【小説】倶記3-1
目を開けるとそこは見慣れない天井だった。
おかしい…。
昨日は確かいつも通りに自宅…というかアパートで就寝したはずなんだけど。
あれ?
何かが違う気がする。
いや、もうすでに見たことない天井に驚いてるけど。
もっと大きな何かが…。
「って、え、ええ?!」
ちょっと待って。
「ん〜。あと5分〜。」
それ絶対起きれないパターンのやつ…。
じゃなくて、あと5分とか正直どうでもいいよ!
そんなことよりここどこ!?
そして。
「君、誰…?」
この短い黒髪の元気印な子。
もちろん似たような人は何人も知っているけど、多分その誰にも当てはまりそうにない。
そもそも、なんでどこともわからぬベッドで見知らぬ誰かと寝てるんだ自分は!?
誘拐にでもあったのか、はたまたそんなに出歩くほど寝相が悪かったのか…。
「…俱?いきなり大声出して、どうしました?」
頭が大混乱の自分に声をかけてきたのは、またもや見知らぬ人。
「トモ」って確かに自分はそう呼ばれてはいるけど…。なんか違う気がする。
「…えっと、あなたは一体…。」
へっ…?
と呟いて徐々に顔色を青くする彼女。
別にそんな怖がらせる要素はなかったはずだけど。むしろ誘拐だったら怯えるのはこっちだろうし。
「まさか、記憶喪失でしょうか?わ、私はどうすれば…。」
急に慌て出す同い年くらいの女の子。
記憶喪失?
それはないと思うんだけどなあ。
その時だった。
ここはどう考えても部屋の中なのに、勢いよく風が吹いたのは。
…。
ピピピピピピピッ!
勢いよく目覚まし時計が鳴った。
…それにしてもまあまあ五月蝿い電子音だな。
「やだー、あと10分〜。」
…これ絶対起きれないパターンだな。
「美月!それどころではありません!俱が、俱があ!」
そして何事か言いながらバスバス布団を叩いている菜々子。
「菜々子?俺がどうしたのさ。」
「へえっ…?」
ピピッ、カチャッ
少し遅れてけたたましい音が止む。
それにしても菜々子がポカンと変な顔をしている。ま、まさか。
「ごめん!」
わかった。
これは俺が寝起きでやらかしたやつだ。
相変わらず彼女はその表情を変えられずにいる。
「俺寝起き悪くてさ。起きた瞬間によくわかんないこと言ってたり、突然キックしたりするらしいから…。」
「そ、うなんですか。なんか、腑に落ちませんけど。」
瞳は依然として疑惑のそれだったが、渋々といった様子で納得してくれた。
「もー。2人ともうるさあい。」
「とにかく。美月は早く起きてください。もう朝の8時ですよ。」
「目覚まし時計自体はちゃんと止めてるのにな。」
自分で言ってて思うけど、美月みたいに朝起きれないのに目覚まし時計を止めることができる人って結構いるよね。
「えー、あと15分くらいいいでしょー?」
案の定、易々とは起きれないみたいだ。
「どんどん時間増えてますよ?全くもうっ。」
「さっきは10分だったしね。」
俺は一応目覚ましが鳴れば起きるけど、さっきみたいに寝起きの状態が全然だからなあ。うん。
「しょうがないですね。朝ご飯食べないならまだ寝てていいですよ?」
「それはダメ!食べる!」
ガバリ起き上がった彼女。
というか、そんなにお腹空いてたのか…。
「じゃあ2人とも、朝ご飯準備しとくので手と顔洗ってきてください。」
「オッケー。」
「はーい…。」
菜々子に急かされて返事こそしたものの、美月はまだ眠そうで。
そんなこんなで、慌しく人探し2日目ははじまった。
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