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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年10月の記事一覧

2024/10/31 露時雨(つゆしぐれ)

ぐっしょりと濡れた足元にはどんぐりたちが転がっていた。 パラパラと時々音がするのはこれか…

名野凪咲
2週間前

2024/10/22 「図鑑の日」

分厚い本を手に、てとてとと数歩歩いたと思ったらずてんと盛大に転んでいる。 その音で周囲が…

名野凪咲
2週間前

2024/10/30 囲炉裏開く(いろりひらく)

「あれは何?」 古民家の中でぽっくりと開けている真四角のスペースを指さして、同居人が聞い…

名野凪咲
2週間前

2024/10/21 「あかりの日」

明りが灯った。 思わずハイタッチで喜んでしまう。このために、二人ほど死んでしまったけど、…

名野凪咲
2週間前

2024/10/29 惏露雨(りんろう)

雨が降る。だから今日は、読書をすると言っていた。でも、ページは一枚も動かない。 「疲れて…

名野凪咲
2週間前
1

2024/10/20 「頭髪の日」

「ハゲた」 そう呟くと「どこが?」と返ってきた。私はおでこを見せる。 「ほら、禿げた」 …

名野凪咲
2週間前

2024/10/28 炭火恋し(すみびこいし)

「寒い」 扇風機がある部屋で同居人がぼやいた。 「うん。タオルケットはそっち。ふかふかの出したよ」 こたつを出すには早いので、タオルケットでしのぐ。暖房をつけてもいいのだけど、そこまでの寒さでもない。そして、扇風機はただの『風通し』のための装置になっている。人がいない短時間の間に少しだけかけておく。 「電気代対策?」 「それもある」 こたつの準備だけはしておこう。

2024/10/19 「医療用ウィッグの日」

髪が引っかかっている女性がいた。絡まっているのか中々取れないようで、とうとうハサミを取り…

名野凪咲
2週間前

2024/10/27 水草紅葉(みずくさもみじ)

丸い葉っぱはもう緑の色を落として、秋の色に染まっている。木々の葉だけではなく、水に浮かぶ…

名野凪咲
2週間前
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2024/10/18 「ミニスカートの日」

ふわりと布が舞い上がる。私はそこから出ている足に目が行ってしまった。 「どう?」 「うん…

名野凪咲
3週間前
1

2024/10/26 銀木犀(ぎんもくせい)

ほのかな香りに顔を上げると、白い花が咲いていた。チクチクとした葉っぱはヒイラギみたいだ。…

名野凪咲
3週間前

2024/10/17 「貯蓄の日」

「貯蓄ってある?」 不思議な質問をするなと思いながら、「貯金額は内緒」と返すと不思議な顔…

名野凪咲
3週間前

2024/10/25 十日の菊(とおかのきく)

「遅い」 咲いた菊にそうぼやく。飾ろうと思っていたのは祝祭があった10日前。その頃にはまだ…

名野凪咲
3週間前

2024/10/16 「世界食糧デー」

海が赤く染まる。 昔は山で土砂崩れが起きた時などがそうなったらしいけれど、最近では毎年のように赤茶色に染まりぷくぷくとした泡が立つ。 「あかんねぇ」 ばーさまがそう呟いた。普段は山の方で畑を耕しているばーさまは海の赤い水を掬うとぺしゃりとそれを叩きつけた。 「あかんねぇ」 もう一度、同じ言葉が繰り返される。 「山のがここまできとる」 ぽつりぽつりと吐き出される言葉を拾うと、田畑で使う肥料が水に混ざり海まで流れて過剰供給された栄養にプランクトンが群がっているということら