ヤンヤンつけボー
ヤンヤンつけボーが好きだ。じゃがりこのような形の容器にスティック状のクラッカーが入っており、それをチョコレートクリームとカラフルなトッピングをつけて食べるお菓子のことである。
幼い頃から食べていたかというと、そんなこともない。好きになったのは最近。食べたいとき探すのに苦労しないほど、割とどの店にも置いてあるから、人気があるのだと思う。
スティック状のクラッカーには、
「豆を食べて鬼退治する日をなんというでしょう?」「せつぶん」
のようなクイズが書いてある。
そんなクイズには目もくれず、ひたすら食べる。幼い頃ならそれも楽しみの一つであったんだろうけど、今のわたしは味にしか興味がない。
ぽたぽた焼きの袋に書いてある"おばあちゃんの知恵袋"も、毎回楽しみに読んでいたのに、最近はもうほとんど見なくなった。
ヤンヤンつけボーを、先日家族でお出かけした際に母に買ってもらった。駄菓子屋で娘がお菓子を買ってもらっているのに便乗し、カゴにこっそり入れた。
いつ食べようか楽しみにしていたのだけど、わたしがカゴに入れたことを知っている娘は帰宅してからずっと
「あれいつ食べるの?」と聞いてくる。
「自分のタイミングで食べる。」と答える。
娘は、ヤンヤンを自分も当たり前のように食べられると思っていたのだ。
一緒に食べるつもりではあったけど、そこまでグイグイ来られるとさすがに辛い。30歳とはいえ、大好きで買ってもらったお菓子を我が物顔で取られることに納得はできない。
親というものは、ショートケーキの上に乗ったイチゴを無条件で子どもにあげられる人だと思っていた。自然と自分もそうなると思っていたのに。駄菓子を取られそうになっただけで嫌な気持ちになってしまった。
わたしの頭の中にいる母親たちは、他にお菓子やケーキを隠し持っているのか?そうでないと、あんなに慈しんだ顔でイチゴをあげることなんてできない。
「(実はモンブランも持ってるから)いちごあげるよ。お食べ。」
こういうことでないと納得できない。多くの親は、子どもに隠れてお菓子を食べることがあるのでは?と思っているのだけど、そこからくる罪悪感でイチゴをあげられるというのなら、まあ分かる。
ヤンヤンつけボーは、買ってもらった翌々日の朝に食べることになった。
朝ごはんの後、我が物顔で開け、食べ始める娘。もう諦めた。大人だから、食べたけりゃ買えるんだもん。
あと4本くらいになったところで、「母ちゃんあげる」と残りをくれた。
夫が「それ母ちゃんのお菓子やぞ!」と言ってくれて、少し救われた。
クリームで容器がベトベトになったヤンヤンを食べる。もちろん味はおいしい。なんだったら4本でしっかり満足した。
隠れてロイズのチョコやアイスを食べているのだから、今回の件はまあ許そう。少し大人になった、夏の終わりの涼しい朝でした。