして今期9話で何故か……!! 全然……!! 分からないけどぉ!! たまたまぁ、偶然!! と言ってスマホの写真を大画面でソファに腰かけながら眺める半沢と大和田。棺の会の真相に迫る重要なメモ以外に、猫らしき写真や風景画がいくつか収められている。そこに自身の身内や奥さん、自慢の邸宅の絵はない。

大和田という人物は多くを語られていないが、部下からはその力を拠り所にされて一見大人物に見えても、銀行を出たら豊かな人生とは言い難い。何より半沢直樹も前期終盤に頭取からのヒントを得て、大和田常務ではなく、大和田暁としての人物を見るに至った。それほど、常務という肩書に皆が注目し集まっている。

大和田暁という人物の真の姿を知る者は限られるだろう。岸川辺りは知っているかもしれないが、今は出向している。

100倍返しが決まった数日後、頭取に呼びつけられて飄々として出向先を尋ねたりしています。この辺りは当時敗者の弁だとスルーしていましたが、今思えば大和田という人間の根本的な部分に触れる大事なシーンでした。

懲戒処分すらも妥当だと覚悟した上で、尚且つ出向にも応じる構えだった大和田。半沢が近藤に対して「例え何処にいようともお前はお前だ」とエールを送る場面がありましたが、これは大和田も同じ思想なのかもしれない。どこに行ってもバンカーとしての職務を全うする。寧ろ清々しさすら感じる。

そんな大和田に対して下した頭取の恩情人事。妻に愛されず、失脚により部下は離散するだろう、頭取になるという人生の大目標すら打ち砕かれて、最早何も残っていない大和田は「何故」と声を震わせて尋ねます。

「私は、銀行員(バンカー)としての君を、尊敬していたんだよ」

常務としてではなく、1個人としての自分を見てくれる。それが行内融和に繋がると、打算的思考が速い大和田は即座に理解したことだろう。しかしそれ以上に嬉しかったのではないだろうか。役員としての席に残る事よりも、肩書無い自分を理解し必要としてくれる人間が目の前にいる。ここで流れた涙は、「人」を見る器の大きい頭取への完敗・感謝・感動・心服があると思います。半沢直樹は大和田を土下座させて屈服させたが、最後に大和田常務という難敵を倒したのは、【施し】という頭取の慈悲の心だった。

だからか、今期1話からは恩返しを頻りに口に出し、胡散臭さはあっても前期の邪悪さは鳴りを潜めた。頭取のためであればこの世で最も嫌いな半沢と手を組むことも厭わない。決死の想いで突き止めた箕部の急所足る証拠を譲渡することも厭わない。銀行、その頭取というより、中野渡という人物を守るために奔走しその腕を振るう大和田。

しかし、頭取が箕部の証拠を譲渡する際にはどのような心境だったか分からない。止めるべきだと食い下がったかもしれない。しかし最終的に大和田は頭取を信じてか、渡した。箕部という政府の癌を討伐するのではなく、その支配を受け入れるを良しとした頭取に、何を思ったのだろう。

乗り込んできて、箕部に啖呵を切って見せた半沢に、何を思ったのだろう。

そしてそれをただ見ていることしか出来ない自分に、何を思ったのだろう。

半沢に土下座を迫る箕部。その理不尽さに眉を顰め、頭取の顔を窺っても何も感情を示していない。この場は半沢が土下座をしない限り収まらない。反撃の手段はあっても、その証拠を握る箕部は銀行の急所を知っている。

逆らえば銀行が死ぬ。頭取も沈没する。頭取という大恩人を守るために自分に出来ることは、バンカーとして若く才気溢れる半沢を土下座させること以外にない。

紀本が裏切り者だと炙り出すに至った7話、役員会議でバンカーとしての矜持と誇りを高らかに伝えた彼に大和田は涙ぐんでいた。どんな窮地に立たされても決して諦めない不屈の闘志を漲らせる半沢を、かつては恐れ、今は頼もしくさえ思っている。

そういう未来有望な半沢を、土下座させる事に納得はいかない。納得はしないが、やってもらうしかない。それはかつて保身だけを考えていた大和田とは全く異なり、銀行と頭取を最優先にした行動だった。

「やるんだ」

震えた声で土下座を迫る大和田。半沢も熱血漢だが、大和田がそうする意味を理解している。どんなに自分たちに正義があっても、箕部に屈服せざるを得なかった7話と同じ、理不尽さを感じるシーンだ。

「やれー!! 半沢―!!!」

そして以前、半沢が大和田に土下座を懇願したシーンと重なる台詞。半沢は親の仇をどうしても討たねばならなかった。大和田は頭取をどうしても守らねばならなかった。

土下座をする者の痛みを大和田は思い知った。

「やるんだ」という台詞には、そういう苦渋をどうか飲んででも生き延びるんだという諦めが滲んでいる。だから叫んででも半沢に土下座を強要した。

半沢の表情は憤怒と悲しみと、大和田の意図を理解して、それでも抵抗せずには自分のバンカーとして、人としての矜持が折れる事の恐れがある。

半沢は武道を嗜んでいる。大和田を振り払うくらいわけないだろう。土下座させる大和田に身を硬直させるのではなく、すぐさま振り払ってしまうことも出来ただろう。でもしなかった。

身体を無理やり折って、両手を地べたにつかせて、泣きながら半沢に土下座を懇願する大和田。「土下座」連呼の中に、半沢に命令する文言は1つもない。土下座をしてくれという必死の叫び。半沢は大和田を一切見ない。怒り心頭の瞳は箕部にのみ向けられている。

絶対に立ち向かわねばならない悪を前に、半沢は屈せずに立った。

この姿を、どれほど頼もしく思えたことだろう。涙も零れていた。

頭取にカンジェルマンを見た

中野渡頭取は謎に包まれている。大和田程前面に出ないばかりか、交わす言葉も少なく、半沢の出向然り、9話の裏切り然り、理解の及ばぬ行動も散見される。

真の行内融和を目指すのであれば、棺の会と政府の癒着を暴露し、そこで大きな恐慌に陥ろうとも再建させる道を選ぶのは確かに、筋だ。箕部を倒さない限り、例え箕部の寿命が尽きようとも、銀行を強請りたかるネタは継承され続けるだろう。

しかし全てを明かすタイミングなどを考えねば、信用を治療する間の出血量が激しく、銀行は失血死する。半沢が思い描く道は正道だが、世間ではそんな綺麗ごとで済むはずがない。

これは1人の人間が自死し、反社会勢力との繋がりもあり、銀行の内部で隠され続けた、支持率低迷の政府転覆さえも実現可能なネタなのだ。

どれだけのマスコミが面白おかしく報道しても次々ネタが湧いて出る打ち出の小槌。数カ月はワイドショーがネタに困らない。そして信用失墜後、二度と復活できずに銀行が潰れて、正義執行だと大衆は喜ぶだろう。

半沢は前期最終話で、腐った役員会議に対し「こんな銀行潰れてしまえばいいんです」と檄を飛ばした。半沢が命懸けで手に入れた数々の証拠は、本当に銀行を沈没させるには十分すぎるネタなのだ。刺し違えてでも箕部を倒すつもりだったろう。半沢にしては楽観的すぎる綺麗ごとで、銀行を瀕死に陥れようとしている。

そんなネタの核心である証拠を箕部に渡した頭取。

頭取はこの銀行をどうしていきたいのか。それは半沢を伊勢島ホテル再建に抜擢したこと。セントラル証券という子会社から銀行を俯瞰する機会を与えたこと。そして戻ってきた半沢に、かねてから政府との癒着などについてあらっていた帝国航空の再建を任せたことが全てだろう。

この再建案、頭取が最初に任せたのは伊佐山で、伊佐山出向後は本来大和田のハズだったが「真に優秀な人材」と頭取から褒めちぎられた半沢に盛大な嫉妬心を持った大和田が頭取に推挙した。失敗しても半沢の責任、成功したら推挙した自分の手柄という卑しさも兼ね備えた悪戯である。

しかしこれは大和田の……というよりも、運命の悪戯と言えよう。

多分大和田がやってたら1話で終わってしまう案件です。

頭取は半沢という人物を高く、それはもう高く評価しています。ここぞという超重要な案件には半沢を寄越します。

しかしそんな半沢がこれまでやったことをまとめると、

西大阪スチールの融資事故による5億回収→人海戦術と国家権力を持つ国税と差し押さえレースに勝利し、不正に蓄えた5億以上の資産を差し押さえて東田を破滅させ、浅野支店長を出世レースから蹴り飛ばしてエリートの集う営業第二部に栄転。

伊勢島ホテルへの200億融資事故に伴う実質破綻、及び引当金を積むことで銀行の信用失墜案件→同族経営の伊勢島ホテルの社長を、数日間で買収案件を受け入れるまでに心を開き、真の意味で伊勢島ホテル再建を成す。そして裏で画策していた大和田の迂回融資や200億の融資事故見逃し等の罪を明るみにして失脚させる。

電脳雑技集団VSスパイラルの買収合戦→スパイラルとフォックスの結びつきによって超目玉の新規事業立ち上げ、スパイラル株は高騰し、500億を積まねば買収失敗にまで追い込んだ。一方で証券取締役の黒崎によるヒントで電脳雑技集団の粉飾決算を見抜き、電脳雑技集団社長夫妻は破滅し、若手ホープ伊佐山、副頭取の三笠は癒着を暴かれ、ついでに諸田が失脚し出向。銀行が子会社の証券に完敗する事案になる。

要するに半沢が関わると、目的以上にその裏側の闇まで全て暴く&全て解決が通例なのです。暴いて欲しくないなら半沢を起用する事などあり得ない。頭取は帝国航空の一件にも、半沢が絡めば500億を失うか拒否するかなんて問題で済まないことくらいは予見していたことでしょう。

だから中野渡頭取の狙いは、政府・箕部への屈服などではない事など実証済みなのです。……ではいったい何が目的なのか??

……カンジェルマンという人物を知っているだろうか。装甲騎兵ボトムズというアニメは大きく4部構成になっており、その第2部クメン編にて登場する人物である。クメン王国は新旧派閥争いが激化し紛争が起きている。旧体制派である彼は、新体制への移行を望んでいた。しかし旧体制派は過激で、敗北を喫しても潜伏して未来に禍根を残す。燻ぶるばかりでは迎合も不可能だろうという発想が、カンジェルマンに閃きを与えた。「自分が御旗となって旧体制派を結集し、新体制派に殲滅してもらう」という企てだ。

新たなる時代を生むには、古き者の血を流さねばならない。その覚悟がカンジェルマンを駆り立てた。

中野渡頭取は、コレをやろうとしているのではないかという思いが私にはある。箕部が握った彼自身のスキャンダルの核心的証拠。これは時限爆弾のような気がしてならない。箕部に迎合するフリをして、実際は倒すための策を既に練っているのではないか。その策の中には、半沢が大立ち回りをするという事も折り込み済みで。

棺の会の事はもちろんの事、中野渡頭取も圧力に屈して渡したという共犯に自らを仕立て上げ、半沢直樹という真に優秀な人材が古き体制の首謀者である頭取を大衆の前で裁いて見せる。

頭取は失脚し、棺の会もただでは済まない。箕部も破滅するだろう。タスクフォースは解散し、政府は失墜する。

しかし帝国航空は自力再生により再び空へと飛び立つ。東京中央銀行は一時的に信用が落ちるだろうが、正義を示す半沢というバンカーに心を打たれる国民の支持のもとに再生するだろう。

国民は悪党を成敗し、正義が勝つことが好きだ。それは半沢直樹という番組が嫌という程教えてくれた。東京中央銀行は悪党の巣窟だったという印象をマスコミに大々的に広められるよりも、悪しき膿は出されて銀行は再生するという印象の方が、傷口は遥かに浅い。

そしてこの模様は一切の編集が効かない生放送で、大勢の国民が注目する時でなければならない。つまり、最終決戦の場だ。

半沢直樹のバンカーとしての正義の心を焚きつけるために悪を演じ、何も反応しなければ大和田がどう動くかも予見し、悔しさと怒りで半沢を燃やす。頭取は自らを生贄に全ての因習に決着をつけるつもりなのだと私は見ています。

1000倍返しの意味

……ところで中野渡頭取の思惑を、半沢がまるでわからないわけはない。頭取の理念思想を何度か振るってきた彼ならば、頭取の考えることも冷静になれば少し読めているだろう。

身を硬直させている間に必死で考えたはずだ。何をすれば良いのかを。どうすればいいのかを。この状況は何なのかを。

最後の最後で気付けたからこそ大和田を吹っ飛ばして立って見せたのだと考えます。

箕部に対し啖呵を切って「この借りは倍……いえ」と、頭取を、次いで大和田を蛇のように睨み、「3人まとめて……1000倍返しだ!!!!」と叫ぶ。その時大和田は一切慄いていなかった。寧ろ是非ともやってくれという、藁にもすがる思いを感じる顔だ。

この3人まとめては、3人全員1000倍返ししてやる!! ともとれるけど、私は少し違う解釈で。3人全員1000倍返ししてやる!! という風にも取れる。

悪役にならねば銀行を救えないほどに腐らせてしまった箕部や棺の会メンバーへの、頭取がやりたかった10倍返し。

信念で頭取に付き従い、屈服に土下座にと辛酸を舐めさせられ、頭取を玩弄する箕部と紀本への、大和田がやりたかった10倍返し。

そして間違いに謝罪して1度は煮え湯を飲み、今2度目を味わうところだった、大和田や頭取の無念にも腹に据えかねた思いは倍では効かずに10倍な半沢直樹。

3人の10倍をまとめて、10×10×10=1000倍返し!!!

半沢が大和田にした100倍返しの内容は、積年の恨みと近藤への扱いによるどす黒い感情MAXで爆発した結果。箕部に対しても怒り心頭だろうが、あの時ほどどす黒くはない。

次週はいよいよ最終回。幹事長を打ち破り、銀行を、そして空港を再建する夢は果たされるのか。銀色の翼は、太陽目掛けて羽ばたく。太陽こそ自分と思いこんだ箕部は、愚か者として羽を燃やし落するのか。はたまた、愚かにも絶大なる権力に大立ち回りする半沢が燃え盛るのか。

銀翼のイカロスは、両名、地を飛び立つ。

真の愚か者は羽を燃やして地に落ち死ぬ。

勝つのはどちらだ!!

日本の空を羽ばたくのはどちらか!!

宿命の対決まで、あと5日。


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。