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「ジングル」の作法 〜0円・30分でジングルを作る「ヤッホー」フレームワーク

こんにちは! 株式会社ヤマップでプロダクト・マネージャーをやっている土岐と申します。この記事は、YAMAP Advent Calendar 2022の12/1の記事となります。


早速ですが、このAdvent Calendarのジングルを、本日の晩ご飯ができるまでの時間の30分で作ってみたのがこちらになります。

※「VOICEVOX:四国めたん」および「VOICEVOX:雨晴はう」を使用

こんなジングルを作るには? というのが今回の記事の主題となります。

誰もが直面する「ジングル作りたい!」という場面

プロダクト開発や組織の運営に関わってる皆さんなら、必ず年に1度はありますよね。「ここでジングルがあれば!」という場面。

あれ、無い? 

おかしいな。私はヤマップに入って6回くらい作っているので、年に2回はある計算になります。「ジングル」って何? っていう方はこちら。コレです。

ジングル (ラジオ) - 放送番組において、本編内のCM枠前後などの節目に挿入される、放送局名や番組名の告知の役目を持つ短い楽曲。前者の場合、無線局運用規則に規定された局名告知の義務履行を兼ねる。サウンドステッカーまたはステッカー(TBSラジオ)、アタック(文化放送)などとも。多くの場合、番組宣伝などとともに流される。

ジングル - Wikipedia

リモート会議が一般的になる昨今において、「ジングル」の効果は絶大です。つまらない会議がこれがあるだけで一変、「今日もこの時間がやってきた!」というトキメキとワクワクの時間になります。

そう、会議はそもそも「自分も参加できるインタラクティブなラジオ番組」みたいなもので、トキメキながら、ワクワクしながら参加して良いものだったんです。そんな認識の捉え直し「リフレーミング」を、会議冒頭のほんの僅かな音だけで実現できる「ジングル」、ぜひあなたの会議でも導入してみませんか?

でも難しいんでしょ? 「0円・30分」でできます。

とはいえ、やはり音楽を作るとなると敷居が高いのは事実。音楽制作をやったことの無い人にとって、いろいろ機材(シンセ、サンプラー、DAWなど・・)を揃えたり、MIDIを使って音を鳴らしたり、音楽理論を使ってメロディを作ったり、それを混ぜて(ミックスして)音楽にしたり。「よく分からんな・・・」みたいな工程が待っています。
私は趣味で音楽制作を10代の頃からやっており、ほとんど理論的な素養は無いんですが、初期衝動と勘と度胸だけでやり続けております。アルバムを何枚かリリースしており、なぜか海外からもリリースしたり・・。今回そこはメインテーマではないので細かい紹介はすっ飛ばすんですが、一応、私の名義「hanali」の聞きやすいアルバムのSpotifyのリンクを貼っておきます。

私が普段音楽を作るときは、BitwigというDAWソフトを使い、有料のプラグインを使ったりしています。しかしよくよく考えると、そこまで必要ないかも、と思ってきました。「ジングルだったら特に音楽理論も必要なく、Macに付属しているGarageBandの機能とライブラリを組み合わせてできるんじゃないか?」ということにお題でやってみたのが今回の記事、というわけです。

「ヤッホー」フレームワークで作ってみよう

とはいえ、ジングル作るにあたって「手がかり」となる方針が欲しいのは事実です。そこで私が編み出しました。ジングルにおける「ヤッホー」フレームワークです。このフレームワークに則れば、あっという間にジングルを作ることができます。

一般的なヤッホー

「ヤッホー」と言えばコレですね。登山して、頂上で「ヤッホー」と叫び、下山する。この一連の流れが「ジングル」を表しています。
どういうことか?

まず「登山」。山には登山口があり、「ここから登るよ」ということが通常は示されています。ジングルも、「これからこの番組が始まるよ」ということを示す「フック」となるメロディとリズムがあり、ワクワク感を演出します。

そこでジワジワ山頂への期待感が高まったあと「ヤッホー」です。山で大声で叫ぶように、ここではそのジングルで表現したい番組を声で表現します。

そして、それが終わったら「下山」です。登山した道をジワジワと下がりながら、最後に余韻を残して音を切り、これから始まる番組へと引き継ぎます。

ということで、「登山」「ヤッホー」「下山」という3つのフェーズを満たせば、ジングルは成立する、ということが「ヤッホー」フレームワークの骨子となります。

ヤッホーフレームワークの3フェーズ

機材・理論は必要ありません

今出てきた要素を作るにあたって「メロディ」とか「リズム」を作るのに音楽理論が必要じゃないの? とか番組を読む声は自分で読んで録音するの? など疑問が出てくると思います。もちろんそうやっても可能なんですが、今回お伝えする方法では一切必要ありません。

  • メロディ・リズムはGarageBandに付属のサウンドライブラリで作る

  • 声はソフトで生成する(Voice Voxを使用)

  • エフェクトもGarageBand付属のものを利用

ということで、Macさえ持っていれば(という条件は付きますが)、誰でも無料で手軽にできる方法で作ってみようと思います。必要なのは上記のソフトと、後は勘と度胸とセンスだけ! というわけでレッツヤッホーしてみます。

GarageBandを準備しよう

GarageBandの使い方は世の中にほぼ無限と言えるくらい情報があるので詳しくは解説しません。実は今回の記事を作るにあたって、私も初めてしっかりと利用したのですが、3分程度で概要が分かるくらい簡単でした。早速立ち上げてみましょう!

空のプロジェクトを作った場合、以下のような「トラックのタイプを選択」ダイアログが出てきます。今回のジングル作りでは一貫して「オーディオ」の左側「マイクまたはライン入力〜」を使うので、こちらを選択します。

マイクまたはライン入力を選択

そうするとこんな感じの画面になります。この赤い枠のところが今作成した「トラック」で、この部分に音を置いていくことで音をならすことができます。

じゃ、その音をどっから選べばいいの? というのがこの右上の桃みたいなマーク、これが「ループブラウザ」です。

ここを押すとこんな感じライブラリが大量に出てきます。最初はダウンロードされていないのですが、「↓」ボタンを押すことでダウンロードすることができます。気になる名前のサウンドをダウンロードしまくっていろいろ聞いてみてください。

まずはフェーズ「登山」、メロディとリズムを配置する

ということで早速「登山」フェーズの作成に入っていきます。ここでは「フックのあるメロディとリズム」を作ります。

ジングル聞いた人が「おっ始まったな!」と思えるような特徴のあるメロディ、そしてノリのいい空気を演出するリズムを作ります。

ここで本気で作り込もうと思ったら「メロディ」「ベース」「ドラム」「コード楽器」などいろいろと要素が必要です。音同士の調性も気にしたりと面倒になります。

ここでのオススメは「メロディとリズム」だけに要素を絞ってしまうことです。これであれば調性を気にする必要は(殆ど)ありません。また、リズムは低音を強調し、コンプをかけて音圧を上げることで、スカスカ感が出ることも回避します。

ということで、ライブラリからテキトーにメロディ(今回は「M Styke Koto」という琴の音)とリズム(「Maurice - Wheels of Steel」)をセレクトして、配置したのがこちら。

GarageBandは勝手にテンポを合わせてくれるので、何も考えずにトラック上に配置するだけで「だいたいいい感じ」になってくれます。めっちゃ便利。

長さを調節したいときは、右下のこの部分をドラッグ&ドロップすれば調節できます。これが初見だと分かりにくかったので注意です。(ちなみに左下の同じ部分でスタートのタイミングも変えることができる)

右下の部分を操作すれば長さが調節できる

守備良く音を配置できれば、後はスカスカ感を回避するための音の調節です。この辺、真面目に語り出すといろいろ面倒くさいんですが、要はアレです、写真のフィルターみたいなもので、音の印象を変えるためのものです。

トラックを選択すると下にこんな感じのプラグインの画面が出てくるので「CompressorのAmountをぐいっと上げて音圧を上げる」「EQのLowをぐいっと上げて低音を強調する」ということをやっちゃいましょう! あとは好きに調節しましょう。

何も考えずに音圧! 低音強調! エグい!

一応、エフェクトをかける前と後のファイルを貼って起きます。

▲エフェクトをかける前

▲エフェクトをかけた後

グッとドラムが音圧が上がってえげつない感じになったと思います。もうちょっと大人しくしたい場合などは順次調節しましょうね。


フェーズ「ヤッホー」、山の上で番組名を叫ぶ


というわけで「登山」パートが首尾良く完了したらいよいよメインターゲット、「番組名を叫ぶ」フェーズ「ヤッホー」です。

ま、もちろん自分で叫んでる声を録音しても良いです。が、やはり恥ずかしいわけです。また深夜の家の中で叫ぶのも他人に迷惑だし難しいですよね。コンピューターにそこまでやらせるにはどうしたものか?

世の中は便利になりまして、さまざまな言葉を喋ってくれるスピーチソフトが存在します。その中でも今回紹介したいのだこれ、「Voice Vox」です。

オープンソースで開発されており、ほぼ商用・非商用で無料にしようできます。Mac・Windows・Linux向けにインストーラーも準備されています。そして、クオリティが高く、豊富なキャラクターボイス・・・。何ですかこれ、めちゃめちゃ凄いじゃないですか!

というわけで、早速ダウンロードして喋らせまくりましょう。イントネーションの調節ができたりと、細かい調節も可能ですが、だいたい良い感じで喋ってくれます。なんだこれ、めちゃめちゃ凄いじゃないですか!

Voice Voxの画面。凄い。

ということで今回は「雨晴はう」と「四国めたん」をチョイス。「ヤマップ エンジニア アドベント カレンダー 2022」を喋らせます。

上にある「1つ書き出し」を選択すると音声ファイルとして書き出してくれるので、書き出したファイルを配置してGarageBandの中の作業に再び戻ります。

ちなみに、今回2つのキャラクターに喋らせましたが、1人でももちろんOKです。2人にしてタイミングを合わせて喋らせるとユニゾン効果が出て、ちょっと賑やかな感じを演出できることができるので楽しいです。ただその分、タイミングを合わせた配置等が面倒になるので、チャレンジしたい人は頑張ってみましょう。

ファイルを切り貼りしてタイミングを合わせて2人を喋らせる。

いよいよフェーズ「下山」、余韻を残して終了する

ということでここまできたら後は下山するのみ! ということで再びGarageBandでまたライブラリをいじります。

ここで「登山フェーズ」で使ったメロディを再び鳴らし、ループ感を出すのもカッコいい。また、少し雰囲気の違う音を鳴らしてサプライズを演出するのも面白いです。この辺、「ヤッホー」の声から良い感じで着地できるサウンドを探してみてください。

今回はギターのリフからドラムに再び戻る、という流れで作ってみました。この辺のタイミングが印象を左右するところで重要なので、いろいろ調節してみてください。一番楽しいところです!

ギターのリフを入れ、タイミングを調節して完成

ここでの最も重要なポイントは、最後に「余韻」を残して終わることです。余韻は「残響」です。これはプラグインにおいては「Ambience」「Reverve」というパラメータで制御することができます。いわゆる、広伊平屋での「エコー」みたいなものです。

この辺も語り始めると「ディレイがあって」「リバーブでもスプリングリバーブとプレートリバーブが」「プリディレイの値が」「レゲエがダブに発展するにはディレイの存在が・・・」とかいろいろややこしい語りがあるんですが、気にせずにグイッと「Ambience」「Reverve」をぶち込みましょうにしましょう!

具体的な手順としては「余韻」用のトラックを用意し、そこに最後の1音となるファイルを配置します。この音はいろいろ考えられるんですが、今回はシンバルの「ジャン!」という音を選んでみました。

余韻用のトラックを配置し、音を配置する

そこのトラックのプラグインで、「SENDS」の「AMBIENCE」と「REVERVE」をグッとMAXにします。

これで余韻を残して下山終了。お疲れさまでした!

最後にファイルを書き出します。「共有」「曲をディスクに書き出す」からファイルをmp3などに書き出すことができます。

ということで下山完了、ジングル完成です。早速作ったジングルを使って、楽しいミーティングライフを送ってください!

おわりに

意外と簡単なジングル作成、皆さんもやってみたくなったのではないでしょうか? やり出すといろいろハマってしまって、音楽制作という沼にズブズブと沈み込んでしまうかもしれませんが、それもまた人生の楽しみです。

ということで、人生の折々にある「ジングル作りたい」となる機会。今までは諦めていたかもしれませんが、この記事を参考にジングル作りにチャレンジしてみてください。「作ったよ」というご報告をお待ちしています!

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