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アジア系はマイノリティー?


今回のテーマ: セレブリティ
by 萩原久代

写真) アカデミー賞を受賞したミッシェル・ヨー(NYタイムズ紙)
 

セレブと聞くと、エンタメ系、特にハリウッドスターがまず頭に浮かぶ。ハリウッドといえばアカデミー賞、そして2023年アカデミー賞授賞式があったばかりだ。今年はアジア系俳優が各部門で4人もノミネートされたことがニュースになった。そして、助演男優賞にキー・ホイ・クアン、主演女優賞にミッシェル・ヨーが選ばれた。特に、主演女優賞部門でアジア系俳優が候補になるのはちょっとした歴史的出来事だった。
 
調べてみると、アジア系俳優が主演女優賞候補に選ばれたのは、1935年のマール・オベロン以来初のことだそうだ。ただ、英国人の父とインド人の母を持つオベロンはその出生の事実を隠していた。主演女優賞候補になった当時、外見が白人に見えた彼女は豪州タスマニア出身と言っていたそうだ。彼女が実はアジア系だったと判ったのは、彼女の死後だったという。その意味で、見た目も人種的にもアジア人が候補となり、最終的に受賞したのはオスカー初だ。

おめでとう、ミッシェル・ヨー!
 
さて、主役がアジア系のアメリカ映画やテレビ番組には何があったかしら。。。思い出そうとするがすぐにでてこない。
 
アジア系俳優の主演作品について記憶をたぐり寄せると、グリーン・デスティニー(Crouching Tiger, Hidden Dragon)、クレージー・リッチ!(Crazy Rich Asians)が浮かぶ。これらはハリウッドのブロックバスターだった。それに、韓国映画のパラサイトもヒットした。韓国テレビドラマのスクイッドゲームも大人気だった。しかし全体からみればまだ数少ない。やはりエンタメ界のアジア系セレブはマイノリティーだと思う。
 
アメリカ総人口に占めるアジア系は約6%(2020年国勢調査)だから、その割合からするとセレブを見てもアジア系はマイノリティーなのは仕方ないだろう。
 
アジア系人口の割合は、ハワイ州で36%、カリフォルニア州で15%と高いのだが、この2州が例外的に多いだけである。また、ニューヨーク市内ではチャイナタウン近くに行けば、うわあ、中国人ばかり!と驚くが、その地域だけの話である。しかし、近年、ニューヨーク市内ではアジア系が増加しており、人口比では17%を占めるそうだ。確かに街で行き交う人にアジア系が増えたと実感する。しかし、ニューヨーク州全体だとアジア系は10%程度だ。
 
2020年国勢調査によると白人系は減少したが、まだアメリカ総人口の約58%を占めている。一方で人口増加中なのがヒスパニック系で18%を超えた。黒人系は12%程度で横ばいだ。
 
さて、今年のアジア系俳優候補の4名の話に戻るが、アメリカの人種別割合と比べてみたらどういう意味を持つのか。
オスカー俳優賞4部門はそれぞれに5人ずつ候補者が選ばれるので、総候補者数は20名となる。つまり、 4÷20 =0.2
アジア系俳優の割合は20%だ。
 
これはカリフォルニア州人口のアジア系割合より高く、ニューヨーク市内並みである。全国的にみると、あれ?というくらい高い数値なのだ。やはりオスカー歴史上初の出来事と言える。
 
さて、他のオスカー候補俳優の人種別割合はどうなっているか、ちょっと見てみよう。
 
黒人系は2名、人種別比率10%
ヒスパニック系1名、5%
白人系は13名、65%
 
今でもオスカー候補の白人比率は高い状態だが、近年は是正されてきた。というのは、2015年と2016年に候補者全員が白人だったため、強い批判が巻き起こったのだ。それを受けて、オスカー選考委員会の「映画芸術科学アカデミー」は、選考メンバーの人種構成の見直しを実施した。それまでのメンバーは白人男性が突出して多かったそうだ。見直し後、非白人系メンバーも増えたという。(アカデミーのメンバーは非公表)
 
セレブの世界にも多様性が必要か。セレブのいる業界の種類によると思う。というのは、ハリウッドスターはセレブだが、俳優という職業に就いている人たちだ。職場での評価(例えばアカデミー賞)に、恒常的に人種的な偏見や差別があるとしたら、それは問題である。アメリカ社会の多様性を反映する作品が多く制作されているわけだし、適切に、客観的に評価される機会があるべきだ。
 
セレブと関係ないむずかしいテーマに向かうつもりはないし、私はセレブでもないのだが、自分がマイノリティーのアジア系だから気になってしまう。
 


 
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萩原久代
ニューヨーク市で1990年から2年間大学院に通い、1995年からマンハッタンに住む。長いサラリーマン生活を経て、調査や翻訳分野の仕事を中心にのんびりと自由業を続けている。2010年からニューヨークを本拠にしながらも、冬は暖かい香港、夏は涼しい欧州で過ごす渡り鳥の生活をしている。コロナでそのリズムが狂ってなかなか飛べない渡り鳥となっている。

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