44人目 過去イチ優しい彼①
私は住み慣れた田舎町を離れ、心機一転、見知らぬ土地で転職をした。
知り合いが一人もいない新しい街で、最初に知り合ったのが44人目の彼だった。
知り合った当初は、かなり年下だし、170cm以下だし(高身長好き)、近くに住む友人の一人でもできたら良いなぁという軽い気持ちだった。
マッチングアプリ内でメッセージのやり取りと通話をして、LINEに移行した。
LINEで本名を知った。
一文字だけどアプリの名前と違った。
指摘したら、ネットだからハンドルネームにしていた、と。
◆はじめまして
私がこっちに引っ越して約2週間半後に会うことになった。
しかも彼の家で生放送のテレビ番組を見てご飯を食べるという流れ。
私の家にはまだ最低限の家具しかなくてテレビが無い。どうしても見たい番組が見れなかったのだ。
初対面で男性の家に行くなんて、これまでの私ではありえない。
しかし、マッチングアプリ経験上、彼は悪いオオカミ男子ではないと分かる。
電話の雰囲気からして【好きなものが一緒のお友達】だ。
近所のコンビニまで車で迎えに来てくれた。
彼の顔はアプリに載せているどの写真とも違った。
ぱっちり一重のサラサラヘア。
正直、好きなタイプの顔ではなかった。
彼のマンションで遠慮なくお菓子をぼりぼりと食べながら、一緒に番組を見た。
素の自分のまま楽しませてもらった。
少し離れたラーメン屋で夜ご飯を済ませて、彼のマンションに戻り番組の続きを見て、再び近所のコンビニまで送ってもらってバイバイ。
やらしい雰囲気に全くならず、好きなものが同じ男友達とただ楽しく過ごすという初対面だった。
◆2~7回目のデート
全て私の行きたい所・したいことに付き合ってくれる彼。
家具を買うのに付き合ってもらったり、少し離れたご当地スーパーに連れてってくれたり、彼の利益にならない用事まで。
そういえば、彼から一度「○○か××の映画みない?」と誘われたが、どちらも全く興味のない映画だったので、強いて言えばで「○○の方がいいかな」と返した。
すると「映画はなし!!バンビさんが前に行きたいって言ってた所にいこう!」と返ってきた。
察しが良すぎて驚いた。
彼は相手の気持ちを先読みして行動できる。
「なんで私の思っていることが分かるの?」と思うことがしばしばあった。
話を聞いてみると、お姉さんが2人いて女性の気持ちや行動がある程度分かるようだった。
他にも、家族思いで家族から愛されていて、やりたいことが山ほどあって、若いながらも立場のある役職について仕事を一生懸命頑張っている。
この子はすごいなと感心した。
かなり年下だけど、年齢なんか関係なく、尊敬した。
何より、話していてすごく楽しい。
同じ地方出身だから、同じ方言で喋れる。
こっちに知り合いが一人もいない私にとって、失いたくない存在になっていった。
それにしても、なんで私のやりたいことに付き合ってくれるの?
私に気があるようには見えないし。
もしかして彼は恋愛経験が少なくて、仲良くなると女友達になっちゃうタイプ?
少し気になるが、あえて気にしないように、彼とおでかけしたり、時々私の家でご飯を食べたり、友達として楽しく遊ぶ日々が続いた。
私は岩盤浴ですっぴんを披露し、歌が下手だけどカラオケにも誘った。
私は着飾らない素の部分を見せ続けた。
私の家で夜ご飯を作って一緒に食べた、ある夜。
なんとなく「今もマッチングアプリやってるの?」と尋ねた。
彼「やってないよ!アプリも消した!」
私「でもプロフィール残ってるよー。退会しないと消えないよ?」
彼「そうなの!?」
彼はすぐにスマホを触って、「退会したよ!後でバンビさんの画面にあるか見て!」と言った。
洗い物を終えた後確認すると、彼の名前が消えていた。
私の為に退会したわけではないが、新規の女性を探す気はないと分かった。
そして、別の日の夜。
唐突に彼から「恋愛トークしよう」と言われた。
いきなりどうした?と思ったが、私を恋愛対象として見てくれてるのかな?と、なんだか嬉しい気持ちになった。
彼は私に元カレの話をサラっと尋ねた後、1時間以上自分の元カノ達の話をした。
話し上手でおもしろいのが彼の良いところだが、過去の女性について、いつまで聞かされ続けるの?と眠い目をこすりながら聞いた(いや、聞き流した)。
恋愛経験があることを知れたのは良かったが、年上の彼女と付き合った時にメンヘラっぽくて別れるのが大変だったと聞いた時は、私はこうならないようにしなくちゃと、気が引き締まった。
彼は深夜2時まで話した後、満足げに帰っていった。
彼が突然恋愛話を始めた意図がわからなくて、この日を境に彼を恋愛対象としてはっきりと意識するようになった。。
◆8回目のデート
年度末でキリがいい。
友人関係も終わるかもしれないが、この日私は思い切って「好き」だと言ってみようと思っていた。
男女関係が始まりそうで始まらない、しかし友人にしては物理的に近い距離感にずっとモヤモヤしていた。
良い方向でも悪い方向でもいい。
じれったい関係に決着をつけて楽になりたかった。
この日は、私の家具購入に付き合ってもらい、部屋で一緒に組み立てた。
外で夜ご飯を食べて、うちに戻り、コーヒーを飲みながらお喋り。
0時を過ぎ、彼がそろそろ帰ろうかという時に「44人目さんのこと、好きだよ。」とシンプルに伝えた。
付き合いたいとか、答えがほしいとか余計なことは一切言わなかった。
ただ、気持ちを伝えただけ。
彼は驚いたようだったが、なんだか嬉しそうな表情を浮かべた(ような気がした。)
続きは年齢制限されそうなので、次の記事②に。
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