40.髑髏本尊記憶術②

2.第二部、記憶の実演(演技式記憶と競技式記憶)
 実演の部分では、お客とのやり取りが重要な部分です。自然体に記憶しながら、聴衆を厭きさせないスキルの工夫が必要です。この動画では、15分の制約で数字10桁、単語5つ
の実演となっています。この演技を見て、こんなのすごくないや、この前、テレビで1分間で30桁覚えた名人を見た等の指摘がよくあります。この人が見たのは競技式記憶であり、演技式記憶とは異なります。競技式記憶は、単位時間内で数字やトランプをどのくらい覚えるかを競う記憶法で世界大会まであるポピュラーなものです。スケートでいえばスピードスケートで集中力を高め演技を必要としない方式です。これに対し演技式記憶は、表現力と記憶をマルチタスクで行う方式で、フィギュアスケートに似ています。この2つ、カテゴリーが違うので高木美帆と浅田真央を比較するようなことはできません。演技式記憶は他国にない日本独自の絡繰りの伝統があります。
 
3.演技式記憶の伝統を明日に伝える
 記憶術は、芸能というより認知、心理学の関連が深く民族の固有性になりにくいものです。このため欧米の記憶術はギリシャのシモニデスを共通の始祖としています。日本では島国でかつ鎖国していたため、 他国にない演技式記憶など独自の変転を辿ってきました。
 
日本の記憶術の遍歴
・712年、和銅 5年 稗田阿礼の古事記、編纂
・793年、延暦12年 弘法大師・空海、虚空蔵求聞持法を修得*1
・1303年、嘉元元年 僧、道順、真言立川流に求聞持法を体系化
・1335年 建武2年 本山(高野山)より破門、拠点を根来へ
・1585年、天正13年 豊臣秀吉、紀州根来寺を焼討ち
・1676年、延宝4年 伊賀の忍法伝書、その中の「忍びいろは」に記憶法の記載
・1771年、明和8年 京都、山本一馬著「物覚秘伝」*2
 儒教の学習目的から民衆の生活学習ツールとして
    →「習字、ソロバン、物覚え」の普及
・1894年、明治27年 井上円了著「記憶術講義」西洋記憶術を紹介
・1895年、明治28年 和田守菊次郎、島田伊兵衛が実践、
  →和洋の記憶術を融合した記憶術書の販売。
HOWTOの実用本の実演販売として演技式記憶術の隆盛
・1934年、昭和9年 競技式記憶で石原誠之204桁、6分の世界記録
・1961年、昭和36年 渡辺剛彰「記憶術の実際」、実用書でベストセラーに
  つづく

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